人気を集める『ヘアスタイリスト』たちが愛する『相棒』はコレだ!
最新流行のHAIRを生み出し続ける、人気スタイリストたち。彼らの仕事を支える名わき役となるのが、シザー、レザー、コームといったアイテムたちです。プロとして、自分の求めるスタイルを作るために、どんなところにこだわり、何を選ぶポイントにしているのか――? 大切に使い続けている『相棒』(愛用品)について、お話を伺いました!
第2回 ISM 北千住店
BEST TOOLS HISTORY 吉田さんの『相棒』PART1 “母”から受け継いだ「櫛」
吉田「僕ね、どんなに時代が変わっても、常に手入れをしているものがあるんですよ。それが日本髪を結うための、つげの櫛なんです。最近美容師になったような若い人は、専門学校でちょっとだけ触ったことがあるくらいな感じじゃないかな。でもこの櫛、ひとつひとつ名前がかわいくてね。「筋立(すじだて)」「なぎなた」「はまぐり」、それに「鬢出し」……。愛着湧くでしょう? 色が飴色に変わっているものは、僕同様に美容師をしていた母から受け継いだものなのですが、手にしたときの使い心地や馴染が新しいものとは全然違います。もちろん今は、日本髪を結うことはほとんどありませんが、こうした道具を使って作る髪型があるということ、日本古来の“ヘアスタイル”があるということ、こうした『伝統』を受け継ぐことも、美容師の役目であることを、美容師を目指す若い奴らに知ってほしくて、大切に持ち続けているんです。いざ『日本髪にしたい』ってオーダーが入ったときに『できません』なんて断るのも……美容師として、恥ずかしいですしね」
BEST TOOLS HISTORY 吉田さんの『相棒』PART2 “WOLFS HEAD”のシザーケース&ベルト
吉田「僕が死んだとき、必ず一緒に棺桶に入れて欲しい……そう家族にお願いしているのが、このWOLFS HEAD(ウルフズヘッド)のシザーケース&ベルトです。ファッションに詳しい方はご存知だと思うのですが、このブランドは木村拓哉さんや藤井フミヤさんといった著名人のファンが多いオリジナルレザーアクセサリーのお店なんです。そこでちょっぴりワガママを言いまして……オーナーさんに作ってもらったんですよ。僕だけのオリジナルを。『とても大変だったのでもう二度と作らない』と言われてしまったので、ウルフヘッドのものは世界でもこれひとつきり。僕のために作ってくれたものなのでこれだけは誰にも譲らず、僕自身、天国まで持って行こうと決めています。シザーケースは、開口部がやや大きく、シザーの出し入れがとてもしやすくなっています。とにかく丈夫で、ハードなサロンワークでもきちんとついてきてくれる本当にスゴい奴なんですよ。こうした、“自分にとっての体の一部”となる道具を身に付けることも、優れた美容師になるために必要なことだと思うんです。もちろん、使いこむうちに体の一部になるわけなので、長く大事にしたい道具を手に入れ、モチベーションを保って使い続けることが、もっとも重要なことなんですけどね」
BEST TOOLS HISTORY 吉田さんの『相棒』PART3 オリジナルの“吉田”のシザー
吉田「美容師になってからずっと、上條のシザーを使っていたんですよ。でも、美容の仕事を突き詰めていくうちに、美容師にしか分からないこだわりがどんどん出て来て……それで、オリジナルのシザーを作ることを決めたんです。たとえば、ビスを小さく薄くしてカットするときの邪魔にならないようにしたり、シザーにグリッドを入れて、定規をわざわざ使わなくても、長さの目安が付きやすいようにしたり。シザーって、『これ一丁ですべてOK!』というものじゃない。いい髪を作るためにはシザーがいくつも必要で、スタイルに合わせて使い分けることができてはじめて、良いスタイルを作ることができる――そうした思いをいろいろ込めて出来上がったのが、吉田のシザーです。バチンと切り込んだカットに向きますよ」
吉田「ちなみにシザーは、昔から使っているものを含めると40丁以上持っています。いちばん多いのはやはり上條のもので、どれも愛着があります。上條さんがご高齢となり、もう上條シザーが手に入らない可能性が高いので、1本1本を大切に使い続けていきたいと思っています。刈り上げ専用のシザーや、刃先がアール状になったものなど、普段使わないようなシザーもあるんですよ。こういう変わったカタチのものを見るとついつい買っちゃうんですよね。なんだろう。美容師のサガなのかな。カットフォームがゆがみやすいので、実際に使うことはほとんど無いんですけどね。鋏一丁を大切に使うのもよいですが、僕は、シザーというのは時代や旬によって使い分けることが大切だと思っているんです。ひとつのシザーを使い続けるのは、言い方は悪いですが、自慰行為でしかないと思っています。客本位な美容師であるために、さまざまなシザーを髪型によって使い分け、お客さまの望むスタイルに仕上げていく――これが、本来の美容師の仕事だと思っています」
――ありがとうございました!