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綿本彰 interview #1:日本に初めてパワーヨガを持ち込んだ改革者

パワーヨガを最初に日本に紹介した人物こそが綿本彰さん。その功績により、パワーヨガを引き金とした空前のヨガブームが起こり、今ではすっかりヨガが日本に定着するにいたっています。

ストレス社会の現代において、ヨガが果たせる役割は非常に大きいと言われています。そんな先駆者が語るヨガの本質とは? 美にもつながるインタビューを2回に分けてお届けします!

――この場所、中央区京橋にスタジオを開いて、もう何年くらいになるのでしょうか?

「もう36年になります。私、2代目なんです。すでに他界しましたが、このスタジオはもともと父が作ったもので、私自身は見習いとして入ってヨガを学び、少しずつこのスタジオのソフトを作っていく立場となって、のちに完全に引き継いだという形です」

――引き継いだとき『父との違いをどう出すか』みたいなことはお考えになったのでしょうか?

「根幹部分は変わらないのですが、ヨガの見せ方は大きく変化したと思います。10年ぐらい前に世界的なヨガブームがあり、そのきっかけがハリウッドだったんですね。そのハリウッドスタイルのヨガの中心にあったのがパワーヨガでした。

運動量が多くて、体を引き締める効果が高く、私もそれを全面的に取り入れて自分のスタイルを変革させました。父の面影がないくらい(笑)。見た目はアクティブに見えるかもしれませんが、体の使い方やポーズにはルールがあって、すごく繊細なんですね。『根幹は変えずに他を変えなさい』と生前、父も言っていて、望んでいたことでもあったんです」

――根幹部分とは具体的にどういう部分なのですか?

綿本 彰さん

「日常生活の中にヨガの考え方や技術を持ち込むということです。そもそもヨガはメンタルをどう調整していくのかというところに深く関わっているものなんですね。たとえば、ヨガのポーズがいくら上手でも、普段の生活においては何の役にも立ちません。でも、そういうポーズを取ることによってメンタルを変えることができれば、それは大いに日々の生活に役立てることができるんですね。そういうところを大切にすることが、父から受け継いだ根幹部分でした」

――心を落ち着かせる技術ということでしょうか?

「はい。正確には、物事との接し方です。初心者の方々が多く陥るのが、何でも力任せにやってしまうということ。人間関係やコミュニケーションはその典型だと言えるんですね。強引に進めると、ある程度まではうまくいきます。しかし、一定を過ぎると全然うまくいかない。なぜなら、信頼関係が築けていないから。その人が本当についていくのは、ごり押しせずに聞く耳を持って自分を尊重してくれる人であって、自分を大事にしてくれていると感じたときです。それは自分の体との関係においても同じこと。
ヨガをするにしても、強引にやっていると必ず筋肉が緊張してポーズが深まらないんです。だけど、相手の言い分、つまり筋肉の言い分を感じながら、『痛かったね。ちょっと戻そうね』という気持ちでやっていくと、結果としてスーと体が伸びてポーズが深まるんですね。そういう物事との向き合い方、取り組む姿勢そのものをいろんなポーズをとおして学んでいく。それがヨガの本質なんです」

――自分自身に語りかけながら、ポーズを取っていくわけですね。

「そのとおりです。あまり知られていないんですが、ヨガのルーツと禅のルーツはまったく同じです。いかに心を整えていくかという、そこが大事なんですね」

――そもそもいつぐらいからヨガに興味を持ち始めたのですか?

綿本 彰さん

「本格的に興味を持ったのは23歳のときなんですが、小学生の頃から哲学にすごく興味がある子供でした。『死ぬのが嫌だ、怖い』と思っていて、毎晩、寝るときになると天井を見て、死ぬとどこにいくのかな、消滅するのかな、消滅したまま永遠に戻って来れないのかなとか、そういうことをずっと考えていたんですね。そこから、無くなる自分って何なんだろうかと考えているうちに人工知能に行き着いたんです(笑)。

銀河鉄道999のように永遠の命が手に入るのではないか、という夢物語みたいなことを考えて、人工知能を学ぶために大学の工学部に進学しました。しかし、本来ならそういう勉強をするなら理学部に入らなくてはならなかったんです(笑)。結局、人工知能の勉強はできず、大学卒業後は一般企業に就職しました。営業をやっていたんですけども、ある日、営業先の人から『おもしろい本があるから、読んでみて』と一冊の本を紹介されました。それがヨガ的なインドの哲学本だったんです。一気に読んでしまうくらいおもしろくて、『自分の生きる道はここだ』と思いました。そこから会社を辞めて、インドで修行して、帰ってきて父からヨガを学びました」

――それまではヨガをしたことはなかったんですか?

「小さい頃に、『父からこのポーズをやってみなさい』と言われたら、やって褒められて、そのくらいでした。ヨガはグニャグニャ体操だと思っていました(笑)」

――インドというところから、なぜハリウッドへと移行したのでしょうか?

綿本 彰さん

「私が父からスタジオを引き継いだとき、ヨガはまさに氷河期だったんですね。ヨガのイメージが地に落ちた時期がありまして、ちょうどそのタイミングで代表が先代から私に変わったということなどが影響して、生徒さんが激減したんです。どうしたら回復できるのだろうかと模索して、アメリカに意識を向けました。インドではなかったんですね。その当時、ハリウッドではメグ・ライアンやマドンナなど、そういうスターたちがヨガをやっているということで、もてはやされていたんです」

――ヒントになることがあると思ったんですね?

綿本 彰さん

「そうです。インドのヨガは、瞑想しながら静かに呼吸をするという昔からのスタイル。対してアメリカはたった数十年の歴史ではあったんですが、カリフォルニアを中心に広まり、現代人の実生活に受け入れられやすいスタイルへと発達していたんです。運動量が多く、多いからこそ、頭から離れないようなストレスを心から引き離すには有効なんですね。

たとえば、イスにのんびり腰掛けて15分間、頭を空っぽにしてくださいと言われても、考えごとばかりしてしまうと思うんです。しかし、中腰の姿勢で15分維持しましょうと言われたら、考えごとなんてしていられないですよね。筋肉がプルプルしてきて必死になり、誰もが簡単に頭をリセットすることができる。ストレスを抱えている現代人には『これだ!』と思いました」

綿本彰 interview #2:ヨガは、ポーズを通して物事との向き合い方を学ぶということ >>

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