「持ち運べるアート」としてのネイルアートの可能性を信じて 私の履歴書 【ネイリスト isomuさん】#1

トゲトゲしたスタッズに、指先からはみ出そうなゴールドやシルバーのスターモチーフ、日本語の文字群、文房具のホッチキスの針…。およそ今まで目にしたことがないような斬新なネイルアートの写真がひしめく、そんなアカウントの主がフリーランスのネイリスト・isomu(いそむ)さんです。

現代アートの作品のような前衛的なデザインが特徴的な、isomuさんのネイルアート。もはや芸術家のようなネイリストですが、どのようにしてネイルの道に進み、そのアーティスティックな感性をネイルというキャンバスへと落とし込むに至ったのでしょうか。

前編では、isomuさんのキャリアのルーツから始まり、一人のネイリストとしてのあり方を模索していく姿をお話いただきます。

ISOMU’S PROFILE

お名前

isomu

出身地

北海道北斗市

出身学校

札幌ビューティーアート専門学校 トータルビューティー科 ネイルアートコース

憧れの人

ネイリスト・HIROさん

プライベートの過ごし方

英会話、作品撮り

趣味・ハマっていること

読書(ドキュメンタリーやエッセイなど)、小学校くらいから手書きでつけている日記

芸術好きの家に生まれた自分を導いたのは、90〜00年代のギャル文化

既存の枠にとらわれないisomuさんの発想力には、どのようなルーツがあるのだろうか

――早速ですが、isomuさんがネイリストを志すこととなったきっかけや経緯についてお聞かせください。

これには、自分の生い立ちが関係していると思います。私は、祖父や父が油絵を嗜み、家の中にも絵画がいろんなところに飾ってあるような、芸術が好きな一家に生まれ育ちました

そんな遺伝子を継いだ私も小さい頃から絵を描くのが大好きで、将来は絵を描く仕事がしたいと幼心にずっと思っていたんです

しかし、画家はなんとなく現実的な職業としてピンと来ない。じゃあ漫画家はというと、絵の技術とは別にストーリーの構築力が必要ですが、私には物語を作る才能はありませんでした。また、アナログな手法を好む私としては、パソコンを使うようなデジタルな世界に疎く、グラフィックデザインもハードルが高くて…。

どうしたものかと悩んでいた青春時代、とある転機が訪れます。

――それは何ですか?

ギャル文化の流行です。90年代から00年代にかけて、ギャル文化が世間を席巻したんですよ。「LOVE BOAT(ラブボート)」や「COCOLULU(ココルル)」といったブランドに聞き覚えがある人もいらっしゃるかと思います。その時、ちょうど私は高校生くらいで、青春時代のど真ん中でした。

そしてギャル文化が勢いづく中でネイルチップ、いわゆる付け爪が流行し始めたんです。
ハイビスカスやヒョウ柄などといったギャルを象徴するアートが施されたネイルチップを見て、「これなら、私にも出来るかもしれない!」と思いました。

そこで私も、ネイルチップにギャルっぽい絵柄を描いて作品を作り始めることに。個人経営されているギャルグッズのショップに、私がアートしたネイルチップを置かせていただいたこともありました。

――ギャル文化の流行が、isomuさんがネイルの道に進むきっかけとなったのですね!

そうですね。ネイルアートの方が、絵画よりも日常的なニーズが高いとも感じていました。さながら「持ち運べる芸術(アート)」だなって。

高校卒業後はネイルアートについて本格的に学ぼうと、北海道・札幌にある「札幌ビューティーアート専門学校」に進学し、ネイルアートコースを選択しました。

しかし、ネイルアートという分野がまだ走り出したばかりだったこともあり、学校側も模索しながらやっている感じがありましたね。やはり私の強みは絵を描くことだったので、画力を活かした作品を作り、学内コンテストで優勝したこともありました。

――専門学校をご卒業後は?

ネイルサロンに就職する前に、爪に長さを足す「スカルプチュア」という技術や、ネイルアートのスキルアップをもっとしたいと思い、札幌でまた別のネイルスクールへ通い始めました。大体3年ほど、昼間にスクール、夜にアルバイトという生活をしていて、この時にネイル検定も1級まで取得しています。

ネイリストとしてのスキルアップに勤しんだ、サロン所属時代

いよいよネイリストとして始動したisomuさん。最初の舞台は、北海道の札幌からだった

――ネイルサロンへ所属した経験は?

ネイルスクールを卒業後、札幌のネイルサロンに2店舗ほど所属していました。

札幌の繁華街・すすきのにある人気店だった2店舗目には、特に長くお世話になりましたね。このお店のオーナーの技術力がとても高く、尊敬していたからです

独自に開発したスカルプチュアの技術をお持ちの方で、自爪から浮きにくい上に、ツヤ出しのためのトップコートを使わずに磨きのみでツヤッツヤに仕上げるんです! とても刺激になっていました。この方のスカルプチュアの技術をマスターしたいと思い、3年くらい修行させていただきました。ここでは店長まで、一通り経験することができたのも良かったです

――店長も経験されたとなると、経営やマネジメントにも関わったのですか?

そうですね。他スタッフのマネジメントや売上の管理なども任されていました

また立地柄、夜職の女性もよく来店されていました。世間の流行的にもデコってなんぼという感じだったこともあって、追加注文のアートがどんどん入るんです。その分客単価も跳ね上がるので、お店の経営としても順調でした。

――ネイルサロンに所属していた新人時代に苦労したことなどはありましたか?

ありましたよ! スカルプチュアは専用の薬剤で人工の爪を作り、自爪のカーブに合わせて密着させて長さを足していく手法で、ものすごく時間がかかる施術なわけです。

その後、やっとアートに入るのですが、私の進めていったデザインがお客様にご納得いただけなかったようで、最後の1本、というところでやり直しをしてほしいとお願いされてしまいまして…。オーナーに施術を代わってもらい、最終的にお客様にはご満足いただけましたが、私は悔しくて悔しくて…。バックヤードで号泣していました

ネイリストとしてのありたい姿が明確に。上京を決意

心境の変化により、活躍の舞台を移す。いざ、東京へ!

――東京に来たのは、いつからですか?

札幌の、すすきのにあったネイルサロンにお世話になった後のことです。25歳くらいだったかな。

当時、不動のカリスマだったアーティスト・浜崎あゆみさんのネイルが、いつもとても可愛かったんですよ! 芸術的かつ前衛的なネイルアートで、担当されているネイリストの感性は普通じゃないと思っていました。この頃から、「歌手のネイルを担当したい」「ネイリストとしてビッグになりたい」といった思いが強くなっていきましたね

また、浜崎あゆみさんのネイリストとは別に、憧れていたネイリストがいたんです。それが、VOGUEなどのメディアや女優・土屋アンナさんの担当ネイリストだったHIROさん。HIROさん自身の感性が存分に表現されているようなモードなデザインを、とても素敵だと思っていました。

HIROさんのアシスタントになることを目指して、上京することを決意したんです。

――上京してからは、またネイルサロンに?

はい。モデルやタレントといった芸能人も通うヘアサロン「air(エアー)」の店舗内にあるネイルサロン「Hug(ハグ)」に入社しまして、その一角のスペースでネイルを施術していました。

残念ながらHIROさんのアシスタントになることはなく、当初の目的は達成できませんでした。けれど、サロンのスタッフさんたちはとても良い方ばかりで居心地が良く、働きやすかったです。気がつけば、3年もお世話になっていました。フリーランスになることを決意したのは、その後ですね。

――なぜ、フリーランスになることを決めたのでしょうか?

札幌・すすきののサロンや東京に来てからのサロンで売上の管理などをしていくうちに、ゆくゆくは独立したいな、と思い始めていたんです。ネイリストとしてのキャリアも十分に重ねてきて、自信もついてきていたので

そんな現実的な目線になっていたところに、独立の後押しとなる転機がやってきたんです。

isomuさんのサロン内ディスプレイの一部
isomuさんの作例の一部。メッセージ性の強い日本語が並ぶ(isomuさん提供)
isomuさんの作例の一部。スタッズとカラーリングがクールな印象(isomuさん提供)

芸術が好きな一家に生まれ、アートに囲まれながら、自分のアーティストとしてのあり方を模索していたisomuさん。そんな彼女をネイリストの道へ進ませたのは、90年代〜00年代に一世を風靡したギャル文化でした。ネイルアートについて学びを深めた後は北海道・札幌や東京のネイルサロンを巡り、ネイリストとしての実績とキャリアを着実に積み上げていきます。後編では、フリーランスとなった経緯やその後のキャリア、ネイルを通じたアーティストとしての彼女ならではの挑戦や試行錯誤などについて伺います。

撮影/野口岳彦
取材・文/勝島春奈


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Contact:isomuuu221177@gmail.com
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