デビューと同時に集客に苦戦。厳しい言葉をかけてくれたからこそ、今がある 「ULL」Shinoさん
名古屋のネイルサロン「ULL」。個性的なデザインや丁寧な接客で、人気を集めるサロンです。そんな「ULL」で入社4年目となるのが、Shinoさん。
元々、セルフネイルが趣味で、軽い気持ちでネイルスクールに通い出したというShinoさんは、徐々にネイルの魅力にはまりネイリストの道へと進みます。技術の難しさを感じることはあっても、ネイリストの仕事が楽しかったというShinoさん。最初にぶつかった壁が、ネイリストデビューと同時にお客さまが離れてしまったことだったそうです。
そのときにオーナーが集客できない理由をはっきりと告げてくれたことで、ネイリストとしての土台が作られたといいます。
今回、お話を伺ったのは…
Shinoさん
「ULL」リーダー/ネイリスト
自動車工場で勤務をしながら、ネイルスクールに通い、ネイル検定などの資格を取得。スクール卒業後は、ネイルアートのデザイン性と、オーナの人柄に惹かれ、「ULL」に入社する。入社3年目から、スタッフのAyanaとともにリーダーに抜擢され、育休中のオーナーに代わり、店舗をけん引する存在に。
工場勤務からネイリストへ。きっかけは軽い気持ちで入ったネイルスクール
――ネイリストになった経緯を教えてください。
ネイリストになる前は自動車工場で部品を作る仕事をしていましたが、そのころから趣味でセルフネイルを楽しんでいました。その後ネイルスクールに通い始めたのですが、最初はネイリストになろうという思いはなくて、セルフネイルに活かすためにちょっと勉強したいなというくらいの軽い気持ちでした。
――ネイリストを目指すようになったのには、何かきっかけがあったのですか?
スクールのなかで、生徒同士でペアになってお互いにネイルをしあう時間があって、人に対してネイルをすることの楽しさを知ったんです。元々人と話すのも好きでしたし、だんだんとネイリストになりたい気持ちが固まっていきましたね。
ネイルスクールでネイル検定2級とジェル検定上級を取得して、「ULL」に応募しました。ちなみにネイル検定1級も、少し時間がかかってしまいましたが、「ULL」入社後に取得することができました。
――就職先に「ULL」を選んだ理由は?
「ULL」で提供しているデザインに、とても引きつけられたからです。どんなネイリストになりたいかを考えたときに、デザインで選ばれる人になりたいという思いが強かったので、サロン選びの際にはInstagramでネイルデザインから探していて、「ULL」を見つけました。
――そこから採用試験を受けたのですね。
まずはサロン見学に行ったのですが、そのまま面接になったんです。面接で色々とお話ししたあと、「実は今、『ULL』は移転を控えていて、お店が変わるまでは席数が少ないので、アルバイト契約になってしまいます。その条件を踏まえた上でも入社したいと思ってくれたら連絡ください」と言っていただけました。じっくり考えましたが、たとえ最初はアルバイト契約だとしても、魅力のある環境だと思ったので、入社することにしたんです。
入社を決めた一番大きな理由は、オーナーの人柄です。見学に行った際、扉を開けた瞬間からオーナーの包容力を感じて、一瞬にして憧れの人になってしまって。一緒に働きたい、働けたら学ぶことが多いだろうと感じました。
コツコツと努力を積み重ねていくことで、選ばれる人になれる
――最初はアルバイトからの勤務だったということですが、どのように仕事はスタートしましたか?
勤務日数が限られてはいましたが、仕事の内容自体は正社員の新人と変わりはありませんでした。モデルさんを呼んで、正規の金額より安い価格で施術をするところから仕事がスタートします。施術以外の掃除などの業務も担当しながら仕事をしていました。
――モデルさんとはいえ、初めてお金をもらって施術をしたのだと思いますが、どんなことを感じられましたか?
技術面では最初はやはり難しさを感じることが多かったです。時間内におさめることを意識しながら、満足してもらえるクオリティの仕上がりを提供しないといけないので。ただ、同時に楽しさも感じました。
――どんなところに楽しさを感じていたのですか?
好きなネイルの仕事をして、お客さまに喜んでもらえることを実感できたので、幸せでしたね。技術面でも練習をしたり、先輩に指導をしてもらえると、どんどんできることが増えますし、それが自分の自信にもなるので、楽しさが倍増していきました。
あとはサロン内の空気も大きかったと思います。当時の「ULL」はオープンして1年ほどで、スタッフも私を入れて4名だったのですが、お客さまも多かったですし、みんなとても楽しそうに仕事をしていました。とても活気があって、私も早く溶け込みたいと思っていました。
――大変なことがあっても、楽しさを感じられるのは素晴らしいですね!
最初にある程度覚悟ができていたのも、よかったのかもしれません。「ULL」の求人の内容にはオーナーの言葉で、「ネイルの仕事は華やかに見えるけれど、地道な作業もあります。コツコツと努力を積み重ねていくことで、選ばれる人になれます」と書かれていました。大変なことがあって当たり前、そういうものなんだと思って入ったので、ギャップに悩むこともありませんでした。
入社してからもオーナーに、「最初からできる人はいないから、できなくて当たり前。でもできるようにするためには、努力が必要だよ」と言われていました。
ネイリストデビューと同時にぶつかった壁
――入社からどれくらいで、ネイリストデビューができましたか?
入社から4ヶ月目でした。現在では教育体制が整ったので、デビューまでもう少し時間がかかるのですが、その当時はあまり人数がいなかったので割とテンポ良くデビューさせてもらったんです。
――デビューをして、どのようなことを感じましたか。
デビューをすると、モデル価格から正規の金額に変わるのですが、ここで大きな挫折を味わいましたね。それまでついてくれていたお客さまが、料金が変わったと同時に離れていってしまって、あまり予約が入らないようになってしまったんです。
――その状況をどのように改善したのですか?
集客ができなくなった理由が自分では分からなかったので、オーナーに相談をして、集客ができていない理由として考えられるものをいくつか挙げてもらいました。
そこで指摘されたのが、お客さまの求めているデザインを引き出せていないことと、求めているデザインを再現するための技術力が伴っていないということだったんです。金額が安いときはそれでもなんとかなっていたのですが、正規の金額になったときはほかのネイリストが選ばれてしまうのではないかと指摘をしてもらいました。
確かに当時の私は、技術の自信のなさからお客さまと楽しくお話することにフォーカスしすぎて、ほとんどカウンセリングができていなかったと思います。振り返ってみると当然の結果だともいえるのですが、当時の私にはそれが見えていなかったんですよね。
――指摘されたときはどんな気持ちでしたか?
すごく衝撃を受けましたし、少しは否定された気持ちになりました。でも、その衝撃がなかったら、多分ここまでこれなかったと思うので、厳しい意見を言ってもらえて良かったと思います。
――原因が分かってから、具体的にはどんなことを変えていったのですか?やはりカウンセリングが重要なのでしょうか?
カウンセリングももちろん大切なのですが、まず技術やデザイン力を磨くことで、お客さまがついてくださるようになってきたと思います。カウンセリングはお客さまの要望を引き出すのに大切なものですが、お客さまが求めているものを再現できないときに、代わりのものを提案する意味合いもあると思っています。
最初からお客さまが求めるものが再現できてそれが満足いただけるものであれば、代替案を出す必要もないので、まずはカウンセリング力より技術力をつける必要があると考え、練習に励みました。
Shinoさんが大切にした新人時代の3つの心構え
1.デザインで選ばれるネイリストになるというビジョンを明確に持っていた
2.入社前から、コツコツと地道な努力が必要になることを覚悟していた
3.厳しい意見も、自分の成長の糧だと前向きに受け止めた
後編ではShinoさんの2年目、3年目にスポットをあてて、お話を伺います。2年目になると指導も担当するようになり、自分とは違うタイプの後輩に接する場面ではとくに難しさを感じることも多かったといいます。自分と違う考え方を徐々に受け入れるようになると、後輩から学ぶことも増えていったそうです。後編もお楽しみに!