選んだ道はライバルとの共同経営。2人の強みが大きな相乗効果に【Tia.表参道 青山 代表/大和たくみさん】#2
SNSをきっかけに、Z世代で人気スタイリストの1人となった大和たくみさん。老舗サロン勤務を経たのち、かつてのライバルと共に独立したのは29歳の時。顔まわりの似合わせスキルを武器に、サロン激戦区で快進撃を続けています。
後編では、共同経営という道を選んだ経緯や、スタッフ育成への想いについてお聞きします。経営者という立場になった今、進化を続ける大和さんに大密着!
【お話を伺ったのは…】
Tia. 表参道 青山 代表 大和たくみさん
奈良県出身。大阪の美容専門学校を卒業後、都内有名店勤務を経て独立。SNSを活用した集客が成功し、最高月間売上1,000万円以上という記録を持つ。2022年6月には「Tia. 表参道 青山」をオープン。
それぞれの長所を活かした経営を
――後編では独立された経緯などについて伺います。まず、共同経営という選択をした理由は?
いずれは自分の店を持ちたいと考えていた所、同期の“はるはる”から「一緒にやらないか」と誘われて。一目置いた存在であるライバルから声を掛けてもらったのが、単純に嬉しかったですね。それに、1人より2人だからこそ、お店を大きく展開できる可能性を感じて、共同経営の道を選びました。
――共同経営ならではのメリットはどんな点ですか?
まず、孤独じゃないということ。自分ひとりだと、自身の判断に迷いが出ることってあると思うんですよ。でも2人なら何だって相談できるし、もしも相手が自分とは異なる意見だったとしても、ふた通りの視点で物事を捉えられるのは大きな武器になります。
また、役割分担の面でも心強いです。プレイングオーナーとして成功されている方は大勢いらっしゃいますが、未経験からいきなり現場と経営を両立させるというのは、やはり相当リスキーだし難しいこと。その点、特に僕らはタイプが違うこともあり、お互いの得意分野を活かすことで未熟さを補い合っています。
――どのように役割分担されているのですか?
僕は業界内の横のつながりや人脈の幅という点で弱いんですが、社交的な“はるはる”は色々な方とつながりを持っています。外部との円滑な人間関係があるからこそできる情報交換・発信や新たな事業展開などは、僕ひとりだったらきっと難しかったはず。
一方、僕が得意なのは経営上の実務面です。税務など事務処理の部分で、能力を発揮できているかなと思います。
――良いコンビですね。“はるはる”さんが大和さんを誘ったのは、お二人の凹凸がうまく作用すると見越してのことだったのでしょうか。
いやぁ、どうでしょう(笑)。彼なりに何か考えてはいたのかもしれませんが、最初からルール化したわけではなく、気が付いたら今の形が出来上がっていたような感じなので…。
ただ、10年近くライバルとしてお互いのことを見てきたからこそ、長所も短所も理解した上で支え合えているのかもしれません。
――素敵な関係だと思います。では、共同経営する上で気を付けていることも教えてください。
お店の運営方針や将来像について、常に意識を共有すること。また、経営パートナーであるからこそ、相手の言動に対して「こうして欲しい」「これはやって欲しくない」といった期待や望みってどうしても出てきますよね。
これらの感覚がズレてくると、お互いが全然別の方向を向いてしまって、お店は成り立たちません。密にコミュニケーションを取って、ちょっとしたことでもシェアするようにしています。
――独立前と比べて、お二人の関係性は変わりましたか?
僕たち、ケンカらしいケンカはしたことがなくて、一緒にお店をやるようになってからも変わらず仲良くやっています。唯一変化した点は、お互いが「代表」という肩書きで責任を背負うようになったからこそ、相手のミスやダメな部分を指摘しづらくなったこと。これをクリアするのが今後の課題かな。
お店の売上アップはアシスタント次第!
――大和さんご自身は、経営者という立場に変わって仕事への価値観は変化しましたか?
以前は、いかに自分の売上を上げるかという点にばかり意識が向いていました。でも管理する側に立ったことで、人材育成を重視するようになりました。どうやって下の子たちを育てようか、今はそればかり考えています。
――現在のお店のスタッフ体制は?
スタイリストは僕含めて3人、アシスタントは4人です。来春入社する新卒スタッフも決まっています。
――スタッフマネジメントで心がけていることを教えてください。
アシスタントのモチベーションを上げることが、お店の売上アップに直結すると考えています。アシスタントが楽しく仕事をしていれば、自然とお店の雰囲気は良くなり、お客様に与える印象が大きく変わりますから。リピートしてもらえるかどうかはアシスタント次第、といっても過言ではありません。
そのため、個人的に最も危機感を覚えるのは、アシスタントの熱量が下がっている時。モチベーションが落ちた原因が何であれ、いつもと様子が違うと感じたらすぐさまフォローするようにしています。
――常に、相手の感情を察知するアンテナを張っておく必要がありますね。
この意識は、スタッフ管理だけでなく、お客様への対応にも当てはまるはず。ちょっとした仕草や言葉一つひとつを丁寧にすくい取ることで、相手が何を求めているのか・何を感じているのかを察して応えてあげること。この繰り返しが信頼関係を生み、高い売上をキープする結果にもつながると思います。
――スタッフの士気を上げるためには、どのようにされていますか?
将来の理想の姿と、それを実現するための過程を具体的にイメージさせること。例えば「トップスタイリストになってとにかく稼ぎたい!」と野心を燃やすタイプなら、普段から高い意識を持って業務に励む必要がありますよね。やみくもに「頑張れ頑張れ」と煽るのではなく、キャリアプランについてじっくり話し合うことで、何のために頑張るのかを再認識してもらいます。
それに、スタッフが情熱を持って働くことで、その空気感が周囲に伝播して、さらにお店全体が盛り上がるというポジティブなサイクルが生まれます。スタッフの成長を全力で応援し、より働きがいのある職場をつくっていきたいです。
誰かのために何かをしようという意識が成功の源
――美容師として活躍を目指す若い世代へアドバイスをお願いします。
自分のためではなく、他人のために努力できる人間になってほしいです。お客様はもちろん、周りのスタッフ全員への気遣いや感謝の気持ちは、必ず自分自身へプラスの作用になって返ってくるはず。それぞれの夢の実現に向けて、日々頑張ってください!
大和さん流!お店の売上アップに欠かせない3ヶ条
1.周囲との信頼関係を築く
2.アシスタントのモチベーションを上げる
3.第一に考えるのは、他者を幸せにすること
取材・文/黒木絵美
撮影/喜多二三雄