美容師がハサミ研ぎを頼むべきタイミングと頻度とは? セルフメンテナンスの方法を紹介
ハサミの切れ味の良し悪しは、美容師として自身の技術力・パフォーマンス力に大きな影響を及ぼします。施術に悪影響を出さないためにも、日々ハサミの状態をチェックして、メンテナンスを怠らないようにしましょう。
今回は、ハサミの切れ味が悪くなる原因やセルフメンテナンスの方法、プロのハサミ研ぎの特徴について解説します。
美容師がハサミ研ぎを頼むべきタイミングと頻度とは?
美容師が使うハサミは、使用頻度が高いほど劣化が生じやすくなり、ときには刃こぼれが起こることもあります。ハサミの切れ味が悪くなるとスムーズにカットができず、ヘアスタイルを思いどおりに仕上げられないかもしれません。
ハサミの切れ味が悪くなる原因と、ハサミ研ぎを依頼するタイミングや頻度について解説します。
ハサミの切れ味が悪い…どんな原因がある?
ハサミの切れ味が悪くなる原因はさまざまです。物理的な劣化や破損のほか、かみ合わせやネジの緩みなど、ハサミ本来の機能の低下などが考えられます。ハサミの切れ味が悪いときの主な原因をご紹介しましょう。
1.バリが生じている
バリとは、ハサミの刃と刃がすりあうことが原因で、刃が反り返ってしまう状態です。見ただけでわかる大きなバリもあれば、目にほとんど見えない小さなバリもあります。小さなバリでも気づかないまま放置してしまうと、切れ味が落ちたり髪に引っ掛かったりするため注意が必要です。
2.裏刃・ガイドがヘタっている
刃と刃がすり合ってしまい、裏刃やガイドが摩耗して刃がヘタることがあります。裏刃は刃の内側にあるため、摩耗していることに気づきにくいかもしれません。定期的に刃の内側やハサミの開閉の具合を確認すると、早期にヘタりを発見できます。
3.刃こぼれが起きている
ピンやヘアアクセサリーなど、かたいものを挟んだときに、ハサミが刃こぼれすることがあります。刃こぼれが生じると、髪の毛をキレイにカットするのが難しくなるでしょう。刃こぼれは物理的な欠損ですので、セルフメンテナンスによる回復が難しく、修理業者へ依頼するのが一般的です。
4.かみ合わせが悪くなっている
刃と刃のかみ合わせが悪いと、ハサミの機能が低下します。主な原因は刃の反りや捻り、ネジの緩みなどです。ヒットポイント(ハサミの指穴についている小さな突起)の摩耗が原因になることもあります。かみ合わせが悪いまま使い続けると、ハサミの寿命を縮めかねません。
5.ネジが緩んでいる・締めすぎている
ハサミの中心にあるネジが緩むと、刃がうまくかみ合わなくなって切れ味が下がったり、刃こぼれを起こすことがあります。ハサミのパフォーマンスを下げないためにも、定期的にネジの調整をおこいましょう。
ネジの調整は美容師自身でおこなうことも可能ですが、自信がない場合は専門の修理業者へ依頼するほうが安心です。
6.サビが生じている
ステンレス製のハサミの場合、水分が付いたまま長い間放置したり、パーマ液が付着したりしてサビが生じることがあります。サビが発生すると切れ味が落ちるだけでなく、お客様の髪に引っかかってしまい、髪を傷める原因にもなりかねません。
7.部品が欠けている
ハサミのヒットポイントがゴム製の場合は、衝撃などでヒットポイントが外れたり欠けたりすることがあります。ヒットポイントの欠損で刃先が合わなくなり、切れ味が落ちてしまうケースも。切っているときの音が大きくなったと感じたら、ヒットポイントが欠損している可能性があります。
ハサミ研ぎをプロに頼むべきタイミングとは?
ハサミの切れ味をたもつためには、日々のセルフメンテナンスが非常に重要です。ただし、セルフメンテナンスだけでは100%の切れ味を維持することは難しいかもしれません。
美容師としてつねに最高のパフォーマンスを発揮するためには、ハサミのセルフメンテナンスだけに頼るのではなく、定期的にハサミ研ぎのプロに依頼するようにしましょう。
メーカーと研ぎ屋の違いとは?
ハサミの研ぎや修理をプロに依頼する方法は、おもにメーカーと研ぎ屋の2種類です。
メーカーはそのハサミの開発元であり、ハサミの機能や性能、構造などについて熟知しています。そのためメンテナンスにおいても信頼性が高く、新品同様の切れ味を取り戻すことも可能です。ただし、ハサミをメーカーに送るため、修理完了までに時間がかかることがあります。
研ぎ屋は全国各地に店舗があり、出張や当日仕上げなどの研ぎや修理を依頼しやすいのがメリットです。研ぎ屋ごとに技術力の差があるため、事前に口コミなどを確認して、信頼性の高いお店を選ぶ必要があります。
どれくらいの頻度で頼めばいいの?
ハサミの研ぎや修理の依頼は、1年に1回が目安とされています。ただし、正常な状態であっても「なんだかハサミの切れ味が悪い」と感じたら、そのタイミングで研ぎや修理を依頼しましょう。
研ぎから帰ってきた時に気をつけたいこととは?
研ぎ終わった後のハサミは、以前と比べて切れ味や使用感が変わっていることがあります。研ぎから帰ってきたハサミを使用する際は、実際の施術の前に慣らしカットをおこって、ハサミの使い心地や感触、研ぐ前との変化を確認しましょう。
また、研いだ直後の刃は、鋭すぎて欠けやすくなっています。ハサミに大きな力をかけないように、切るときは毛束を少なめにとると安心です。
セルフメンテナンスの方法を紹介
ハサミをできるだけ長持ちさせるためには、日々のセルフメンテナンスが欠かせません。セルフメンテナンスを毎日おこなうと、ハサミのわずかな変化や不具合に気づけます。自身で修復できない場合や目安となるタイミングが来た場合は、ハサミ研ぎのプロに依頼するとよいでしょう。
ここでは、自身で手軽にできるハサミのセルフメンテナンス方法をご紹介します。
1.汚れを落とす
ハサミのセルフメンテナンスの基本は、汚れを落とすことです。施術で使用したハサミには髪の毛や汚れ、パーマ液などが付着しているため、そのまま放っておくと劣化が進みやすくなります。
まずはティッシュやタオルなどでハサミに付着したものを拭き取り、お湯で洗い流しましょう。その後、もう一度タオルやティッシュで拭き取ります。
セニングシザーの場合
セニングシザー(クシ刃)の場合は、刃元から先端まで順番にクシ目に沿ってタオルやティッシュでていねいに拭き取ります。クシとクシの間に髪の毛や汚れが挟まって拭き取れないときは、お湯で流しながら歯ブラシで除去しましょう。
汚れをすべて除去したら、お湯で洗い流し、再度タオルやティッシュで拭き取ります。
2.オイルを補給する
ハサミの汚れを落とした後は、オイルを補給します。刃と刃が触れ合う部分やネジ部分にオイルを数滴垂らし、ティッシュや布で伸ばして均等に行き渡らせましょう。片面の補給が終わったら、ハサミを裏返してもう片面にもオイルを補給します。
注意点は、余分なオイルは拭きとること。髪のべたつきや汚れの原因になるからです。
どんなオイルを使えばいいの?
潤滑や防サビの効果は同じでも、専用のシザーオイル以外のものを使用するのはNGです。ハサミで使用するオイルは、必ず専用のシザーオイルを使いましょう。
また、香りのあるものや粘度が高いものも避けます。ハサミはお客様の顔の近くで使用するものなので、オイル特有のにおいが不快感を与えるおそれがあるからです。粘度が高いオイルは油が固まったり、汚れが留まりやすかったりします。
3.刃を拭く|セーム革を使用
オイルを補給したハサミは、セーム革を使用して拭き取ります。セーム革を使用すると、ハサミのバリ(返り刃)を除去できるからです。このとき、セーム革はできるだけきれいなものを用意しましょう。
セーム革は2~3枚に重ねて折り、ハサミの刃元で包んで軽く押しながら刃先に向かって滑らせるように拭き取ります。この動作を数回繰り返したら、片側が完了。もう片方の刃も同様に繰り返します。
セーム革が汚れてきた時は?
セーム革は使用しているうちに汚れが付着し、質感も低下してきます。セーム革が汚れた場合は、ぬるま湯と石鹸で洗って質感を回復させることが可能です。
ぬるま湯と石鹸でていねいに汚れを落とし、タオルやキッチンペーパーなどで水気をしっかりと吸収します。手でギュッと絞るとシワができてしまうので要注意です。水気を吸収した後は、陰干しで乾かします。
4.ネジを調整する
セルフメンテナンスの仕上げは、ネジの調整です。オイルを補給するとネジが緩むことがあるので、専用ドライバーを使ってネジを締めましょう。
ハサミの刃先を上にしてハンドルを持ち、片方の刃を完全に開いてから離したときに、刃が完全に閉じてしまうのはネジが緩い証拠です。また、刃がまったく動かないときは、ネジを締めすぎています。刃先と刃先の間が1cmくらいで止まるのがベストです。
1年に1回はプロに頼もう!
ハサミは日々のちょっとしたお手入れの繰り返しで、長持ちします。ハサミの切れ味が悪くなる原因を理解したうえで、日々のセルフメンテナンスを怠らないことが大切です。
ハサミの切れ味を確実に維持するためにも、セルフメンテナンスだけでなく、1年に1回はプロのハサミ研ぎに頼むことをおすすめします。