体の機能を改善『整体師』と体を治療する『柔道整復師』の違いについて
『整体師』と『柔道整復師』。この2つの職業は名称が似ているため、どちらも同じ仕事だと考えている人が多いかもしれません。しかし、2つの業務内容には、れっきとした違いがあるのです。ここでは、それぞれの仕事の具体的な内容について、できること・できないことや必要な資格と取得方法を中心にみていきましょう。求められる能力、働き方、保険に関すること、収入などについても詳しく解説します。
また、両方の職業に共通していることについても触れていきます。
整体師の仕事と主な職場について
整体師は、筋肉バランスや骨盤の歪みを調整して、腰痛・肩こりなどの症状を改善する仕事です。整体とは、歪みによって生じた骨や筋肉の圧迫を改善することで、人間が本来持っている自然治癒力を高めることを目指すものです。O脚や肩の張りの矯正も、整体師の業務のひとつです。患者の体の痛みや不調に対して技術だけに偏らず、奉仕する心を持っている人が整体師に望ましいでしょう。整体師は、患者ひとりひとりの症状に合わせて施術を行うことが欠かせません。人体や健康に関する幅広い知識を、常に吸収しようとする向上心があることが整体師に要求されています。整体師の仕事は、患者の体を整える、体力を使う肉体労働です。一日に何人もの患者に施術を行い、体の不調に関する相談に乗ることも少なくないため、心身ともにタフであることも大事でしょう。整体師の働き方は多岐にわたります。最も多いケースは、整体院やカイロプラクティック院に勤務することです。女性を対象に、リラクゼーションを提供する整体師もいます。フリーで、プロのスポーツ選手に整体を行う整体師も珍しくありません。リハビリの一環として、整体を取り入れている老人ホームなどで働いたり、独立開業したりする整体師もいます。
柔道整復師の仕事と主な職場について
柔道整復師は、筋、腱、靭帯、骨・関節などの箇所に発生する打撲、骨折、脱臼、挫傷、捻挫などを治療する仕事です。治療法は、人間の持つ自然治癒力を高めるという、東洋医学の考え方がベースになっています。柔道による脱臼や骨折の治療法から生まれ、西洋医学を取り込んで発展してきた経緯があるのです。包帯やテーピングなどを扱うことが多いため、手先の器用な人は柔道整復師に向いているといえるでしょう。柔道整復師の治療は人間の自然治癒力を利用して行うため、患者が治癒するまでには時間がかかります。長期化するケースもあることから、患者と長く付き合っていくうえで良好な人間関係を築けることが欠かせません。患者とのやり取りを楽しめる、コミュニケーション能力が高いことは柔道整復師に求められる素質でしょう。不安を感じている患者の心を和らげることも、柔道整復師の大切な業務です。施術内容を説明する際は、できるだけ専門用語を避けて分かりやすい言葉を使うなど、患者の立場に立って考えることのできる、思いやりのある人も柔道整復師としての適性があるといえるでしょう。国家資格を取得後、個人で接骨院や整骨院を開業する柔道整復師が少なくありません。独立開業を目指さない場合、病院の整形外科が主な勤務先となるでしょう。柔道整復師は、医師や理学療法士の指示のもとで、患者にリハビリを施します。ほかにも、スポーツ関連施設や教育機関、介護保険関連施設などでも柔道整復師が活躍しています。
施術内容の違いと保険適用の有無について
整体師の業務は、問診と検査から始まります。患者に、問診票に現在の症状や病歴などを記入してもらいます。患者との問診では、整体師は患者が訴えている症状と問診票に記載された症状を照らし合わせて、確認することが大事です。関節や骨盤の歪みを中心に、入念な検査を行うことが欠かせません。患者に施術方針を説明して、患者の理解と承諾を得たうえで施術を開始します。整体師が行う施術は、体の不調の多くは体の歪みが原因であるという東洋医学の考え方に基づいて、手や指を使った手技によって、患者の体の歪みを矯正したり筋肉をもみほぐしたりするのです。整体施術は手技が基本ですが、必要に応じて電気マッサージなどを併用する場合もあります。施術後はアフターフォローとして、患者が自宅で行うマッサージやストレッチの方法、日常生活を送るうえでの注意点などについて、アドバイスを行うことが必要です。整体院やカイロプラクティック院の治療費は保険適用外です。柔道整復師の治療は、手術をしない「非観血的療法」であることが特徴で、素手のみで治療を行うことが基本となっています。包帯やテーピング、湿布などを使用して施術を行いますが、手術や投薬は行いません。捻挫の場合は、捻挫箇所を当て木で固定してからマッサージを行うことが大事です。脱臼や骨折の治療では、応急処置を除いて、治療にあたって医師の同意が必要となります。柔道整復師の治療には、保険が適用されます。
必要な資格と勉強方法の違いについて
整体師には国家資格がありませんが、代わりに民間資格があります。無資格でも整体師の業務に携わることはできますが、人の体に触れる責任のある仕事であり、患者からの信頼を得るためにも、民間資格を所持しておいて損はないでしょう。整体専門の養成学校に通えば、人間の体に関する知識や整体の技術を学ぶことができます。スクールのなかには、就職の斡旋をしてくれるところもあるようです。スクールによりますが、半年から1年ほど受講して、修了すれば整体師の資格を得ることができます。学校に通う時間がない人には、通信教育という選択肢があります。自分のペースで勉強を進められることが、大きなメリットでしょう。ただし、頭で理解していても、実際に現場で通用する技術が身についているとは限りません。スクールが開催する講習会などで、プロの整体師から直接教わる機会を作ることが欠かせないでしょう。整体師は資格を取得しても、患部の治療を行うことは禁じられています。柔道整復師が業務を行うためには、柔道整復師国家試験にパスしなければなりません。受験資格として、柔道整復師養成課程がある大学、もしくは柔道整復師専門学校で3年以上学ぶ必要があります。専門学校のなかには、社会人が働きながら資格を取得できるように、夜間のコースを設置しているところもあります。
高収入を期待できるのは整体師?それとも柔道整復師?
整体師の場合、勤務先によって年収に差があります。整体院の場合は、年収200万円から300万円程度ですが、リラクゼーションサロンは歩合制を取り入れているところが多いため、年収は300万円から650万円程度となっているようです。独立開業した整体師のなかでも、年収が1,000万円を超える人もいれば、整体院に勤務している整体師よりも少ない人もいて、個人差があります。独立開業で高収入を望む場合は、リピーターを作ることが欠かせないでしょう。柔道整復師が勤務する接骨院や病院の整形外科では、新人で年収350万円から400万円程度で、10年ほどのベテランで600万円から700万円程度となっているようです。独立開業したり、著名なスポーツトレーナーになったりした柔道整復師のなかには、年収が1,000万円を超える人もいるそうです。柔道整復師の施術には保険が適用されるため、患者が利用しやすいことから、柔道整復師が独立開業した場合は比較的安定した収入が得られるようです。
整体師と柔道整復師の仕事に共通していえることは、どちらも患者から感謝されることが多いということです。整体師の施術で腰痛などが改善されたり、柔道整復師の施術で患者の機能が回復されたりして、『あなたのおかげで楽になった』と患者に喜んでもらえれば、このうえないやりがいを感じられるでしょう。