訪問理美容師として独立し、収入はサロン勤務時代の倍に「ディライト」代表・団野圭輔さん

多くの美容師が憧れる独立の道。しかしサロンを構えるとなると初期費用や固定費がかなりかかるため、躊躇する人も多いのではないでしょうか。今回お話を伺った団野圭輔さんは、スモールスタートできる事業として訪問理美容を選び、独立したそうです。初期費用や固定費がほとんどかからないため、開業がスムーズだったという団野さん。6年経った今では収入がサロン勤務時代の倍になっているといいます。

前編では、訪問理美容サービスを立ち上げるまでの具体的な準備や、最初の1年はほとんど仕事がなかったという団野さんに、どのようにその窮地を乗り越えたかを伺います。

今回、お話を伺ったのは…

団野圭輔さん

理美容師/訪問理美容サービス「Delight」代表/出張撮影ディライトメモリーズPhotograper

理容師、美容師免許を取得後、地元である兵庫県三田市のサロンでキャリアを積む。憧れていた東京のサロンに勤めるも、思うように成果をあげることができず、三田市に戻る。その後、2017年4月に訪問理美容サービス「Delight」を立ち上げ。地道に訪問先を増やしていき、事業を軌道に乗せる。コロナ禍で訪問先に制限がかかったときに、出張撮影も行うサービスを生み出し、メディアで取り上げられるなど評判を呼ぶ。現在は出張撮影カメラマンとしても活躍中。

訪問理美容が必要となる時代を見越して

団野さんが訪問先に向かう時に使っている車。理容と美容の両方の免許を持っていることから「訪問理美容サービス」を名乗る

――訪問理美容サービスで独立する前までは、サロン勤務をされていたのですか?

はい。高校を卒業後にヘアサロンで働きながら通信制の専門学校に通い理容師免許、美容師免許を取得しました。その後、憧れていた東京のサロンに就職することができたのですが、成果を残すことができず地元である兵庫県三田市に戻り、再びサロンワークの経験を重ねながら独立することを意識し始めたんです

というのもちょうど地元に戻ってきたタイミングで結婚をしたり、子どもが生まれたりと環境が大きく変わりました。当時働いていたヘアサロンは昼から夜遅くまでの営業で帰宅が遅くなることが多く、子育てに積極的に参加できないことで奥さんに大きな負担がかかってしまっていたからです。家族との時間を増やすためには、独立しかないかもしれないと思うようになりました。

――訪問理美容師として独立しようと思ったのは、なぜでしょうか。

東京で働いていたときに訪問理美容のことを知り、これから社会はますます高齢化していくと言われていますし、三田市では訪問理美容を専業でやっている会社はなかったので、可能性を感じました

もうひとつ魅力に感じたのは、開業資金があまりなくてもスマートスタートができることです。最初は訪問理美容を専業にするつもりはなく、お店を構えつつ、訪問理美容もサービスのひとつとして提供しようかとも思っていたのですが、自己資金もそこまであったわけではないですし、融資も多くは望めなかったので、お店を持つことに不安もありました。そこで思い切って訪問理美容を専門にすることに決めました。訪問理美容での独立は、移動式のシャンプー台の購入を含め300万円ほどで開業できたので、メリットが大きかったです。

固定費がほとんどかからない訪問理美容の仕事は、利益率が高いのも魅力でした。現在独立してから6年目ですが、日曜、祝日休み、9時から17時30分勤務とサロン勤務時と比べて拘束時間は短く、収入は倍くらいになっています。仕事さえ確保できれば、訪問理美容はとても可能性があると感じています

サロン勤めをしながら、1年間の独立準備

サロン勤めをしながら、飛び込みで施設を周り訪問理美容の世界に足を踏み入れたという団野さん

――訪問理美容師として初めの一歩はどのように踏み出したのでしょうか?

訪問理美容は特殊な仕事ですし、一度体験してみなければ自分に合うかわからないと思ったのと、提携先を見つけたいという思いから、働いていたサロンの休日を使って飛び込みで施設周りをすることから始めました。半分はボランティアのような感覚で、施設の言い値で訪問カットの経験を積むことから始まり、数は多くないですがスムーズに訪問先を見つけることができました。独立の準備期間として1年ほど、特別養護老人ホームとデイサービスの2か所を1カ月に1、2回のペースで周るようになりましたね。その間に並行して、チラシや名刺を作ったり、ビジョンを固めていきました。

――訪問理美容の講習に出たり、資格取得はしましたか?

独立するときに日本理美容福祉協会というところの勉強会に参加をして、介助の方法については学びました。準備期間中はまったくノウハウがないままに飛び込んだので、寝たきりの方の髪を切るとか、膝をついてお客さまを見上げる状態で髪を切るなど、とても難しさを感じました。

その当時僕が担当させていただいていた特別養護老人ホームというのは、要介護度が高い、認知症の方などが多い場所で、暴れてしまう方もなかにはいらっしゃったので、どうやって安全に手早く切るかなど、実践のなかで学んでいきました

――ちなみに施設周りをしていて、ほかの訪問理美容業者がすでに入っているということはありませんでしたか?

どの施設もほとんど他の業者が入っている状態でした。三田市には訪問理美容の業者はありませんでしたが、近くの理容室や美容室が休みの時間を使って施設を周っているケースが多かったです。準備期間中にご縁がつながった2施設は、たまたま業者が切り替わるタイミングだったり、今まで訪問理美容を受け入れてこなかった施設に巡り会うことができたのでラッキーでした。

初月の売上は数万円。アルバイトをしながら、徐々に訪問先を開拓

最初はなかなか訪問先が見つからず苦労をしたという団野さん

――それでは、独立後は順調だったのでしょうか?

それが全然でしたね(笑)。準備期間中に通っていた施設さんも、実際に独立するのでこのくらいの金額で担当させてくださいと言ったら、その金額では難しいですと言われてしまい入ることができなくなってしまいました。起業した1年目は本当に仕事が少なかったですね。初月の売上は3万円ほどで、そんな状況が数カ月続きました

――その窮地をどのようにして、乗り越えましたか?

仕事がなかったのでアルバイトもしましたし、知り合いのカメラマンさんの撮影を手伝うことで、自分もカメラマンとしてのキャリアをスタートさせ、収入を得ることができるようになりました。今では業務委託として撮影の仕事を受けることもありますし、この経験が後に訪問理美容×出張撮影というサービスが誕生するきっかけになったので、そのカメラマンさんは僕の恩人でもあります。

訪問理美容の方は、足を使った営業活動に力を入れるようになりました。まず訪問先を施設に限定せず、個人宅にも広げました。やはり施設はすでに担当している方がいるというところが多かったので、新規開拓していくのであれば個人宅にもアプローチしたほうがいいと思ったんです。そのためにはポスティングが一番効率的だと考えました。今でこそ訪問理美容が忙しくなってしまったので、なかなかポスティングができなくなってしまいましたが、チラシにもこだわり、空いている時間は少しでもポスティングをしたりして、訪問先を徐々に広げていきました。


団野さんが訪問理美容サービスの独立で心がけた3つのポイント

1.初期費用や固定費のかからない形での独立にこだわった

2.いきなり独立するのではなく、休日を使って施設を周るなど準備期間を設けた

3.独立後は施設にこだわらず、個人宅にもフォーカスするなど柔軟に対応した

後編では、訪問理美容を軌道にのせ、人気を得るまでに団野さんが実際にやってきたことを伺います。個人宅の訪問先を増やすためポスティングに力を入れてきたという団野さん。チラシの内容にもこだわり、一番手に取ってもらいやすい形を見つけたといいます。また訪問理美容と出張撮影を組み合わせて提供するようになり、他社との差別化にも成功したそうです。後編もお楽しみに!

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