地域のためのヨガを。インストラクターの数が増えるほど、健康になる人が増える【ヨガインストラクター ERIKOさん】#2
前編に続き、ヨガインストラクター・ERIKOさんにインタビュー。前回は、アパレルデザイナーからヨガインストラクターへ転身、さらに東京から宮古島へ移住、という人生のターニングポイントをお聞きしました。
後編では、ヨガインストラクターとしての活動内容について深掘りします。ヨガを教えるのは、地域の人々の健康を守るため。ヨガインストラクターを育てるのは、地域にヨガの種類を増やすため。ご本人曰く「おせっかい」な性格が、もしかすると宮古島の健康寿命を延ばしてくれるかもしれません。
教えてくれたのは…
ヨガインストラクター・ERIKOさん
アパレル企業に勤め、デザイナーとして活躍し、結婚を機にフリーのヨガインストラクターに転身。都内で数年活動した後、宮古島に移住。自宅兼プライベートスタジオ「ERIKO YOGA STUDIO」を構え、少人数制レッスンを行う。
生徒さんの小さな変化も拾いたい
――クラスはほぼ初心者向けですか?
地域の人を対象にしていたので、はじめは初心者向けを意識していましたが、段々と皆さんのポーズが深まり、今はアドバンンスポーズも難なくこなされてます。そして実は、少々難易度のあるクラスも得意で、東京にいたときから「キッツッ」と言われるようなクラスを開催してました。その頃を知る友人に誘われ、年に3〜4回程、東京でアドバンスクラスのWSを担当させてもらってます。
私は初心者の方に対し、体の基盤をつくるために丁寧に教えていくのが好きなんです。体の細かい部分まで指導する、というのが私の強みかなと。
――生徒さんと向き合う上で大切にしていることはありますか?
よく観察すること。体の状態も、心の状態も。
小さな変化でもしっかり捉えておくようにしています。私がその変化を見逃したばかりに生徒さんがのちに具合が悪くなったり、怪我をしちゃったら大変ですから。生徒さんとのコミュニケーションは細やかにしている方かもしれません。
――内面の不調にもやはり気づくものですか?
気づくかもです。「いつもより元気がないな」「元気がないのを隠している気がする」とか。本人が隠したいのであればこちらから根掘り葉掘り聞くことはしませんが、そういったときは少しでもクラスが楽しいものになるように意識するとか、リラックスする内容に変えるとか、生徒さんの表情を読みながら教えるようにしています。
――少人数制のレッスンにしているのもそのためでもありますか?
そうなんです。大勢の人に私のことを理解してもらわなくても良いけれど、私のクラスを受けてくれる人には最大限のおもてなしをしたい。私のことが好きで、私と一緒にヨガをしたいという人に真摯に向き合いたいと思っています。
――ヨガインストラクターの人柄もきっと大事ですよね。
東京にいた頃は大手のヨガスタジオでクラスを持っていたこともあり、人柄より時間で選んで来る人が多かったんですけど、宮古島では人柄だなって思いますね。
ヨガインストラクターが増える=ヨガの種類が増える。養成講座も地域貢献に
――移住当初と比べ、ヨガインストラクターは増えましたか?
増えていますね。スタジオもいくつかできましたし、今、宮古島でもヨガビジネスがかなり発展していますよ。
個人でヨガビジネスを立ち上げやすい島だと思います。レンタルスペースも普及してきたこともあり、フリーランスで活動する人や開業する人が増えたなと感じます。
私はインストラクターの養成講座も開いているので、地域のヨガビジネスの発展に積極的な方かなと…。
――ERIKOさんも、もっと宮古島でヨガインストラクターの数が増えてほしいと思っていますか?
もちろん!
1人の周りに10人の知り合いがいるとしたら、ヨガを教えられる人が1人増えればその周りの10人も気軽にヨガを教わることができますよね。ヨガって体だけでなく、心もケアできるので心身ともに健康になる。私がヨガインストラクターを育てていけば、10人、また10人と健康になる人が増えていくと思いませんか? そうなったら嬉しいなって。
確かに競争相手は増えるかもしれないけれど、例えば、私が教えたAさんがいます。Aさんは私が教えたけど、Aさんは私ではないですよね? 私と同じことができるかもしれないけれど、Aさんの解釈は違うかもしれないし、伝え方もAさんらしさが出るはず。それに、私を必要としてくれる人と、Aさんを必要としてくれる人はそれぞれ違うと思うんです。価格競争にはなるかもしれないけれど、色々なヨガのスタイルが増えて良いんじゃないかなと思います。
――ヨガインストラクターの数が増えるほど、ヨガの形も増えると。それも「地域のため」ですね。
そうそう。まだここは都会ほどヨガの種類が多くないですから。宮古島にも色々なタイプの人が住んでいるので、ヨガのスタイルが増えれば、自分に合うものを見つけることができると思うんですよね。
――その考え方、素敵ですね。企業ヨガも行っているようですが、それはどんな理由ではじめたのですか?
繰り返しになりますが、地元に根付いている方にヨガを教えていきたいと考えています。となると、地元の方々に出会うためには宮古島の企業に出向くしかないなと。
活動を発信していたところ、とある企業様とご縁がありました。「社員の健康があるからこその会社だ」との考えで、月に2回ペースで3年ほどやらせていただいたところ、嬉しいことに禁煙に成功した社員の方もいらっしゃると聞きました。
3年ほどやらせていただいたところ、嬉しいことに禁煙に成功した社員の方もいらっしゃいました。
医療機関の少ない地域では、健康でいることが何より大事
――ERIKOさんが感じる、宮古島での暮らしの魅力は?
静かな日常ですね。機械的な音はなく、鳥のさえずりだったり、波の音だったり、自然な音が聞こえています。空の色も鮮やかです。
ヨガをする上でも、宮古島の方が集中力が増す気がします。東京にいた頃は「次は〇〇をやらなきゃいけない」「何時までに〇〇に行かなきゃいけない」と常に忙しなかったですが、宮古島では本当にのんびりゆったり暮らせます。
アレやコレやとほしいものがすぐ手に入るわけではないので、物欲も抑えられる。無駄買いしなくて済むので、本当に必要なものしか身の回りに残らないんです。
一方、医療はやはり遅れているので、大きな病気をしたときのことを考えると不安ですかね。
――医療機関が発達していない分、日頃の健康ケアがより大事になりますよね。
そうなんです。だからこそ、ヨガを広めて地元の人々の健康寿命を延ばしていくことができればと思います。
――最後に、今後の展望をお聞かせください。
今、全国的にヨガ業界はとても難しいのではないでしょうか? コロナ禍を経て、なぜか日本ではヨガインストラクターの養成講座が増えたらしく、簡単にビジネスをはじめられるようになったのかなって…。養成講座の価格は、昔はそんなに受講料金に開きがなかったように思うのですが、今は10万円台のところもあるようで…変わったなと思います。安くて良い内容が届けられているのであれば素晴らしいこと。でも、価格競争によって、かつて私たちが時間をかけて学んだことが伝わっていなかったら悲しいなと感じています。
私がお伝えする養成講座は「個体差に合った無理のない、けれども最大限の力を使い、動きを引き出し、身体的・精神的な健康をつくるもの」で、日本発となる医師監修を終えた内容です。心と体のバランスを取り、快適な日常を目指していくもの。ヨガの魅力も、ヨガの教え方も、もっと宮古島で広めてけたら良いなと思っています。
ERIKOさんの地域に根ざしたヨガ活動とは?
1.高度さより体づくりの基礎を重視。細かいところまで丁寧に教える
2.地元住民が働く地元企業でヨガを教える
3.ヨガインストラクターを養成し、ヨガをもっと身近に感じてもらえるようにする
取材・文/佐藤咲稀(レ・キャトル)