育児との両立、大病……。どんな困難があっても生涯美容師でありたい【RITZ 高橋真以子さん】#2
高橋さんのセンスと技術を信頼して何十年も通う人が多いのは、かわいらしさとモードさの絶妙なミックス加減。後編では、育児との両立や、大病をした時にあらためて感じた美容師への思い、「生涯アーティストでいたい」と話す真意にせまります。
お話を伺ったのは…
RITZ 高橋真以子さん
栃木県の専門学校を卒業後上京。都内のサロン勤務を経て、現在はRITZの人気スタイリストとして活躍。サロンワークだけでなく、メディアやカタログのヘアメイクも手がける。丁寧なカウンセリングと、ナチュラルな中に個性や今どきっぽさをミックスしたスタイルが人気で、「おまかせで」とオーダーする客も多い。
同業のご主人とともに一人娘を育てるママでもある。
子育てをしながらできる範囲で最大限働く
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「美容師を辞めたいと思ったことは一度もない」と話す高橋さん。
――現在育児中の高橋さんですが、美容師と育児の両立は大変ですか?
正直大変です。代わりがいない職業なので。実はRITZで母親になるスタイリストは、私が一人目だったんです。なので、会社としてもマニュアルがありませんでした。
ですので、私と社長とで、「産休、育休はどうする」「時短勤務はどうする」というふうに少しずつ一緒に考えていきました。
社長が温かい人で、「好きに決めていいよ」と言ってもらえたのはとても助かりましたね。
結果的に、産前は臨月まで働き、産後は2ヶ月で復帰しました。待っていてくれるお客様がたくさんいたので、早く復帰したいという気持ちがとにかく強かったですね。
お客様としては、髪を切るのは待てないじゃないですか。「1年後に戻ってくるから待っててね」なんて言えませんから。
――数年前には大きな病気も経験されています。
はい。8年ほど前に、くも膜下出血になりました。1ヶ月ほど入院して、復帰までに2ヶ月ほどかかったと思います。多くの場合後遺症が残ると言われる病気なのですが、奇跡的に後遺症も残らず復帰することができました。
――まだ小さなお子さんがいるなか生死をさまよう経験をして、仕事に関する考えは変わりませんでしたか?
仕事を辞めるとかいう選択肢はまったくなかったですね。病気の時も産後と同様「お客様が待ってるから早く復帰しないと」と思ってばかりいました。他にファッションブランドの月1のレギュラー撮影もあったので、それはどうやって調整しようとか、そういうことばかり考えていました。私にとって、美容師をするのは当たり前のことなんです。
美容師は接客業である一方アーティストでもある
――今はさまざまな働き方の選択肢があって、美容師さんも独立して自分のお店を作ったり、フリーランスになる人もいます。
そうですよね。自分に合った働き方が選べるいい時代になったな、と思います。でも私はどれにも興味がなくて(笑)
RITZの居心地がいいというのはもちろんあるのですが、本心を言うとビジネスにあまり興味がないんですよね。接客業である以上売り上げや集客の大事さは重々わかっていますが、それを仕事のメインにはしたくない。
――クリエイティブの方に喜びを感じるタイプなんですかね。
そうかもしれません。いいヘアスタイルを作ることが1番大事。そのためには、常にアンテナを張ってトレンドを取り入れたり、技術を磨く方に時間をさきたいんです。自分自身トレンドとか流行のカルチャーを知ることがすごく好きなので、学ぶのも楽しいんです。
それに結局そんな「私らしさ」を信頼してお客様がついてくれているわけですから。
「おまかせで」と言われる美容師になりたい
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代官山の駅近くにあるサロンは個室も完備。
――「こんな美容師でありたい」という理想像はありますか?
美容師になった時からずっと「おまかせで」と言われる美容師になりたい、と思ってやっています。私のお客様はおしゃれが好きだったり、意識の高い人が多いんですよね。そういうセンスの良いお客さまを満足させられるスタイルを、常に提供し続けていきたいと思っています。
――おまかせで、は美容師としてうれしい反面、プレッシャーにもなると思いますが。
私自身が、その分野のプロを信じて、その人の技術を十分発揮してほしい、と思うタイプなんです。ネイルサロンに行っても、基本は「おまかせで」とオーダーします。だって、自分がこの人のセンス好きだなーと思って選んだわけですがから、そこから先はプロにまかせた方がいいものが仕上がるに決まっています。
もちろん責任も伴います。だからこそ私は「自分はアーティストだ」ということを常に意識して、これからも技術を磨いていきたいですね。
――今後の展望はありますか?
今は時短勤務ということもあり、多くのお客様をお待たせしてしまっている状況なので、まずはそれが落ち着いてからですね。
時間に余裕ができたら、副業ではないですけれど、何かおもしろいことをしてみたいなと思っています。ヘアアクセを作るでもいいし、美容に関するもので、私自身がその時に興味があるものをやってみたいと思っています。
高橋真以子さんの成功の秘訣
1.自分の得意を徹底的に見つける
2.得意を分析してそれを趣味にする
3.とにかく長く続ける
取材・文/皆川知子(tokiwa)
撮影/ワタナベミカ