単価アップと情報発信により週休3日、月100万を達成。1人サロンの可能性とは「AURUM」金田昭徳さん
1人美容室で月100万の売上。そう聞くと、休みなく働いている姿をイメージしてしまわないでしょうか。しかし、愛知県岡崎市で1人サロンを経営する金田昭徳さんは、週休3日で月の売上100万円を達成しているそうです。
前編ではなぜそのようなことが可能になったのかを伺いました。ポイントとなったのは、単価アップと情報発信だといいます。
今回、お話を伺ったのは…
金田昭徳さん
美容師/「AURUM 」代表
愛知県の数店舗を経て、独立。当初はアシスタントのスタッフを雇用していたが、2017年より、1人サロンにシフトチェンジ。現在は週休3日で月100万円の売上が可能なサロンに。ブログ、インスタ、stand.fm、kindle本などさまざまな媒体での発信にも力を入れることで、広告宣伝費ゼロで集客にも成功しているため、高い収益が可能となっている。
単価アップが1人サロン経営の鍵。4年でカット料金を倍に。
――週休3日で平均して月100万円の売上をあげているそうですね。
はい。基本週休2日なのですが、長期休暇などが入って月の休みが12日ほどになったときでも、月の売上は平均して100万円をキープできるようになってきました。人を雇っていたときと比べても、利益率は高くなっています。
――人を雇っていたころもあったのですね。どんなきっかけで1人サロンになったのでしょうか?
人を育てることが僕には向いていないかも、と思ったことです。スタッフの退職が続き、人を育てる自信を失ってしまって。独立したからには、経営をスケールさせたいという気持ちがあって、成功の道は店舗展開にしかないと思っていたので、スタッフが辞めてしまったあともすぐには切り替えられませんでした。そんなときに1人サロン経営を成功させている方の書籍を読んで、挑戦してみようと思ったんです。
――そこからどのようにして月100万円の売上を実現したのでしょうか?
単価アップが大きな鍵になったと思います。独立したときのカット料金は3,900円だったのですが、1人サロンにシフトした4年間でまずは4回くらいにわけて6,050円まであげました。そして2年前の11月には7,700円に。約4年でカット料金は倍になっていますね。
――2年前に大きく単価をアップさせた理由は?
そのとき45歳くらいで、50代が目前に見えてきていました。今後も1人サロンの経営を続け、僕が目標にしている生涯現役を通すには、単価をあげて客数を減らしていくのは避けては通れない道だと思っていたんです。どうしても体力が下がってきますから。
ただ、やはり一気に1,650円アップさせることは賭けでもありました。7,700円はこの辺りでは相当高いので、新規のお客さまがまったく来なくなる可能性もあるなと。そこで、保険をかけるため、既存のお客さまは6,050円のままにすることにしたんです。考え方としては株と同じような感じ。上場したばかりでまだ信用が薄い状態の中で応援してくれる人は、株を安く買えるわけです。
大幅単価アップ後の方が新規数は増加。情報発信という武器
――実際に値上げした後、新規のお客さまの数はどう変化しましたか?
僕も驚いたのですが、値上げ前より新規のお客さまが来るようになったんです。それが実現できたのは、自分がどんな美容師なのかという情報発信に力を入れていたからだと思っています。価格どうこうではなく、僕が普段どんな考え方でどんな施術をしているかを知って興味を持った方や、共感してくれた方が来店してくれたのではないかと。
――なるほど。ということは、単価アップのためには、美容師としての価値が必要で、それが伝わっていないと難しいということでしょうか?
価値というと大きく捉えてしまいがちですが、自分が普段の施術でやっていることを発信し、それを魅力に感じる人がいれば来てくれるという仕組みだと思うんです。いわゆるマッチングの問題ではないかと。
僕の場合は、今は主に大人女性に向けて発信をしています。その内容というのが、うちのサロンでは白髪の方に対して、白髪染めも、インスタで流行った細かくハイライトを入れていく「脱白髪染め」も使わないで、いわゆるおしゃれ染めと言われるカラーを使って白髪を楽しむことをおすすめする発信をしていて。それで白髪染めやブリーチを使うのが嫌な大人女性が、うちのサロンにきてくださっていると思うんです。白髪染めをしてほしい人がいれば白髪染めをしているサロンに行くでしょうし、してほしくない人がいればうちに来る。どちらが上というものではなく、自分にあったサロンへ行くだけです。
――なるほど。単価をあげるには人より秀でたものがないと、と考えてしまいますが、あまり構える必要はないんですね。
もちろん技術の探求は必要です。ただ、自分には50名の指名しか入らない人が、自分の近くに月に200名指名が入るという人がいたからと言って、自分は価値が低いと思って落ち込む必要はないと思うんです。指名がゼロという場合は少しがんばらないといけないと思いますが、自分についてくれている50名と同じ価値観の人に、自分がやっていることを広げていけばいいだけ。
とくに1人サロンを経営している場合は、担当できる人数が限られてきますので、数が多いということよりも、数は少なくても自分を選んできてくれる人がいるかどうかがとても重要です。
3年間の毎日更新を続け、収益化にも成功
――発信に力を入れるようになったきっかけはあったのですか?
きっかけは1人サロンになったときに、今後は宣伝広告費にお金はあまりかけられないと思い、集客サイトの使用を止めたことでした。
――情報発信はどの媒体で始めましたか?
最初に発信を始めたのが7年前で、当時流行っていたブログにしました。元airの木村直人さんが「これからは、個人がオウンドメディアを持つ時代だ」とおっしゃっていたのを聞いたので、自分でアカウントやサーバー契約をしてブログを作成し、発信していました。1年間は毎日投稿すると決めて、結局それを3年間続けましたね。
――発信する内容はどのように決めていましたか?
今、考えるとダメダメなのですが、最初は日々のプライベートな出来事を300字くらいで書くことが多かったですね。発信を続けていると、PV(ページの閲覧数)もだんだんついてくるようになって、どういう記事の反応がいいかがわかるようになってくるんです。僕の場合は大人女性に対する記事の反応が良かったので、そこから大人女性に対する発信を増やしていきました。ただ、内容を完全に絞ってはいなくて、相変わらずプライベートな内容も発信していましたね。
――すぐに集客に効果はありましたか?
いえ。最初に集客につながったのは、ブログの発信を始めて1年後くらいだったと思います。そこからちょこちょことお越しいただく方が増えてきました。ただブログをやっていてよかったということは、たくさんあって。
先ほどもお話しした通り、僕のことを知ったうえで通ってくれるお客さまが増えたこと。そして最盛期で5万PVがついて、収益化ができたこと。あとは情報発信の成功体験になったことです。その後、社会の流れにあわせて発信の媒体を変えていったのですが、発信は効果が出るまでに時間がかかります。でも続けていればかならず効果が出る。ブログの発信を通してそれを知れたことが、大きなプラスになっていると思っています。
金田さんが経営に成功した3つのポイント
1.人材育成が苦手だったことを逆手に取り、1人サロンに振り切った
2.単価をアップさせ、4年間でカット料金を倍にした
3.自分で発信を行い、宣伝広告費をゼロにした
後編では金田さんが力を入れている、stand.fmを使った音声配信についてお話を伺います。音声発信に興味がありつつも、なかなか始められなかったという金田さん。恥ずかしさを捨て、「とりあえずはやってみる」の精神で一歩を踏み出し、kindle本の出版などにもつながっていったといいます。後編もお楽しみに!