生活に沿う髪型を重視した古民家サロン『髪匠庵』
おしゃれなカフェや雑貨店と古くからの街並みが共存するエリア、大阪の中崎町にあるヘアサロンは、築100年の古民家をリノベーションした癒しの空間。店内には年代物の椅子が置かれ、どことなく懐かしの友人の家に遊びに来たような感覚に。そんなサロンを牽引するのは、美容師歴28年というベテランの岡田さん。オーナースタイリストである岡田さんとスタイリストの三原さん2人のアットホームなサロンでは、各国を旅した岡田さんらしい多様な価値観を反映したヘアスタイリングをはじめ、髪を健やかに保つケアなども好評。そこで今回は、美容師になってからワーキングホリデーに挑戦するなど、異色の経歴を持つオーナースタイリストの岡田さんにお話を伺いました。
ヘアスタイルも生き方も「思い切り」が大切
美容専門学校を卒業後に2年間美容室に勤め、インターン期間を終えてからワーキングホリデーを利用し、オーストラリアへ行こうと思ったのはなぜでしょう。
「海外志向が強かったというか、若いうちに海外に出てみたかったんです。とはいえ、美容学校を出て勤めた美容室でやっとインターンを終了し、さあこれから!という時期に今までの経験をゼロにして海外へ行くことへの不安もありました。ただ、その若さじゃないとできないなという気持ちもあり、思い切って行くことに。オーストラリアには丸1年いたのですが、そこでは現地で知り合った人の髪を切らせてもらったり、現在美容師業と並行して講師を務めている民族楽器のディジュリドゥと出会ったりと、想像以上の体験と出会いがありました。結果的に自分の身になっているので、思い切って海外に出たのは正解でしたね。美容師は長い休暇が取り辛い仕事ですが、若い美容師にはどんどん海外に出て欲しいです。特に意識しなくても価値観が広がるし、幅広い考え方ができるようになります。ちなみに、僕が店でお客様におすすめしているのが、思い切ったヘアスタイル。なんとなく無難にまとめがちな髪型でもどこに個性を入れることで、自分らしさの表現手段になりますから。とはいえ、基本はお客様のライフスタイルに密着した髪型であることが大事。髪に手をかけたくない人には、例えハネていてもそれがデザインに見えるようなカットを提案するなど、生活の延長線上にあるヘアスタイル提案をした上で、個性をプラスし無難に陥らないことを心掛けています。」
周囲との差は後からでも挽回できるという信念
ワーキングホリデーから帰国後もアジア各国を旅されているのですね。その後再び美容室へ就職した際にはまたアシスタントからリスタートされたそうですが、その時は不安などありませんでしたか?
「もちろんありました。同じタイミングで働き出した美容師がスタイリストになっているのに、僕は1からの再スタートですから。ただ、そういった周囲との差を感じる以上に旅から得るものの方が大きかったです。僕の印象に強く残っているのが、イースター島を訪れた時の現地の人々のヘアスタイルなのですが、旅の間もどこかに美容師としての目線があるため、知らず知らず美容師としての引き出しのようなものが増えていくのを感じました。周囲との差は後からでも埋められるので、まずはその時に自分がやりたい、挑戦したいと思ったことを素直にやるのが、結果として美容師としての視野を広めることにつながるのではないでしょうか。」
生活にフィットする髪型を徹底
ご自身の様々な体験を生かしたヘアスタイル提案をされていますが、ヘアスタイリングをする上で特に意識しているのはどのようなことでしょう。
「先ほど生活の延長線上にある髪型のお話をしましたが、これには例えば四季に応じたヘアスタイル提案なども含まれます。夏場であればまとめ髪の方が涼しいので結びやすく、また乾かしやすい長さや毛量に調整し、乾燥する冬場ならトリートメントなどのケアを重視するなど、髪そのものを健やかに保ちながらその時期に応じて快適な髪型をアドバイスしています。もちろんお客様のご希望が第一ですが、それを叶えた上でよりそのお客様にとって快適だと感じられるヘアスタイルがベストではないでしょうか。髪は常に纏っているものなので、お客様の生活に似合うスタイルを作ることに何より尽力しています。」
多彩な海外経験を生かし快適性や個性を追求したヘアスタイルを提案する岡田さん。後編では10年前に独立してオーナーとなった経緯をはじめ、アットホームサロンならではの魅力などをお聞きします。
profile
オーナースタイリスト
岡田俊一郎さん
大阪出身。オーストラリアやアジア各国などを広く旅し、民族楽器ディジュリドゥの講師としても活躍中。サロンワークの傍らディジュリドゥのライブも月に1〜2回程度大阪で開催するなど、スタイリスト業のみならずアーティストとしても精力的に活動する。