サロンに管理美容師がいないと罰則が適用されることがある? 美容室開業に管理美容師が必要になる場合とは
サロンの運営において、室内の衛生管理やスタッフの健康管理は大切な仕事です。サロン内で衛生または健康面で問題が発生した場合は速やかな対処が求められますが、衛生・健康に関する知識が乏しいスタッフだと適切な対処ができない可能性があります。
そのため、こうした問題に適切に対処するための資格として「管理美容師」があるのです。今回の記事では、サロンに管理美容師が在籍していない場合に科せられる罰則や、管理美容師を置く方法について解説します。
サロンに管理美容師がいないと罰則が適用されることがあるの?
現在の法律では、美容室の良好な衛生の維持・管理のために、特定の条件において「管理美容師」を在籍させることが義務づけられています。
管理美容師が在籍していない美容室には罰則が科せられることがあるので、注意が必要です。具体的に管理美容師が必要になる場合や、罰則が適用されるケースについて解説します。
美容室開業に管理美容師が必要になる場合とは?
美容師法には「美容師の従事者が2名以上常勤している美容室の開設者は、衛生管理のために美容室ごとに管理美容師を置かなければならない」と記されています。そのため、美容師2名以上となる美容室を開設する場合、管理美容師をおくことを明記した届け出を出さなければなりません。
開設者自身が管理美容師の資格を保持している場合は、自身を従業員として含めることが可能です。管理美容師になるためには、美容師免許を取得したのち3年以上の実務経験をこなし、国が指定する講習会を修了しなければなりません。
罰則が適用される問題1|管理美容師がいないまま業務をおこなっている
従業員が2名以上であるにもかかわらず、管理美容師がいない状態で美容室を営業している場合や届け出を出していない場合、または虚偽の届け出を出しているときは罰則が適用されます。
美容室の開設時は従業員が2名以下であったものの、その後、従業員が2名以上に増えた場合は当然、届け出を出さなければなりません。従業員が2名以上に変わったのに管理美容師がいないまま営業を続けてしまうと、罰則の対象になります。
罰則が適用される問題2|管理美容師の資格者が働いているように偽装している
管理美容師でない者が管理美容師と偽って営業した場合、または他人の名義を借りたリ、意図的に偽装をおこなったりした場合も罰則が科せられます。資格を保持していない者が、資格保持者であるふりをして営業をするのは決してあってはならないことなので、自身であれ他者に依頼するのであれ、必ず管理美容師の資格保持者を在籍させる必要があるのです。
罰則が適用される問題3|環境衛生監視員の衛生検査を拒んだり、忌避した場合
美容室の衛生面のチェックのため、保健所に勤務する環境衛生監視員の検査を受ける際、検査を拒んだり、避けたりした場合は罰則の対象となるのです。
環境衛生監視員による検査では、その美容室の従業員が2名以上の場合、美容師資格および管理美容師の資格(管理美容師修了証の原本)の提示を求められます。資格を提示できない場合、または衛生検査によって虚偽が判明した場合は罰則が科せられるということです。
どんな罰則が適応されるの?|美容師法第18条
法律に則って管理美容師を在籍させていない、虚偽の届け出をおこなっているなどの法律違反が発覚した場合、30万円以下の罰金に処せられます。
美容師法第18条には以下のように明記されています。
次の各号のいずれかに該当する者は、30万円以下の罰金に処する。
1. 第6条の規定に違反した者
2. 第11条の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者
3. 第12条の規定に違反して美容所を使用した者
4. 第14条第1項の規定による当該職員の検査を拒み、妨げ、又は忌避した者
5. 第15条の規定による美容所の閉鎖処分に違反した者
また、美容師法第19条は以下のように記されています。
「法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の刑を科す」
2人以上のサロンを経営するときは管理美容師が必要!
2人以上の美容師が勤務するサロンでは、管理美容師をおかなければならないという説明をしました。次に、実際に管理美容師をおく方法について確認しておきましょう。
1. 派遣サービスなどを利用して管理美容師を雇う
自身や勤務者のなかに管理美容師の資格を所有している人物がいない場合は、外部から管理美容師を雇う必要があります。友人・知人を通して来てもらうことも可能ですが、それ以外に求人サイトや派遣サービスなどを利用して管理美容師を雇う方法もあるのです。
現在さまざまな求人サイトがあり、美容業界においても多くの職種での求人が出されています。管理美容師として働きたいという人も多いですから、求人を出して正社員として雇う、または派遣で来てもらうといった形を取ることが可能です。
2. 管理美容師免許を取得する
サロンを開設する本人が管理美容師の資格を持っていれば、外部から管理美容師を雇う必要はありません。管理美容師の資格は、サロンを経営するうえで必須のものではありませんが、すでに説明したように2名以上の美容師が勤務するサロンでは必須事項です。
管理美容師の資格は通常の美容師資格とは別のものなので、あらたに取得を目指す必要があります。
管理美容師になるために必要な条件とは?
管理美容師の講習会を受講できる条件は、美容師免許を取得して3年以上の実務経験を積むことです。法律では「管理美容師は、美容師の免許を受けた後3年以上美容の業務に従事し、かつ、厚生労働大臣の定める基準に従い都道府県知事が指定した講習会の課程を修了した者でなければならない」と規定されているのです。
講習は年に2回開催され、1回の講習につき3日間にわたる授業が実施されます。講習は3日間で18時間の内容で、内訳は公衆衛生(4時間)、美容所の衛生管理(14時間)です。
講習会の受講は、エントリー→申し込み→受講者票の取得→受講→修了という流れとなっています。エントリーは、理容師美容師研修センターの公式サイトのWEBから応募するか、同サイトからエントリー用紙を印刷して郵送で可能です。
エントリー後に、「申込書類一式」が届くので、記入および必要書類を返信用封筒に入れて期日までに簡易書留で郵送します。申込書類一式は、以下のとおりです。
1. 管理理容師・管理美容師資格認定講習会受講のご案内
2. 受講申込書用紙(受講料は16,000円)
3. 払込取扱票用紙
4. 業務従事証明書用紙
5. 受講者写真票用紙
6. 受講申込書返信用封筒
書類が受理されると、受講日の前に受講者票が届きます。その票を持って会場に向かい、講習を受けてください。受講が無事終われば、修了日当日に修了証書が交付されます。
出典元:東京都福祉保健局 管理理容師・管理美容師資格認定講習会
サロンに管理美容師がいないと罰則が適用されることも!
美容師が2名以上勤務するサロンでは、管理美容師の在籍が義務づけられているので、これに違反すると罰則が科せられます。サロン開設時から2名以上のスタッフで営業する場合は、必ず管理美容師を置く必要があるのです。
また、最初は管理美容師の在籍が必要ではない営業形態だったとしても、その後スタッフが増えて2名以上になった場合は速やかに管理美容師を雇い入れなければ違法営業になってしまいます。外部から管理美容師を雇う形でもよいですが、できればサロン開設者本人が管理美容師の資格を持っていたほうが、スムーズなサロン運営を目指せるでしょう。
美容師として3年以上の実務経験があれば、誰でも講習会を受けて資格を取得できるので、まだ管理美容師の資格を持っていない経営者の方はぜひ検討してみてください。
出典元:
東京都福祉保健局 美容所の管理者