目指すのは「自分が通いたい店」!2カ月後まで予約がとれないサロンに 美容師・兄さん

ヘアカラーの毛束検証をインスタグラムで発信し、フォロワー数1万人と人気を集めている美容師の兄(あに)さん。前編ではその運用方法についてお話を伺いました。驚いたのが、インスタで発信を始めたのは信頼できる美容師とつながり、転居したお客さまを紹介できるように考えた結果とのこと。インスタ発信では自分の検証結果を正解だと言い切らず、一美容師の見解として伝えることで、みんなで勉強をしていく姿勢を大切にしているそうです。

後編では2カ月先まで予約がとれないという兄さんに、その秘密を伺いました。ポイントとなっているのは、自分がどんなサロンだったら通いたいかを考えたお店作り。指名してくれるお客さまは自分と似ているという考えから、自分が居心地のよいサロンを実現し、お客さまに支持されてきたそうです。また指名をしてもらっても担当する時間が10分という形態に疑問があったという兄さんは、独立してマンツーマン施術ができるようにし、ひとりひとりのお客さまと向き合える時間を大切にしているといいます。

今回お話を聞いたのは…

兄さん

6年前の独立を機に、ヘアカラーについて研究を始める。2年前から「兄」名義のインスタアカウントを開設し、毛束検証の結果を発信。これが多くの美容師の話題を呼び、フォロワー数が1万人を超える。現在は雑誌「経営とサイエンス」に掲載されるなど、メディア出演も多数。弟と共同経営するサロンは、2カ月後まで予約がとれないほど人気を集めている。

兄さんのInstagram:@anino_boyakilab

指名してくれるお客さまとは考え方が似てくる。自分が行きたいと思うサロンを目指して

高いヘアカラー技術と丁寧な施術で人気を集める兄さん

――2カ月先まで予約がとれないほど人気を集めているとお聞きしました。心がけてきたことはどんなことでしょうか?

単純に自分だったらどういうお店に行きたいかを考えて、形にしてきました。長い付き合いになってくる美容師さんとお客さんの考え方は似てくると思っていて。いや、もしかしたら似た考え方だからこそ長い付き合いになるのかもしれませんが(笑)、とにかく自分が通いたいサロンにして、自分が接してほしいように接していれば、お客さまにはささると思うんです。

――具体的にはどんなことをやられてきたのですか?

まるで行きつけの居酒屋のように、行くのが楽しみな場所にしてきました。美容師とお客さまという関係より、もう少し深い、楽しいお付き合いができたらいいなと思っています。そのためにお客さまがいらっしゃったら、ひと言添えたお手紙をお渡しするようにしてきました。以前にいらしたときに旅行に行くというお話を聞いたら、「旅行、いかがでしたか?」と書いているくらいの手紙なのですが、喜んでくださる方が多いです。

あとはアシスタントを入れずにマンツーマン施術にすることに一番こだわってきました。以前働いていたサロンは割と大きなところだったので、人気者になればなるほど、せっかく指名をしていただいてもお客さまと接する時間がなくなるというジレンマがあったんです。独立後はマンツーマン施術で、最初から最後まで担当できるようにしました。

切りたい長さは聞かない。悩みやなりたい雰囲気からヘアスタイルを提案

兄さんが施術したインナーカラー。繊細なグラデーションも見事に表現する

――インスタの発信を見ていてもそうですが、たとえ話がとても上手ですよね。何か訓練をされてきたのでしょうか?

訓練はしていないですけど(笑)、元々お客さまに対して美容の話を簡単に伝えたいという思いがあったので、試行錯誤しているうちに身についたのかもしれません。メニューの話をされてもよくわからないという方も多いと思うんです。少しでもわかりやすく、納得してメニューを受けてもらえるよう、考えた結果です。

――サロンワークで心がけてきたことはありますか?

どれくらい切りますか?とは聞かないようにしています。どんな感じになりたいか、何に困っているかをヒアリングすることが多いです。ここが重い、ボリュームが出ない、ここがはねるなど悩みを聞いてから、解決する方法を提案しますね。提案をしたときにやってくれるかどうかは、それまで積み上げてきた信頼関係に比例すると思います。長いお客さまになると提案通りにやってくださることが多いです。

よくDMで「カラーをしたいと言ってくれるお客さんが少ない」と相談されることがあるのですが、お客さまの悩みやなりたい雰囲気を聞いて提案するといいですよ、とお伝えするんです。たとえば髪が重たいので軽くしたいというお客さまがいたら、カットするよりカラーをして明るくしてあげたほうが軽い印象になります。メニューをやってもらうかどうかではなくて、お客さまがなりたい状態からメニューを逆算して提案していくことが大切なのかなと思います

カラーが上手になりたいのであれば、鉄則は自分の基準をつくること

インスタには、カラーのことで悩む美容師さんからよくDMが届くそう

――カラーが苦手な方に何かアドバイスはありますか?

基準を作りましょうという話をいつもしています。カラー剤はいろんな薬剤を混ぜ合わせて作っていると思うのですが、自分で基準をつかむ前にいろいろ変えてしまうから、何で失敗したか、わからなくなってしまうと思うんです。カレー作りで例えるとまずはベースとなるルーを決める。ククレカレーならククレカレー、ボンカレーならボンカレーという風に決めて、どんな味なのかを知る。そのうえで、どんな隠し味を入れるともっとおいしくなるかを考えていくといいと思うんです。それを最初からククレカレーとボンカレーをまぜてしまうからわけがわからなくなってしまうのではないかと。

カラーの話に置き換えると、ベースとなるカラー材を決めたら、どんなお客さまにも20分置くと決める。そうしたら「このカラー剤ではこの色になる」という基準がわかると思うんです。それを人によって10分にしたり30分にしたり、基準をいろいろ変えてしまうから、何が良くなかったのかを自分でわからなくなってしまう。自分のなかに基準があれば薬の設定がよくなかったのか、放置した時間が短かったのか、薬をまぜてしまったからなのか、髪質にあってなかったからなのか、失敗の原因を自分で分析して改善できるようになります

――今後の目標を教えてください。

対面での講習会をもっと増やしていきたいですね。いっぱい人数を集めて、みんなで毛束を染めて検証したりしていきたいと思っています。みんなで学んでいったほうが効率もいいし、楽しいと思えるかなと。ひとりで毛束検証をやっているとき、本当に孤独だったので(笑)。

あとは今のインスタアカウントを運用している目的でもあるのですが、自分くらいの美容師でもすごく楽しんでいるということを知ってもらいたいなと思っています。カリスマ美容師じゃないですし、カラーの知識はあるけど、ものすごくうまいというわけでもない。それでも自分のことを求めてくれるお客さまはたくさんいますし、ここ何年も特別に集客をしなくても2カ月先まで予約がとれないという状態を続けることができました。美容師の仕事の楽しさや、可能性が少しでも広がったらいいですね。


予約のとれないサロンになった3つの理由

兄さんのサロンが予約がとれないほど人気となった理由を伺うと、以下の3つでした。

1.自分が行きたいサロン作りを心がけてきた

2.マンツーマンで、丁寧な施術を行ってきた

3.悩みやなりたい雰囲気から、スタイルを提案してきた

兄さんのお話を聞いていて感じたのは、お客さまに対してもほかの美容師さんに対しても驚くほど真摯に対応する姿勢。取材中もたとえ話を交えながら丁寧に説明してくださり、その姿勢が多くのフォロワーやお客さまから信頼を集めていると感じました。美容師としてもっと活躍したい方はぜひ参考にしてみてくださいね!

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