1人サロンにも!美容室の開業・経営に利用できる助成金
美容師免許を所持している方が美容室などを含むサロンを開業する際には、経験や知識だけでなく資金も必要です。自身で貯めたお金だけで開業をするのが難しいという場合には、助成金を利用する方法があります。
ここで今回は、サロンの個人開業で活用できるおすすめの助成金をご紹介しますので、将来的な個人開業を検討されている方は参考にしてください。
美容室開業時にも受け取れる可能性のある助成金・補助金とは?
個人開業を志す美容師が利用できるお金の支給制度は複数あり、制度そのものに関する知識を深めておくことが大切です。そこで、美容師が美容室を開業する際にぜひ知っておきたい、助成金や補助金の基礎知識について学びましょう。
助成金とは|条件を満たせば受給できる
助成金については「主に雇用に関連した返済不要の支援資金」と定義されています。
助成金は所定の条件を満たしていれば受け取ることができるうえ、返済が不要であることが大きなメリット。支給された助成金は、返済計画を立てることなく開業資金として利用することが可能です。この記事では、助成金をメインに話を進めます。
補助金とは|申請して審査を満たすと受給できる
助成金とよく対比される支給金として、補助金があります。助成金は主に厚生労働省の管轄であるのに対し、補助金は主に経済産業省や地方自治体の管轄であるという点が大きな違いです。
また、助成金は所定の要件を満たしていれば支給されますが、補助金は審査に通過する必要があり、助成金と比べると若干ハードルが高いという特徴もあります。
1人サロンでも受給できる?
美容師が1人で美容室を開業する場合、基本的に個人事業主として働くことになります。しかし、助成金のなかには小規模の事業主を対象にしていないものもあるため、申請をする場合は個人事業主でも受け取れるものを選ぶようにしましょう。
美容室開業や経営に活用できる助成金にはどんなものがある?
美容室の新規開業・経営にはどのような助成金が使えるのでしょうか。利用可能な助成金を解説します。ただし、受給条件などは年度が変わると変更されることもあるため、厚生労働省や自治体のホームページなどで必ず最新のものを確認するようにしましょう。
創業支援助成金
全国各地のさまざまな自治体や団体から、創業を支援するための助成金が交付されています。内容や金額などは支給元によって異なります。ここでは、東京都の公益財団法人東京都中小企業振興公社による創業助成金を例に取って説明しましょう。
なお、対象となる費用は、テナントの賃料・広告宣伝にかかる費用・器具や備品の購入費・従業員の人件費などです。
受給条件
受給するための条件は、都内で創業予定・創業から5年未満の中小企業のうち、一定の内容を満たすことです。
一定の内容とは、TOKYO創業ステーションの事業計画書策定支援を修了している・東京都の制度融資(創業)を利用している・都内の公的創業支援施設に入居しているなどです。
受給額・期間
東京都中小企業振興公社の創業助成金は、下限が100万円、上限が300万円であり、助成率は助成対象になる費用の3分の2と定められています。また、受給できる期間は交付決定日から6カ月以上2年以下です。
トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)
「トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)」とは、技術や就業経験の不足などの関係から安定して働くことが困難な人を雇用する事業者へ支給される助成金です。この制度は長期不労者の社会復帰などを目的としており、美容師として個人開業をしたあとに従業員を雇う場合は利用を検討してみるとよいでしょう。
受給条件
個人開業をした美容師の方がこの制度を利用するためには、ハローワークや地方運輸局などから紹介された人材を雇用する必要があります。この制度を利用した場合の雇用期間は3カ月間で、期間中は通常の労働者と同程度の時間内で働いてもらうことも受給条件です。
受給額・期間
個人で美容室を開業した場合、従業員を1人雇用するごとに毎月最大で4万円が支給されます。ただし、支給期間は原則的にトライアル期間中の3カ月間のみです。また、シングルマザーやシングルファザーを雇用した場合は、月に最大5万円支給されます。
キャリアアップ助成金
「キャリアアップ助成金」は、雇用している非正規労働者のキャリアアップ支援をおこなっている事業者などに支払われる助成金です。そのため、支給を受けるにはキャリアアップ計画を提出しなければなりません。
いくつかのコースがあるため、アルバイトなどの非正規従業員を雇う場合や正社員化を進めたい場合などに利用を検討してみましょう。
受給条件
美容師として個人開業をした方がこの制度を利用して助成金を受け取るためには、非正規社員の正社員への登用や賃金規定の改定などをおこなう必要があります。詳細な受給条件はコースによって異なるため、必ず厚生労働省が発表している公式の情報を確認してください。
受給額
たとえば「短時間労働者労働時間延長コース」では、週労働時間を1時間・2時間・3時間以上延長した場合、それぞれ対象労働者1人あたり〇万円受給できるという額が決まっています。
有期雇用労働者等の週所定労働時間を3時間以上延長した場合、対象の従業員1人につき、中小企業は9.5万円、大企業は7.125万円を受給することが可能です。また、さらに細かい要件や時期を満たすと、最大で28.4万円支給されます。
人材開発支援助成金
「人材開発支援助成金」は、特定の職務に関係する専門的な知識や技能を習得するため、人材育成をおこなう事業者を対象として支給される助成金です。サロンの経営だけでなく、人材の育成にも力を入れたいと考えている美容師の方におすすめできます。
受給条件
人材開発支援助成金にはさまざまなコースがあり、各コースに応じた受給要件を満たす必要があります。
たとえば「特定訓練コース」のうち「若年人材育成訓練」の場合、採用5年以内・35歳未満の人材を雇用し、業務を通して所定の訓練もおこなっていることが条件です。
コースごとの詳しい要件は、厚生労働省が発表している情報を確認しましょう。
受給額
人材開発支援助成金は、経費の45%、時給換算で1人あたり760円など、コースや内容によって助成率や助成される金額が決められています。
両立支援等助成金
「両立支援等助成金」は、介護や出産などによって就業機会が失われてしまうのを防ぐことを目的として支給される助成金です。家族の介護をしながら働きたい人を雇用したり、過去に出産を理由として退職したことのある人材を雇用したりする場合、1人開業の美容室などでも受け取れます。
受給額
受給される助成金の額は、男性が子どもの出生時に育休を取る「出生時両立支援コース第1種」の場合は20万円、介護休業や育児休業を取得する際は28.5万円などと決められています。
年度によって内容や金額が変わる可能性もあるため、厚生労働省のホームページなどで確認しましょう。
業務改善助成金
「業務改善助成金」は、業務を改善することで事業所内でのもっとも低い賃金の底上げをおこなった事業者に支払われる助成金です。この制度では、賃金の底上げを目的とした設備投資をおこなった場合に、その投資額の一部に支給された助成金を充てることができ、個人開業をした美容師の方にもおすすめです。
受給条件
業務改善助成金を受けるには、最低賃金を一定額以上引き上げ、引き上げた分を支払うことなどが条件です。引き上げた金額によりコースが異なり、事業所の規模が30人未満かそれ以上かによって助成上限額が変わります。
受給額
助成額は、コースごとに給料の引き上げをおこなった従業員の人数で決められます。たとえば、「30円コース」では、従業員1名の30円以上の賃金引き上げにより、最大で60万円の助成金が支給されるのです。
内容は変更されることもあるので、最新の金額については、厚生労働省が発表している情報を確認してください。
雇用調整助成金
「雇用調整助成金」は、新型コロナの影響で事業の規模を縮小せざるを得なくなった場合に、従業員の雇用を継続させるため、雇用調整(休業)をおこなう事業主に対して休業手当などの費用を一部支給するものです。
1人開業の小規模な美容室などでは、一時的に利用する必要が生じることもあるかもしれません。
受給条件
雇用調整助成金を受け取るためには、最近1カ月間の売上高または生産量などが、前年の同月に比べて10%以上減少しているなどの条件を満たす必要があります。複数の項目が設けられているため、詳細は厚生労働省が発表している情報を確認しましょう。
受給額
受給できる金額は、判定期間の初日がいつなのかや事業所の状況の厳しさによって変わります。原則1人1日あたり8,355円ですが、特に厳しい事業所では1万2,000円など、通常より高く設定されています。
地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース)
雇用機会が極端に減少している地域での雇用機会促進を目的として支給されるのが、「地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース)」です。この助成金が支給される対象地域で1人開業を考えている美容師の方は、利用を検討してみるとよいでしょう。
受給条件
サロンなどを個人で開業した美容師の方がこの制度で助成金を受け取るには、その地域を管轄する労働局長への計画書の提出や事業用施設・設備を計画書どおりに整備するなどの要件を満たす必要があります。詳細な受給要件は、厚生労働省が発表している情報を参照してください。
受給額
受け取れる金額は、施設・設備の整備に要した金額とそれによって増加した支給対象者の人数によって決められます。設備費が300万円以上1,000万円未満の場合、労働者が3~4人増えると、基本で48万円受給することが可能です。
また、創業の場合は支給額が多くなり、上記の例の条件では100万円支給されます。1年ごとに最大3回受け取れる助成金のため、美容室の個人開業を考えている場合は、開業当初からの申請を検討してみるのもよいでしょう。
1人で美容室開業をする際に使える助成金も!制度を活用して資金を調達しよう
美容室などを1人開業する場合は、助成金をうまく利用しつつ資金をやりくりするのがおすすめです。いろいろな種類の助成金があるため、今回の内容も参考にしながら、よく調べて自分に合うものを活用しましょう。
なお、助成金は後払いであるだけでなく、支給までに時間がかかるものも多いです。利用する場合は早めに申請することも忘れないようにしてください。
引用元
東京都中小企業振興公社 創業助成金
厚生労働省 トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)
厚生労働省 キャリアアップ助成金
厚生労働省 各助成金別要領 12 キャリアアップ助成金
厚生労働省 人材開発支援助成金
厚生労働省 両立支援等助成金
厚生労働省 2022年度 両立支援等助成金のご案内
厚生労働省 業務改善助成金
厚生労働省 雇用調整助成金
厚生労働省 地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース)