経験の中でほしかった環境を次世代のためにつくる『180°One Eighty Degrees.』
20代後半に日本で美容室をOPENさせようと貯めていた貯金を、もう一度自分自身のスキルアップのための資金に変えニューヨークに美容の技術を学びに行ったという横塚鉄也さん。『180°One Eighty Degrees.』の店構えに、確かな存在感と風格があるのは、そんな横塚さんの生き方と経験がしっかりとにじみ出ているのかもしれません。
大胆な発想力と堅実な行動力を持つ横塚さんに、『180°One Eighty Degrees.』の展望について伺いました。
1人ひとりがストーリーを感じられる雰囲気を
――『180°One Eighty Degrees.』の店舗のコンセプトを教えてください。
「ニューヨークのダウンタウンにある美容室のような、どこかカフェのような雰囲気を持たせています。一つひとつの小物にもこだわりを持ち、クラシックな抜け感もあって。無機質な鉄の冷たさもある一方で、有機質な木の温かみも同居しているような感じですね」
――スタイリングチェアひとつとってもすごく洗練されています。こういったインテリアは横塚さんが選んでいらっしゃるのですか?
「そうですね。もともと、インテリアが好きだということもありますし、お店に来てくださったお客さまに提供したいおもてなしのひとつでもあるので、空間づくりは大切にしています。海外経験のあるお客さまは、“この雰囲気…、海外にいた当時を思い出しますね”なんて言ってくださる方もいらっしゃいます。
『180°One Eighty Degrees.』は、お客さまにとってのひとつの安らぎの場所になりたいと思っています。お客さまは、それぞれがご自身のストーリーを生きていますよね。そのすべてに寄り添うことは当然できませんが、記憶の一部分になれる場所でありたいのです」
ルートがないからこそ、アジア圏に進出したい
――横塚さんはこれから先、再び海外に出るようなことはあるのでしょうか?
「いろいろ考えています。今年4月には、恵比寿にネイルとまつげエクステのサロン『OneEightyDegrees,Nail&Eyelash』をオープンしました。こちらも素敵なスタッフがそろっています。海外進出としてはまずアジア圏にお店を持ちたいと考えています。といっても、大きなお店を持ちたいわけではありません。
そして将来的には小さくてもいいので、ニューヨーク出店が夢です」
――視野を広く活動しようという意思を感じるのですが、横塚さんの軸はなんなのでしょうか。
「ひとつに集約すると “人間力を磨く”ということです。人として成長して、それを表現しています。美容師なので美容という世界でそれを表現しているんですよね。これはすべての分野において言えると思うのですが、結局は何するにしても、“人の魅力”が一番大切だと思っています」
――なるほど。よくわかります。ちなみに進出したい海外が、まず、ニューヨークではないのは、どうしてなのですか?
「これまでアジア圏に出ていないことが大きな理由です。たとえば、お店で働いているスタッフが、昔の僕のように海外に行きたいと思ったとします。僕の場合は、ニューヨークにパイプがあったから行くことができました。だから、僕もスタッフにそんな環境を用意しておいてあげたいのです。僕がアジアでお店を展開していれば、“ちょっとアジアを見てきたいなら、頼っていいよ”って言ってあげられます。そんなふうに、若い人の選択肢を増やしておきたいと考えています」
伸びるのは向上心と意欲のある人
――スタッフの育成にも力を注いでいらっしゃるのですね。伸びるスタッフにはどのような特徴があると見ていらっしゃいますか?
「これはシンプルです。向上心や意欲のある人ですね。日々、何かをつかみたいと思って生きている人と何も考えずに生きている人が、社会人として30歳を迎えたとき、そのふたりにはきっと大きな隔たりができているはずです。向上心のある人と話をしていると、自分自身もワクワクしてきます、一緒にがんばろうと言う気持ちが僕の励みにもなります。
昔の僕も、いろんな方に助けていただけたからこそ挑戦することができました。ニューヨークではなく、ロンドンやパリに行くことも考えたのですが、つてがなかったから行けなかったわけです。“こんな環境がまわりにあったらいいのに”と、昔の自分が望んでいた環境を、若い人に作ってあげたいですね」