美容部員にとって大切なのは、本当に必要な商品を届けられる関係性を築くこと「アテニア」赤瀬美香さん

エイジングケアブランドとして、2024年に35周年を迎えた「アテニア」。高品質な商品を手にしやすい価格で提供し、長年のファンも多い人気ブランドです。

そんな「アテニア」に2015年に中途入社したのが、赤瀬美香さん。前編では赤瀬さんが美容部員になったきっかけや、最初に配属された店舗で先輩たちに支えられて楽しみながら仕事を覚えていったことについて伺いました。

後編では、赤瀬さんが新人時代にぶつかった壁についてお話しを伺います。「アテニア」では商品を決めて買いにくるお客様が多く、入社当初は別の商品の提案をしたり、関係性を広げていくことに難しさを感じていたりしていたという赤瀬さん。先輩の姿を参考にすることで気付いたのは、お客様と地道に関係性を築いていく重要性だったといいます。

また店長として店舗を任されるようになったあと、人材育成について悩んだときの対処方についても伺いました。

今回、お話を伺ったのは…

「アテニア 京王百貨店新宿店」店長
赤瀬美香さん

大学卒業後、とある化粧品ブランドの美容部員を経て、2015年に「アテニア」へ中途入社。2店舗を経て、現在は京王百貨店新宿店の店長を務める。お客様や後輩スタッフから厚い信頼を寄せられる社員として活躍中。

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最初はできなかったプラスワンの提案。美容以外の話題で関係性を作る

入社した当初はお客様へのプラスワン提案に苦戦したという赤瀬さん

――新人時代にぶつかった壁はありますか?

「アテニア」では商品をあらかじめ決めてから買いにくるお客様がとても多いので、最初のころはそういった方への会話の広げ方や、商品をより効果的に使っていただくための組み合わせをお勧めする、いわゆる「プラスワンの提案」がなかなかできなかったことです。

私が入社した当時は、お客様の購入金額に応じて割引額がアップするサービスを提供していたので、あらかじめ買う物を決めて、メモを渡してくるお客様も多かったんです。

――それはどのように乗り越えましたか?

先輩達の姿を見ていると、アテニアでは、無理に他の商品をすすめるようなことはせず、むしろやめていただくようなご提案をすることすらありました。そして、とにかくお客様とコミュニケーションをとり、地道に関係性を築いていくしかないと気付きました。とくに「アテニア」の先輩たちは会話の広げ方がみなさんとても上手でしたし、お客様のなかには先輩のファンで「○○さん、いる?」とお店にいらっしゃる方もいたので、私もいつかお客様とそんな関係性を築きたいと思い、参考にしていました。

――具体的にはどのようなことをしていたのですか?

例えばお客様が持ってきてくださったメモを見ながら、「こういう商品を使ってくださってるんですね」と会話の糸口にして、お悩みを引き出すように心がけていました。

あとは美容以外の知識や最近の流行なども吸収して、その情報を接点にお客様との会話を広げていくようにもしていました。ちょっとした趣味の話や流行の話など、美容以外のお話もさせていただくことがあるのですが、「あなたも知っているの?」と、少し心を開いていただけて、距離が近くなると感じます。またお客様も次に来店したときに「赤瀬さん!この前話したあの話しだけど」と話しかけてくださり、関係性が深くなる気がしますね。

――美容以外の話しも積極的にされるんですね。一方で美容部員の仕事は、売上を増やしていくことも大切ですよね。

もちろん、会社としてはキャンペーン商品や強化商品がもちろんありますし、売上を大切にする軸もありますが、「アテニア」では押し売りはしないということをとても大切にしています。キャンペーン商品だから売る、ということは絶対にしません。社内では「売らない勇気」という言葉があるくらいです。

一番重要なことはお客様にきれいになってもらうことなので、そのためにこれからお客さまがどうなりたいかをしっかり引き出して、そのきれいに近づくためにご紹介、ご提案をさせていただくという気持ちで接客をしているんです。そうするとお客様は買わされたのではなくて、いいものが買えたと思っていただけるはずですし、信頼も得られると思っています。

忙しくて後輩をフォローできないもどかしさを、コミュニケーションで乗り越える

赤瀬さんが店舗を任されるようになったとき、一番に感じたのはスタッフ育成の壁だったという

――今は店長をされているとのことですが、お店の運営を任されるようになって感じた悩みはありましたか?

スタッフの育成について一番悩んだかもしれません。最初のころはとくに、私の新人時代のフォローをしてくださっていた先輩たちと比べて、自分はまだまだできていないという思いが強かったんです。もっと時間をとってフォローをしてあげたいけれど、売り場が忙しくてなかなかできないというもどかしさを常に抱えていました。

――それはどのようにして乗り越えましたか?

ちょっと時間が空いたときや、業務後の時間などでスタッフとこまめにコミュニケーションをとるようにしました。スタッフにも、「悩みや困ったことがあったり、店頭で話しにくいことがあったりしたらいつでもいいから連絡してきてね」と伝えていました。なるべくスタッフが気持ちをため込みすぎないように、そしてすれ違いに気付かないということが起きないように、接していました。

――上に立つ立場としては、言いにくいことでも指摘しないといけないこともあると思います。そんなときに何か心がけていることはありますか?

正解を伝えるのではなくて、自分で考えてもらうことを大切にしています。たとえば接客の仕方で気になることがあったときも「こうして」と伝えるのではなく、「自分が同じことをされたら、どう思う?」と伝えるんです。

上から目線で一方的な伝え方をすると、「怒られた」「言われた」という気持ちだけが強く残ってしまうので、どこがだめで、どうやったらよかったかを自分で気付いてもらえるように心がけています。

――スタッフの自発性を大切にされているのですね。

はい。というのも私はこれまでの職場で何かミスをしたときに「なんで?」と聞かれるのがすごく嫌だったんです。なんでと聞かれても何も生み出さないし、自分が一番「なんでミスしてしまったんだろう」と自分のことを責めていると思うんです。だからスタッフのミスが起きたときも、第一声で「なんで?」は絶対に言わないことを決めています。自分でどこが悪かったかを気付ければ、スムーズな改善にもつながると思っています。

華やかなだけではないけれど、お客様と会うだけで元気をもらえる仕事

大変なことも多いけれど、お客様と過ごす時間が何より楽しいと赤瀬さん

――新人時代の体験は、どんな学びになったと感じられますか?

忙しい店舗に配属になり、素晴らしい先輩に囲まれていたからこそ、店舗全体を見渡して行う、目配り、気配り、心配りを学べたのではないかと思いますし、それは今の私の基礎になっていると感じています。

――今後、美容部員を目指す人へのアドバイスがありましたらお願いします。

美容部員というと華やかなイメージを持っている人が多いと思うのですが、この仕事はそれだけではないと思います。たとえば、力仕事の部分。化粧品というとあまり重いイメージがないかもしれませんが、液体でできている商品も多いのでそれが何本も入った箱というのはとても重いんです。しかもそれが何箱もくるわけですから、運ぶのはとても体力を使います。

また立ち仕事なので足もむくみますし、お客様とずっとお話しをしているのでのどが疲れたりもします。接客業なのでちょっとしんどくても、笑顔を作らないといけません。でも私はお客様と会えるだけで本当にたくさんの元気をもらえますし、大変なことがあってもお客様と過ごす時間がとても楽しくて、ずっとこの仕事を続けてきました。お客様に美を提供して、喜んでもらえますし、それが楽しめる人には本当におすすめの仕事です。


赤瀬さんが美容部員として成功した3つのポイント

1.お客様との関係性を深め、本当に必要とする商品の提案をするようにした

2.スタッフとは、ちょっとした時間でもコミュニケーションを取ることを心がけた

3.大変なことがあっても、お客様と過ごす時間を楽しみに仕事を続けている

赤瀬さんのお話しを聞いていて、先輩、後輩を含めてスタッフのみなさんと良好な関係性が築けていることが伺えました。仕事の内容はもちろん大切ですが、人と人が密に接する美容の仕事では、どんなスタッフが働いている会社なのかという点もとても重要なのだと気付いた取材になりました。

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