勤務地を固定しないシフト制で来院数が順調にアップ【のぞみ整骨院グループ代表 橋口望さん】♯2

静岡県に4つの整骨院を展開するのぞみ整骨院グループ代表の橋口望さん。前編では、出版業界から柔道整復師の資格を取得し、開業するまでのお話を伺いました。整骨院では、病院には求めないことを求める患者さんが多いため、一人一人のニーズに応えることが必要だと気づき、診療内容を拡大。

後編では、トレーナーをする上で心がけていることや多店舗展開のメリットについてお伺いします。勤務地を固定しないシフト制の導入で、近隣ではやっていない日曜営業が可能になり、来院数が順調にアップしたそう。

トレーナー業はいかにプラスαの力を出してあげられるか

国際大会やオリンピック選手のトレーナーも担当する橋口さん。

――トレーナーとしてはどんなご経験があるのでしょうか。

女子スノーボード日本代表選手、ラグビーチーム、滝ケ原自衛隊日本拳法部、陸上部等のトレーナーを担当しました。2021年東京オリンピックでは、自転車ロードレースのField Castとして参加。2022年は男子プロゴルフ池田勇太プロのトレーナーを務め、現在は御殿場高校ハンドボール部のトレーナーを務めています。

――トレーナー業をやる上で心がけていることは何ですか。

これは、もう1点につきる。その選手のパフォーマンスをいかにして最大限引き出してあげられるか。そのためには、ただ痛みをとるためにテーピングをしてあげるだけじゃダメだよね。ただ単にテーピングをするだけではなく、選手が「あの人にテーピングをしてもらったおかげでできた」と喜んでもらえるように接することを常に心がけています。そのためにはコミュニケーションで、メンタル面もケアすることが大事。テーピングやマッサージの技術だけでなく、コミュニケーションでいかにプラスαの力を出してあげられるかがトレーナーの仕事だと考えています

教え子を院長にするために多店舗展開

店舗が1軒だけだと、スタッフの休みを減らさずに営業日を増やすことは不可能。多店舗展開することでそれが可能に。

――4院を開院されるまでの経緯を教えてください。

実はうちが4院の多店舗展開をしているのは、教え子のためなんです。学校の教員を何年かやっていくうちに私のところで学びたい、私の整骨院で働きたいと言ってくれる学生が増えてきたんですね。でも当時ひとつの院の院長でしかなかったので、何人もの学生を就職させるのは人件費を考えても無理でした。うちは研修所ではないしね。

――そこで多店舗展開を?

自分のため、会社のためではなく、教え子を院長にしてあげるために店舗を増やしていったんです。多店舗展開をしている他社の整骨院グループとは目的がまったく違います。正直、利益は少ないです。でもメリットもあります。勤務地を固定せずにシフト制にしたことで、日曜日も診療できるようになったんです。営業日を増やすことで来院数は順調に増えていきました

――勤務地を固定しないシフト制とは?

4院のうちの2院を日曜日も稼働させました。院長先生は変わらないけど、他の先生は所属の院以外にも勤務します。うちのやり方として患者さんの名前を憶えて、来院時に「○○さんこんにちは」と声がけするようにしているんですね。何院も抱えると患者さんの名前を覚えるのが大変なので基本的に担当するのは2院までにしています(笑)。

――近隣で日曜日にやっている院はなかったのでしょうか。

競争が激しい都内では、日曜だけでなく夜中までやっているところもありますが、御殿場市内で日曜祝日に診療している院は一軒もありませんでした。一応社長なので、経営の基本として「他がやらないことをやる」という考えでやっています。ちなみに患者さんの送迎をやっている整骨院も市内ではうちだけです。

――経営の基本というお話がありました。

これはどんな職業にもあてはまると思いますが、その仕事の専門知識や技術を持っていることと経営はまったく別物です。病院でも整骨院でも、院長先生が優秀だからといって、開業が成功するとは限りません。私についても、経営者として向いているとはとても思えません。やり方が下手です。

――4院も開業されているのに?

……と思うかもしれませんが、経営がうまければ10軒以上開業しています。それかもっとほかの展開をしていると思います。一軒開業するのに1000万前後の資金もいりますし、未だに借入金の返済ばかりで苦労しています。

なので、卒業してすぐに開業するのはかなりリスクがあります。私の知人でも卒業してすぐに開業して、結局やめてしまった人が何人もいます。学校で教えてもらったことがそのまま通用するほど甘い世界ではないから。成功したいのであれば開業までに10年は修行したほうがいいでしょう。

新しい仕事に就く場合、前のキャリアは絶対に無駄にはならない

「いまの仕事は定年がないのがいい。やろうと思えば80才になってもできる。自分の好きなことができるし、小さな会社だけど一応社長だし(笑)。ストレスは少ないかも」(橋口さん)

――異業種からの方向転換でよかったことは?

新聞社、雑誌社、フリー編集者時代に培った知識や人との接し方は、開業してからもすごく役に立っています。いま市内の2軒の整形外科と懇意にしてもらっているのですが、それもイチから自分で人脈を築いたもの。そういうのも編集者時代に学んだことだと思います。

――改めて柔道整復師とはどんなお仕事ですか。

よく整体師といわれますが、私の仕事は正確には整体師ではなく、柔道整復師です。整体師は資格がなく(民間資格)、柔道整復師は厚生労働省認可の国家資格保持者。開業しなくても介護施設や整形外科、リハビリ病院などに勤務できます。開業すれば健康保険も扱えます。そこは混同してほしくないですね。

――分かりやすいご説明ありがとうございます。

患者様のために施術を行うという意味では、柔道整復師も整体師も同じで、仕事がそのまま相手に感謝されるというところは、やりがいがありますよね。ただ、いまは整体院も整骨院も数が増えすぎて、どこも大変なところが多いというのも事実です。

――では業界を目指す人へメッセージをお願いします。

人生一回しかありません。あとで、あのときやっていれば……と後悔するより挑戦すべきだと思います。それは仕事に限らずなんでもそうですが。

いまうちに勤務する先生の半分は、他の職業に就いていたけれど改めて3年間学校へ行って資格をとった方たちです。他の仕事を知っているというキャリアは、患者様との話に深みが出たり、自分のいまの立場が恵まれていることを理解できるなどメリットしかありません。新しい仕事に就く場合、前のキャリアは絶対に無駄にはなりません。とくにこの業界は、前の仕事やアルバイトの知識が役立つと思います。

――最後に橋口さんにとって「働く」とは?

いままでの人生を振り返ると、私にとって「働く」ということは常に「人のため」だったと思います。マスコミにいたときも頭にあったのは「これを読んでくれる人、読者のため」。転職した後も「患者様のため」「家族のため」「スタッフのため」。もっと自分だけのために何かをしてきても罰は当たらなかったかも(笑) まあ、でも後悔はしてないです。

橋口さんが柔道整復師として長く活躍されている理由は

1.整骨院と病院のいいところを取り入れてきた

2.患者さん一人一人のニーズに対応してきた

3.とくにトレーナー業ではメンタルケアを重視

取材時、目の前で転んで起き上がれなかった高齢者を迷うことなく家まで送り届けた橋口さん。働くことは「人のため」。仕事以前にすでに「人のため」という精神が強いのではないかなと感じた出来事でした。経営はうまくないとおっしゃいますが、その精神が上回って現在の「のぞみ整骨院グループ」があるのですね。

取材・文/永瀬紀子


この記事をシェアする

編集部のおすすめ

関連記事

近くの柔道整復師求人をリジョブで探す

株式会社リジョブでは、美容・リラクゼーション・治療業界に特化した「リジョブ」も運営しております。
転職をご検討中の場合は、以下の地域からぜひ求人をお探しください。

関東
関西
東海
北海道
東北
甲信越・北陸
中国・四国
九州・沖縄