【子育て応援メソッド】世の中の子どもたちのために。児童施設でボランティアカットを実施/kisa fata テクニカルディレクター ヤマダアキラさん#2
美容業界で働くワーママ・パパに仕事と育児の両立について伺う「子育て応援メソッド」。前回に引き続き、「kisa fata」のテクニカルディレクター・ヤマダアキラさんにインタビュー。
前編では、子育てに理解のあるサロンで働けた幸運や、子どものために方針転換した「夫婦喧嘩の終わらせ方」について伺いました。
後編では、難なくパスした幼稚園のお受験、パパ美容師のSNS活用術、サロンの労働環境を変えるために自分から働きかけることの大切さ、についてお話しいただきます。
教えてくれたのは…
kisa fata テクニカルディレクター ヤマダアキラさん
20歳で美容師を目指し、専門学校卒業後にkisa fataに入社。これまでの13年間、同サロンに務める。長年付き合っていた今の奥様と29歳のときに結婚。今年4歳になる女の子のパパ。InstagramやYouTubeでは娘さんをモデルにし、キッズ向けのヘアアレンジを発信。
Instagram:papa_biyoushi
美容師は会話のプロ。幼稚園の面接も余裕でパス
――お子さんは幼稚園に通っているんですね。
はい。当初は保育園を探していたのですが、妻が仕事を辞めていたので、その状態で保育園を見つけるのは不利だったんです。なので、幼稚園に入れる年齢になるまでは預けることはせずに一緒にいることにしました。
――保育園と同じように、幼稚園探しも大変なのでしょうか?
そうなんです。僕も最初は知らなくて、幼稚園って小学校と同じように入ろうと思えばいつでも入れる場所だと思っていたんです。そうしたら全然違って(笑)。横浜市に住んでいるんですけど、横浜市の幼稚園は全て私立なんですよ。しかも、面接日もほとんどの園が同じ日に被っているので、もし落ちちゃったら遠い園を探さないといけなかったんです。けれど、なんとか自宅近くの園に合格することができました。
――面接の準備は入念にされましたか?
娘に自分の名前を言えるようにしたことと、僕の髪の毛を黒く染めたくらいですかね(笑)。サロンのママさんスタッフに相談したら「髪色で落とされることはないと思うけど、万一落ちた場合、自分のせいだと責め続けることになるよ」と助言をいただいて。入園した今となっては、普通に金髪でお迎えに行っていますけどね(笑)。
面接に関しては全く心配していませんでした。というのも職業柄、会話するのは得意だったので何とでもなるだろうなって。妻には「僕が話すからね」と言っておきました。本番では、こっちがポンポン答えすぎて、逆に面接官が質問に窮してしまうという感じでしたね。娘も僕に似たのか、よく喋る子だし。意外にあっさり面接が終わりました。
子どもの写真なら加工の必要なし(笑)。気ラクに投稿を続けられる
――ご自身のInstagramやYouTubeチャンネルで、娘さんをモデルにしてキッズのヘアアレンジを発信されていますよね。
もともとうちのサロンはお子さん連れの来店がすごく多いので、お子さんをカットしたあとにサービスで髪の毛を結ってあげることも。だから、お店にはお子さん向けのヘアアクセも用意しているんです。
そんな中で、「子どもにヘアアレンジをしてあげたいけど、やり方がわからない」「ヘアアレンジをする時間がない」というママさんたちの声を受け、簡単にできるアレンジ方法を伝えたいなと思ったんです。そこから、美容師としての自分をもっと知ってもらえたら良いなと。実際、僕の投稿を見てお子さんを連れて来店されるお客様は増えました。
――ヘアアレンジ、すごく可愛いです。
でも全然簡単なんですよ。子どもの髪型ってどんなものでも僕は可愛いと思うので、難しく考えなくても良いんです。いつも何となく、自由に組み合わせながらアレンジを考案しています。
幼稚園に送りに行くと、可愛い髪型をしている子たちが結構多いんですよ。毎朝、ママさんたちも頑張っているんだろうなって。それを見ると僕も負けたくないなって思っちゃいますよね(笑)。
――Instagramはほとんど娘さんのヘアアレンジカタログと化しているようですが(笑)。
それでキッズカットの予約しか入らなくなるのは困りますけどね(笑)。
別アカウントも持っているし、僕もかつてはヘアスタイルの投稿もやっていました。でも、ヘアスタイルの投稿はモデルさんを用意し、撮った写真をきれいに加工してやっと載せられるじゃないですか。一方、子どものヘアスタイルならそのまま載せられるので、無理せずに続けられるんですよね。最近は娘も僕も朝早く起きられないので、投稿がサボりがちになっていますけど…(笑)。
Instagramは、僕にとっては集客ツールではなく、僕がどんな人物なのかを知ってもらうためのツールです。投稿を通じて美容師自身の私生活に入り込むことができ、どんな人物なのかが分かるとリピート率が上が る、という法則があるんですよ。だから、僕はこれからも女性のヘアスタイルではなく、自分がどんな人物なのかを分かってもらえるような投稿をしていくと思います。それにより世の中のお父さんお母さんに共感してもらえたり、お話のネタになれば嬉しいですね。
子どもに優しい社会にしたい。そんな想いではじめたボランティアカット
――お子さんが生まれたことで、ヤマダさん自身で何か変化したことはありますか?
オーナーからは「考え方が柔軟になった」と言われました。僕はわりと「自分が正しい」と思い込んでしまうタイプなんですけど、相手の話を聞く余裕ができたし、物事の捉え方や世界の見え方が変わった気がします。あと、政治への関心。昔は政治なんて全く興味がなかったけど、娘が生まれてからはすごくニュースを観るようになりました。子どもに優しい社会になってほしいので。
あと、ボランティアとして児童養護施設などにカットしに行くようになりました。最初は自力で調べて行こうとしていたのですが、友人がそういうことをしている料理人や画家の方を紹介してくれて。その方たちが行っている施設に一緒に行き、施設から了承を得て子どもたちのカットをさせていただけるようになったという経緯です。コロナ禍が落ち着いてきたのでまた動き出そうと思っています。
――美容師という職業を活かし、ボランティアとして社会づくりに参加されているんですね。
「子どもが幸せに暮らせる世の中になってほしい」という気持ちがすごく強くなったんですよね。テレビで辛いニュースをたくさん目の当たりにし、「自分にできることはないだ ろうか?」と考えたのが、ボランティアカットだったんです。美容師としてほんと単純に「髪を切って子どもたちを笑顔にしたい」って思えたんですよ。
とはいえ、自分は聖人君子ではないのでひと月に何回もボランティアはできない。けれど、1年365日の中でたった数日だけは誰かのために使うことはできるんじゃないかなって。続かないようなやり方を無理にしようとせず、長く続けていけるやり方でやるのが大切ですよね。
一児の子どもの親としても、子どもを守る立場の大人としても、日本がもっと子どもを安心して育てられる優しい社会になってほしいなって思います。
――子育てと美容業を両立するための秘訣を教えてください。
僕の美容師仲間にもパパさんが多いのですが、子育てがはじまった友人たちはお店を移っているか独立してますね。
「働き方やお給料、環境などに見切りをつけて違うお店に移る」という選択肢だけでなく、「そのサロンを自分が働きやすくなるように変える努力をする」という選択肢があっても良いのになって思うんです。それが後輩たちにとってもプラスにつながるはずですし。大きい会社だと大変かもしれないけど、中小企業なら自分が求める環境や制度を新しくつくるのは不可能ではないんじゃないかなと。
幸いにも、僕は柔軟に変化を受け入れてくれるサロンで働かせていただくことができていますが、うちもまだまだ発展途上。「法律を守ってホワイトになったから良い会社」ではなくて、スタッフやこれから美容師になる子たちが「ここで働きたい」と思える会社が良い会社だと思うので、僕はそんな会社にしたいと思っています。
改善しなければいけないところはまだたくさんありますし、これからも行動していきたいと思っています。