美容鍼灸でたくさんの女性を笑顔にするために【美容鍼灸師・白金鍼灸サロンフューム 折橋梢恵さん】#2
鍼灸の世界に、美容鍼灸という新しいジャンルを切り開いた折橋梢恵さんにインタビュー。前編では、鍼灸とエステの融合を目指す中で経験した挫折についてお聞きしました。
後編では満を持してオープンしたご自身の鍼灸サロンや、講師としての活動など、業界の発展を見すえたビジョンについて語っていただきました。
美容鍼灸なら年齢とともに複雑化する女性の悩みに寄り添える
──2009年に美容鍼灸サロン「白金鍼灸サロンフューム」をオープン。美容鍼灸とはどのようなコンセプトなのでしょうか?
美容鍼灸の基本は、「お客さま本来の美しさを引き出すにはまず体が健康であることが大切」という考えです。
そのため、まずは鍼灸でお客さまが日ごろ感じている心身の不調をしっかりと整えます。女性は加齢やライフステージの変化によって、「肩こり」「腰痛」「冷え症」「月経不順」「生理痛」「更年期障害」「PMS症候群」「うつ」などに複合的に悩まされることが多々あります。そういった悩みや症状に幅広く対応しています。
体の不調を整えたら、エステの施術も加えながら「美顔」「美髪」「痩身」「体型」「エイジングケア」といった美容の悩みを解決していきます。健康と美容の願いを両方叶えられること、しかも同じサロンで一度にケアできることが、美容鍼灸の強みですね。
ストレスの多い現代女性のニーズにハマった美容鍼灸
──お客さまから特に多いニーズは何でしょうか?
リフトアップやむくみ、くすみのケアといった美顔のニーズは多いですね。お顔には髪の毛ほどのごく細い鍼を使いますが、顔周辺は鍼の効果がより出やすい部位になります。
頭皮の健康維持も人気メニューの1つです。現代女性はストレスで頭皮が硬くなりがちですが、頭皮と顔はつながっているため、その影響が顔にも出やすくなります。頭皮に鍼を打って血流を高めることで、頭皮だけでなく顔のエイジングケアにもつながります。
──今年は新たにオリジナルのスキンケアシリーズも開発したそうですね。
サロンで使っているものと同じクオリティでご自宅でもお手入れして欲しくて、漢方などを配合した化粧水と乳液をつくりました。しっとりしているのにベタつかないテクスチャーや、リラックスできる香りなど、納得するまでこだわってつくった自信作です。
コロナ禍でサロンになかなか来られないお客さまもいらっしゃいます。質のいいセルフケアをサポートすることで、少しでもサロンのエッセンスを取り入れていただけたらうれしいですね。
信頼できる美容鍼灸師を一人でも多く育てるために
──各地の鍼灸専門学校やセミナーで講師を務めたり、自身でもオンラインスクールを開校したりして、美容鍼灸師の育成にも熱心ですね。
サロンは私一人で運営していますが、じつは過去にスタッフを増やしてお店を広げようと試みたことがあったんです。
でも実際にやってみると、スタッフそれぞれに自分のやり方があって、私にはそれらを上手くまとめて運営することはできないと断念。代わりに後進の育成に積極的に関わり、美容鍼灸のすそ野を広げていくことにしたんです。
ただ、前回の失敗からいろいろと学ぶこともできたので、コロナ禍が明けたらまた店舗の増加にチャレンジしてみたい気持ちもあります。
美容鍼灸の可能性を広げ、女性がやりがいを持って働ける場に
──美容鍼灸師仲間と「美真会」を立ち上げ会長を務めているそうですが、活動の目的は?
質の高い美容鍼灸をどんどん普及させていくことで、お客さまの美容と健康に役立つだけでなく、女性の働く場を増やすことにもつながると考えています。そのためには、美容鍼灸の技術向上と美容鍼灸師の育成がマストになるので、勉強会や講座、セミナーを数多く企画・実施しています。
コロナ禍で実地以外はオンラインになってしまいましたが、これを機に新しいテキストを作成したり、動画をつくったりして、学びの質を下げない工夫もしています。
──一般社団法人日本美容鍼灸連盟の理事も務めているそうですね?
こちらは、美容鍼灸の認知度を高めるために、よりアカデミックに体系化することを目的にしています。今、取り組んでいるのが、美容鍼灸の効果をデータ化し、その内容を詳しく研究する活動です。データ収集の際は全国の美容鍼灸師仲間に手伝ってもらい、600を超える事例を集めることができました。
認知度を高めるという意味では、今はお休みしていますが、ブログでも美容鍼灸についてかなり詳しく発信してきました。サロン開業時に商工会議所の融資を利用したのですが、実績としてブログの内容を提出したところ、審査でかなり評価されたんです。マイナーな事業分野だけに、継続して活動していることを示す材料としてかなり有効だったようですね。
──今後の目標を教えてください。
セミナーなどで一般のお客さまとお話すると、「きれいになれる鍼灸なら受けてみたい」という声を本当によく聞きます。裏を返せば、それだけ潜在的なニーズがあるという証拠。美容鍼灸を一人でも多くの人に知ってもらい、その人本来の美しさを引き出すお手伝いをしていきたいですね。
ただ、一人でできることには限界があります。仲間と協力しながら業界全体を盛り上げていくことも、使命だと思っています。
折橋さんが美容鍼灸で成功した秘訣
1.時にはプライドを捨て分からないことを周囲に聞く
2.鍼灸という伝統的な技術に女性のニーズを上手く融合
3.仲間と協力しながら業界の発展につながる活動を行なう
取材・文/池田 泉
撮影/高橋 進