教育係としての挫折。オーナーと後輩から学んだ、違う考え方を受け入れる大切さ「ULL」Shinoさん
名古屋のネイルサロン「ULL」。個性的なデザインや丁寧な接客で、人気を集めるサロンです。
そんな「ULL」で入社4年目となるのが、Shinoさん。前編ではShinoさんがネイリストになったきっかけや、1年目の経験について振り返っていただきました。
後編ではShinoさんの2年目、3年目にスポットをあてて、お話を伺います。2年目になると指導も担当するようになり、自分とは違うタイプの後輩に接する場面ではとくに難しさを感じることも多かったといいます。自分と違う考え方を徐々に受け入れるようになると、後輩から学ぶことも増えていったそうです。
今回、お話を伺ったのは…
Shinoさん
「ULL」リーダー/ネイリスト
自動車工場で勤務をしながら、ネイルスクールに通い、ネイル検定などの資格を取得。スクール卒業後は、ネイルアートのデザイン性と、オーナの人柄に惹かれ、「ULL」に入社する。入社3年目から、スタッフのAyanaとともにリーダーに抜擢され、育休中のオーナーに代わり、店舗をけん引する存在に。
180度違う後輩に出会って知った、人の気持ちに寄り添う大切さ
――2年目になって、仕事内容には変化がありましたか?
2年目くらいになると後輩が入社してきて、私が教育を担当するようなりました。ここでは教えることの難しさに直面しましたね。私自身がスキルを学ぶことは好きなのですが、それをだれかに伝えるのが苦手でした。オーナーには「あんまり伝えるのが得意な人っていないよ」と言われて、少しは気が楽にはなったのですが・・・。
でもお店がこれからもっと成長していくためには、苦手だとも言っていられないですし、私が分かりやすく説明する方法を身につけるのがとても大切だと思ったので、教え方を試行錯誤するようになりました。
――具体的に、何か教え方を変えたのですか?
はい。それまではこれはいい、これはだめと、方法論だけを伝えていたのですが、あわせて理由も付け加えるようにしました。理屈がわからないままだと、技術も接客もなんとなくやっているだけことになってしまいますし、理由が分かっていることで後輩の吸収も早くなった気がします。
後輩に教えるのと同時に自分の業務もやらないといけないので、両立がちょっと難しいと感じた時期もありましたが、教えることによって自分の理解もより深まりますし、教育を通して学べたことはたくさんありました。
――どんなことを学びましたか?
学びはいろいろありましたが、たとえば私とは180度考え方が違う後輩との出会いは大きかったかもしれません。私は物事に関してあまり深く気にしないタイプなのですが、その後輩はとても気にする繊細なタイプでした。
最初はその子の気持ちを楽にしてあげたい、私と同じ方向を見てほしいと思って、自分に寄せようとがんばってしまっていたのですが、あるときそれだとその子の気持ちが尊重できない、私の押しつけだと気付いて。そこから徐々に自分とは違う思いの人を受け入れられるようになってきたと思っています。その後輩に出会うことで、さまざまな考え方があること、その思いを受け入れることの大切さを学ぶことができました。
――そのように思えるようになったのは、何かきっかけがあったのですか?
オーナーが、多少私と意見が違ってもいつも受け入れてくれていた経験があったから、その重要性に気付けたと思っています。技術や接客にはある程度の正解がありますが、人の思いや考え方に正解はないので、今でも難しさを感じることはあります。
リーダーを任されたプレッシャーから、周りが見えない状態に
――3年目からは、リーダーに抜擢されたそうですね。そのときはどのようなことを感じられましたか。
自分ががんばらないといけないというプレッシャーで押しつぶされそうで。結果、独りよがりになってしまったな、と。
――具体的には、どういった点から独りよがりになっていたと感じられたのですか?
サロンを引っ張っていかないといけないという思いから、スタッフの気持ちに寄り添わないまま、ひとりで走り出してしまったんです。だれにも助けを求められませんでしたし、熱くなりすぎてしまって。その時期の私は多分周りから見てもテンパっていたと思います。
――独りよがりになっていたと、自分で徐々に気付いていったのですか?
このときもオーナーから助言をもらったんです。「1人にならなくていいし、後輩を頼っていいんだよ。後輩に頼ることもリーダーの仕事なんだよ」と。だんだんと周りが見えるようになって、仕事はみんなでやればいいと思えるようになっていきました。
当時から後輩のことが信用できなかったというわけではないのですが、自分がやらなくてはいけないという風に思い込んでしまっていたんですね。今は反省しています(笑)。
どんなに輝いて見える人も、影で努力をしている
――新人時代の経験は、Shinoさんにとってどんな学びになりましたか。
私は新人時代を通して、どんなに輝いて見える人でも、その人は影で絶対に努力をしているということを学んだんです。そして、自分が努力をすれば、かならず報われると思えるようになりました。
今日お話したようにたくさんの失敗をしてきたのですが、失敗に向き合い、ひとつずつ積み重ねてきたことが自分の財産になっていると感じています。そしてその積み重ねは、私ひとりでは、絶対に得ることができなかったと思うんです。お客さまやオーナー、スタッフと関わることで、たくさんのことを学ばせてもらいました。
――ネイリストの仕事の魅力は?
ネイルデザインに自分の世界観を表現し、お客さまがそのデザインの良さに共感してくれるのが魅力ではないかと思います。自分の世界観というと、自分の内側をただ表現していけばいいと思うかもしれませんが、お客さまが求めるもの、希望に添ったデザインを生み出すことが大事です。そして自分が技術を習得すれば再現度が高くなり、お客さまにも喜んでもらえる。それがやりがいになる仕事です。
――最後にネイリストを目指す方にアドバイスをお願いします。
好きなことを仕事にするのは怖いこと、仕事にしたら嫌いになってしまうのではないかという意見を聞くことがあるのですが、私は知識や技術を身につけることで、ネイルがもっと好きになったと思います。
ネイリストはたくさんの人と関わりがあるので、その方の持っている知識や世界に触れることができ、自分の世界を広げることもできます。それがとても楽しく、人と関わるのが好きな方や、成長をしたい方には天職だと思うんです。
そして自分を成長させるには、サロン選びや、どんな人と働くかもとても重要な要素だと思います。気になるサロンがあれば足を運んで、ぜひ体感してみてください。華やかなだけの世界ではないかもしれませし、地味に努力を重ねることも必要ですが、その積み重ねでもっとネイルを好きになれると私は思います。
Shinoさんが新人時代の壁を乗り越えた3つのポイント
1.苦手なことでも、試行錯誤を繰り返し自分にあった方法を見つけた
2.人と関わることで学びを得て、自分を成長させてきた
3.かならず報われると信じて、コツコツと努力を重ねてきた
お話の端々から、ネイルやお店に対するShinoさんの強い思いが感じられました。大好きなネイルを仕事にしたからこそコツコツと努力を積み重ねることができ、今のShinoさんがあるのだと思います。これからネイリストになりたい方はぜひ参考にしてみてくださいね。