トレーナーに憧れ、出版業界から柔道整復師へ転職 【のぞみ整骨院グループ代表 橋口望さん】♯1

新聞記者や雑誌編集者を経て、現在は静岡県に4つの整骨院を展開するのぞみ整骨院グループ代表 橋口望さん。温泉や観光地の取材を得意としていた編集者時代、漠然とした将来への不安を感じ、学生時代ラグビーをやっていたことで馴染みのあったトレーナーへの転職を決意。

すでに3人の子の父親だった橋口さんは、専門学校で学び、柔道整復師の国家資格を取得します。初めての臨床では、学校で習ったことがほぼ通用しないことに愕然とし、国家資格の勉強よりも卒業してから学ぶべきことが多いことを思い知らされます。

開業後2年経っても患者数が増えずに苦戦。整骨院では、病院には求めないことを求める患者さんが多いため一人一人のニーズに応えることが必要と気づき、診療内容を広げることで来院数が倍増したそう。

NOZOMI’S PROFILE

お名前

橋口望

出身地

静岡県御殿場市

出身学校

法政大学文学部教育学科、東京医療専門学校

憧れの人

財津和夫(趣味の音楽で)

趣味・ハマっていること

15年前にラグビーを引退してからは、もっぱらバンド。作詞・作曲、ギター、ピアノ演奏。カラオケJOY SOUNDには「橋口望」のオリジナル曲が4曲収録されています。

仕事道具へのこだわりがあれば

我々の仕事道具は手です。もちろんいろいろな道具を使いますが、いちばんの道具は手。ケガをしないように心がけることが道具を手入れし、道具の質を高めることだと考えます。

ラグビーや柔道でケガが多かったことからトレーナーに憧れて

出版業界からヘルスケア業界に転職した橋口さん。

――柔道整復師になる前は編集者だったそうですね。

新聞社に3年、出版社に3年、編集プロダクションで3年働き、30代になって業界にもかなり慣れたころ、ふと思ったんです。仕事は順調でしたが、得意な分野が温泉や観光地の取材ばかりで、60才を過ぎてもこの手の取材をやっているのかなーと。いま思うと立派な内容で何も恥ずかしくないのですが(笑)。そんなときにたまたま、柔道整復師という仕事を知り、興味を持ったんです。

――興味を持ったきっかけを教えてください。

中学から社会人までずっとラグビーを続けていてケガが多く、柔道も有段者だったので、接骨院の先生というよりもトレーナーをやってみたいと思ったんです。柔道整復師という国家資格を持つ施術家は、接骨院を開業するだけでなく、整形外科に勤務したりスポーツトレーナーとして活躍する人も多かったため、決心するまでにさほど時間はかかりませんでした。

――その後はどんな行動に?

柔道整復師は、いわゆる整体師とは違います。厚生労働者が認可した専門学校か大学を卒業して初めて国家試験の受験資格が得られます。通学は正直大変でした。24時間という決まった時間を「通学、授業、勉強」に割くということは収入も減ります。専門学校に入学したのが30代半ば。すでに3人子どもがいたので大学のときのように適当に勉強するわけにはいきません(笑)。

――すでにお子さんが3人いたのですね。

家族のためにも中途半端なことはできないと、とにかく一生懸命勉強したので成績も悪くなかったんです。そんなこともあって先生に「教員やってみたら?」と勧められ、柔道整復師の国家資格と同時に専科教員免許も取ることにしました

――専科教員免許とは?

柔道整復師を養成する厚生労働省認可の専門学校もしくは大学で教鞭をとることができる資格です。勉強は大変でしたが、楽しかったので今となっては苦労とは感じませんね。

国家試験は正解か不正解。でも臨床には80点も60点もある

「国家試験がピークでその後勉強しない人もいるけど、覚えることは卒業してからの方が多いです」(橋口さん)

――専門学校卒業後は?

まずは知り合いの病院に勤務しました。同時に週に数日は卒業した専門学校の施術所で修行する生活が3年続きました。開業を成功させるには、整骨院と病院の両方のいいところを取り入れないとダメだと考えたからです。

はじめて臨床の場に出て、学校で習ったことがほとんど通用しないことに愕然としたんですよ。国家試験の問題は臨床を中心に考えられているわけではないので、整形外科の先生でさえ一生出会わないような疾患の勉強もしなければならない。それなのに、毎日のように訪れる神経痛の患者さんのことは教科書にも載っていない。それは国家試験に出ないからなんです。

――専門学校では合格することが最優先ということですね。

「臨床のことは、合格した後に覚えなさい」という風潮はありますよね。でも学校で国家試験の勉強ばかりしていると、診察や治療においても正解を求めて1つの答えを出そうとしてしまうことがあるんです。国家試験は正解か不正解か、つまり100点か0点かだけど、臨床の答えは1つじゃない。臨床には80点も60点も40点もあるんです

――具体的に教えていただけますか。

例えば、腰が痛いという患者さんがいますよね。試験では「疲労性の腰痛」、「ヘルニア」、「腎臓の結石」の3つの選択肢があった場合、その中のどれかが正解なんです。でも実際の臨床では、疲労性の腰痛であり、ヘルニアもあり、腎結石もある人がいてもまったく不思議ではない。

メディアでも「腰痛にはこれがいい」みたいな特集を見かけますが、あくまでも「疲労性の腰痛にはこれが効く」ということを強調してほしいですよね。腎臓の結石が原因で腰が痛い人にストレッチしたりしても絶対治らないから。そんな理由で整骨院と病院での修行の必要性を感じました。

患者様一人一人のニーズに応えることで来院数が倍増

出版業界からの転職を振り返り、「いま思うとあのときの行動力は正解だった」と橋口さん。

――専門学校の教員の仕事についても教えてください。

もともと大学は教育学部で中高の社会科の教員免許も持っていたので、授業や学生たちとの時間はすごく楽しかったです。柔道整復師の専門学校の先生は2種類います。ひとつはその学校の常勤、つまり正社員です。もう一つは普段は病院勤務や開業をしている非常勤勤務の先生です。どちらも専科教員の資格をもっていることは条件ですが、私は開業しながらの非常勤勤務の教員だったので、授業では常勤勤務の先生たちよりも臨床的な話をたくさんしてあげられるというメリットがありました。「昨日、こんな患者様が来てさ…」みたいな(笑)。

――実際の現場での話が聞けるのは生徒さんもうれしいですよね。そのころは開業されていたのですね。

開業して2年たっても患者様の数が増えず、四苦八苦していました。私は病院出身なので、治療内容は当然病院に準じたものになるのですが、診察や治療のレベルは整骨院しか知らない先生よりも上だと自負していました。でもそうではなかったのです。

――どういうことでしょうか。

病院に通う患者様の目的はほぼ一つです。早く治りたい、早く痛みをとりたい。早く通院を卒業したいのが一般的です。でも整骨院に来る患者様の目的はもっと多彩です。疲労をとるためにマッサージをしてほしい人、体の調整をしてほしいアスリート、明日の試合のためにテーピングをしてほしい選手、先生との会話を楽しみにしているおばあちゃん。整骨院は、病院には求めないことを求める患者様がすごく多いんです

整骨院を成功させるには、患者様一人一人のニーズに応えることが大事だと気づきました。それぞれのニーズに応えるために、全身マッサージ、耳ツボダイエット、鍼灸治療、アロマ・リンパドレナージュなど自費診療メニューを増やし、一人一人の患者様に接するようになってからは来院数が倍増していきました。

後編では多店舗展開のメリット、勤務地を固定しないシフト制についてお伺いします。

取材・文/永瀬紀子


この記事をシェアする

編集部のおすすめ

関連記事

近くの柔道整復師求人をリジョブで探す

株式会社リジョブでは、美容・リラクゼーション・治療業界に特化した「リジョブ」も運営しております。
転職をご検討中の場合は、以下の地域からぜひ求人をお探しください。

関東
関西
東海
北海道
東北
甲信越・北陸
中国・四国
九州・沖縄