仕事への情熱を持って楽しそうに働く美容師と出会い、自分も同じ道へ【CasaRela hairmake salon オーナー SEIKAさん】#1
のどかな雰囲気と主要駅へのアクセスのよさが魅力の北赤羽で、マンツーマンのプライベートサロン「CasaRela hairmake salon(カサリラ ヘアメイクサロン)」を開業したSEIKAさん。サロンモデルとサロンレセプションを経て美容師になったという、ちょっぴり異色の経歴の持ち主です。
前編では、美容師になるまでの経緯や、前サロン時代の思い出深いエピソード、独立を考えたきっかけなどをご紹介します。
お話を伺ったのは…
CasaRela hairmake salon オーナー SEIKAさん
サロンモデルを経験後、レセプションとして「hairsalon de Forever」に入社。働きながら3年間の通信教育を受けて美容師免許を取得し、アシスタント時代から雑誌の撮影やヘアショーなどに参加。24歳の時にスタイリストデビューを果たし、ヘアコンテストでの受賞やプロダクトの開発など多岐に渡り活躍。2024年2月にマンツーマンのプライベートサロン「CasaRela hairmake salon(カサリラ へアメイクサロン)」をオープン。現在はサロンワークの傍ら、ブライダルのヘアメイクも行なっている。
SEIKA’S PROFILE
- お名前
- SEIKA
- 出身地
- コーセー美容専門学校
- 憧れの人
- 母
(女手ひとつで三兄弟を大きくしてくれました。頭が上がりません) - 趣味・ハマっていること
- インテリア収集、スポーツ観戦、カフェ巡り、ビアバー、岩盤浴
- 仕事道具へのこだわりがあれば
- MIZUTANIのカーブシザー
(初めて自分で購入したシザー。name入りでずっと使っているので手にもフィットして手放せません)
サロンモデル、レセプションを経て美容師に転身
――美容師を目指したきっかけを教えてください。
高校生の時は美術大学に行きたいと思っていたのですが、将来性や就職率を考えた時に現実的ではないと思い、断念しました。高校卒業後に居酒屋でアルバイトをしていた時、ヘアメイク事務所の社長をしているお客様にサロンモデルをやってみたらと言われ、紹介していただいたのが「hairsalon de Forever」という美容室だったんです。
何度かサロンモデルとして関わるうち、美容師さんたちがすごく楽しそうに、そして研究熱心に仕事に取り組んでいるのを見て、素敵だなと思っていました。そんな時、サロンのレセプションを募集しているから働いてみないかというお話をいただいて、19歳で入社することに。本当に何もわからない状態で入ったのですが、レセプションの仕事を一から教えていただきました。
――レセプションとして働くうちに、美容師になりたいと思われたのでしょうか。
そうですね。当時の美容師さんたちがとにかく忙しかったので、シャンプーやドライくらいできればサポートできるかなと思いながら働いていました。1年ほど経った頃にその思いを伝えたら賛成していただき、働きながら通信制で勉強して美容師資格を取れるということも教えていただきました。
――仕事と学業の両立は大変だったのでは。
当時の記憶がないくらい大変でした(笑)。サロンの代表(hairsalon de Foreverの齋藤勇磨さん)が「美容師資格を取ると同時にデビューしよう」と計画を立ててくださって、美容師のアシスタント業もサロンで学ばせてもらいながら、3年間の通信制で勉強しました。
美容専門学校の夏休みと春休みの期間に、通信制の学生は集中的にスクーリングして実技を学びます。それ以外の期間は、学校から届いたテキストで自習するという感じでした。
――1日24時間では足りないですね…。両立のために工夫したことはありますか。
テキストをサロンに持って行き、仕事の合間や休憩時間に勉強させてもらっていました。私はちゃんと寝ないとダメなタイプなので、睡眠時間は確保しながら、休日に一気に課題をやって提出したり。そんな日々が続き、無事に美容師資格を取ってから1年後にスタイリストデビューしました。
お客様の声や雑誌撮影の経験が美容師としての糧に
――前サロン時代、ターニングポイントになったことや先輩方との思い出深いエピソードはありますか。
ターニングポイントは完全に、齋藤さんに「美容師になりなよ」と背中を押してもらったことですね。もともと髪をいじることやメイクは好きでしたし、昔から工作や細かい作業が好きで美大に行きたかったくらいなので、美容師の仕事は自分に近しい感じがしていました。だから、ぜひやりたいと思ったんです。
齋藤さんには一番お世話になって、何度も影響を受けました。1店舗だけの小規模な時代から、店舗数を増やす過程も間近で見ていますし、美容や会社に対してすごく深く考える姿は本当にすごいなと。
スタイリストになりたての頃によく言われたのは、若いからできなさそうと思われないように、 “できます”感を出すということでした。そのためのひとつの方法として、最初は仕事中の服装や髪型を指定されていたんです。一度、ラフなTシャツとデニムにスニーカーで出勤したら、「いったん帰って着替えてきて」と言われて出直したことがあります(笑)。
――スタイリストになってから、自分の武器として磨いたものや取り組んだことはありますか。
私は女性限定でお客様を施術しているのですが、初めの頃はツヤツヤのロングヘアやキレイなカラーに特化して、トリートメントソムリエの資格も取って、トリートメントとツヤカラーを打ち出していました。自分自身も実際そういう髪型にしていたんですよ。私のような髪にしたいというお客様、つまり私のファンをどんどん増やしていけばいいとアドバイスされていたからです。
――お客様の反応はいかがでしたか。
後ろ髪を見て年齢がわかるとも言われますので、髪をキレイにすることで「若返ったみたい」と喜んでいただけたのが嬉しかったです。そこから、「この髪をどうやったら保てますか」と聞かれてホームケア製品の販売につながることも少なくありませんでした。
アシスタント時代にも「SEIKAちゃんじゃなきゃ嫌なんだよね」とシャンプー指名をいただいたり、「ずっと私の髪をお願いね」と言っていただいたり。そういうお客様の声はとても励みになります。
――ヘアカタログや雑誌の撮影など外部の仕事は、いつ頃からするようになったのですか。
アシスタント2年目に、社内コンテストを勝ち抜いて雑誌のお仕事をさせていただいたのが最初です。その時はすごく嬉しかったですし、絶対に次につなげたいと思いました。
――次につなげるために実践したことは?
ヘアカタログや雑誌を見て、可愛いと思ったスタイルをまず真似してみました。ヘアやメイクや衣装を全部しっかり見て、「なぜ可愛く見えるんだろう?」と考えながら。営業後にモデルさんを呼んでスタイルを作り、自分で写真を撮って、齋藤さんにチェックしてもらって。それを繰り返すうちに、だんだん「可愛い」がわかってきたのかなと思います。
――そういった努力で、撮影に指名で呼ばれることも増えていったんですね。一番記憶に残っている撮影というと?
「ar」(主婦と生活社)という雑誌の撮影です。まずは社内コンテストで「『arっぽい』を自由に作る」というお題があり、プロのカメラマンが撮影した写真で審査されたのですが、そこで雑誌の撮影参加権を獲得できたんです。大好きな雑誌だったのですごく嬉しかったですね。撮影当日は先輩たちが現場について来てくれました。結構緊迫した雰囲気の中、時間をかけて丁寧にヘアを作って、悔いなくできたと思います。
一人ひとりともっと向き合いたくて、独立を決意
――hairsalon de Foreverには8年くらい在籍されていましたよね。独立したいと思ったきっかけは何だったのでしょうか。
もともと独立願望はなかったんです。ただ、段々と予約が詰め詰めになってきて、せっかく指名してくださったのに少ししか対応できない事態になってしまって。お客様の満足度が下がっているかなとか、自分がなりたかった美容師像から離れてしまったかなと思い始めました。先に独立していった先輩方からも「自分の働きたい形で働いた方が絶対いいよ」と言われ、私も独立を考えるようになりました。
――自分らしく働きたいと思った時、会社にはどのように相談しましたか。
まずは、予約数がオーバーしすぎてお客様を待たせてしまったり、アシスタントたちが昼休憩をきちんと取れなかったりすることもあったので、一旦少しセーブさせてくださいと。私自身はもう少し一人ひとりのお客様に対して向かい合いたいと思っていることもお話ししました。
会社側ももちろん前向きに考えてくださったのですが、なかなかすぐには変えられない部分も多く、数回の話し合いを重ねてから辞めることになったんです。
――それから、こちらのサロンの準備を始めたんですね。
退社日が決まってから物件を探し始めて、今年の1月からここの工事がスタートし、2月にオープンしました。
――「CasaRera hairmake salon」という店名の由来を教えてください。
造語なのですが、「Casa」には家とか空間という意味があり、そこに「Relax」の「Rela」をつなげました。ヘアメイクに特化していきたいので、「hairmake salon」もつけています。
――では、お店のコンセプトは?
お店の名前通り、「リラックスできる空間」です。非日常感を味わってもらいたいので、ゆったりとした空間を独り占めしていただいて、マンツーマンで接客します。忙しい主婦の方が多いので、日々の子育てやいろんなことからいったん離れて、ホッとしていただきたいと思っています。内装も落ち着けるグレイッシュな色味で統一しました。
――確かに、お一人を迎えるには広めの空間ですね。
もともとは1席のみにしていたのですが、親子で来たいという方が増えて、もう1席追加しました。最初の頃はサブの椅子を用意して、必要な時だけ増やそうと思ったのですが、親子来店のご要望がわりと多いので常設にしました。
――設備やサービス面でのこだわりはありますか。
お客様にお出しするドリンクに力を入れていて、コーヒー、ほうじ茶、抹茶、紅茶などを用意しています。コーヒーは手挽きでドリップして時間をかけて淹れ、抹茶も自分でたてるんですよ。皆さん気に入ってくださいます。
シャンプー台にもこだわりました。全身を包み込むようなフォルムで、寝心地がすごくいいスパチェアです。フィット感があり首も枕で支えられるので、長時間のヘッドスパやトリートメントをする時も疲れにくいんです。しかも形が可愛らしくて。
――今もヘッドスパやトリートメントに力を入れていらっしゃるんですね。
トリートメントは特に力を入れていて、おすすめは7ステップトリートメントです。シャンプー台で10分ほどでできるものなので、お忙しい方でも気軽にできて、しっかり効果も出ます。トリートメントのためだけに来られる方もいるほど、人気のメニューなんですよ。
美容室で働きながら美容師資格を取得し、アシスタント時代から頭角を表し始めたSEIKAさん。予約が取りづらいほどの人気スタイリストとして活躍後、お客様とじっくり向き合う働き方をするために自身のサロンを立ち上げました。
後編では、マンツーマンサロンならではの大変さや工夫、独立後から始めたブライダルヘアメイクのお話、今後の夢などをお聞きします。
撮影/高嶋佳代
取材・文/井上菜々子