【ネイリストあるある】独立を応援してもらうには、日頃からの「礼儀」が大切【ヨシネイル代表・郭かよさん】#1
美容業界でよくあるお悩みや課題にフォーカスする本企画。今回は、サロン経営者の頭の中を探ります。取材させていただいたのは、アニメ好きがこぞって通うネイルサロン「ヨシネイル」の代表・郭かよさんです。
アニメの街として業界の認知度がまだ低かった池袋に早くに狙いをつけ、世間の流れを慎重に読んだ上で、ベストなタイミングで「痛ネイル」を打ち出すことに成功。驚異のリピート率を誇り、2021年に2号店を同じく池袋にオープンしました。
前編では、円満退社・集客・店舗拡大のコツを教えていただきました。
教えてくれたのは…
「ヨシネイル」代表 郭かよさん
大学卒業後にトータルビューティサロンに就職し、ネイルだけでなくヘアメイクも経験。4年後に池袋東口に「ヨシネイル」をオープン。数年かけて「モチーフネイル・痛ネイル」のブランドを築き、今ではリピート率9割以上。2021年に2号店を池袋西口にオープン。
ネイリストの独立:日頃から上司・同僚には礼儀をつくしておく。そうすれば退職時も応援してもらえる
――これまでの経歴を教えてください。
大学と同時に美容系のダブルスクールに通い、卒業後はトータルビューティサロンに就職しました。ネイルだけでなく、ブライダルのヘアメイク、事務仕事なども経験し、4年ほど勤めました。その後独立し、「ヨシネイル」を構えました。今年で11年目になります。
――なぜ独立を?
前のサロンはブライダルをやっていたこともあり、ネイルもシンプルめなデザインが多かったんです。私はもともと絵を描くのが好きで、モチーフネイルなどもやってみたいと思い、独立を選択しました。
――独立する際、円満退社はできましたか?
そうですね。独立する意思を伝えたところ、「頑張ってね!」とすごく応援してもらえました。
小さい頃から親に厳しく育てられたこともあり、前の会社に勤めているときも社長にお歳暮を毎年送っていたんです。もちろん感謝の気持ちとして。社長からも「お歳暮をくれたスタッフは君がはじめてだよ」と言われました。そういう礼儀を大事にしてきたからか、すごく可愛がってもらいましたし、退職時にも応援してもらえたのかなと思います。自分がしてきたことは自分に返ってくるんだなと。
――では、経営者の立場で見たとき、辞め方が綺麗だと思ったスタッフさんはいましたか?
うちの初期メンバーはみんなしっかりしている子たちで、お客様への挨拶もきちんとしていましたね。指名客はもちろん、指名客ではないお客様に対しても感謝の気持ちとしてプチギフトを用意していました。しかもメッセージつきで。そういう風にお客様にもきれいに引継ぎをして辞めていくスタッフはありがたいなと。
ネイリストの集客:価格競争から降り、いち早く「痛ネイル」を打ち出したことで差別化に成功
――開業準備で一番苦労したことは何ですか?
やっぱりテナント探しですね。
路面店は賃料が高く手が出せなかったのでマンションの一室を探していたのですが、ネイル業界が今ほど認知されてなかったため、不動産屋も「ネイルサロンって何ですか?」みたいな反応で(笑)。大手のチェーン店だったら違ったかもしれませんが、全然テナントを貸してもらえませんでしたね。不動産屋だけでも10件以上回ったと思います。
――マンションの一室に構えて、最初は集客できましたか?
開業当時はまだ路面店がほとんど。マンションの一室や雑居ビルで営むサロンは少なくて、お客様にも「路面店だと思ってた」と言われることが多かったです。
オープン当初はやはり苦戦し、池袋駅前でよくビラ配りをしていました。クーポンサイトなどの媒体に掲載させてもらうなどし、世間的に徐々にネット予約が当たり前になったことでやっと集客が安定した感じです。
――「モチーフネイル」や「痛ネイル」は当初から打ち出していたのでしょうか?
いえ、もともとはアートが得意なサロンとして一般的なデザインを打ち出していました。自分の技術力もまだ未熟でしたし、お客様が定着していないうちからモチーフネイルを打ち出すのは難しいと思っていましたから。
でも、今後もっとアニメ系が盛り上がるだろうという予感があったので、アニメショップの本店がある池袋を選んだんです。ちなみに当時、池袋は大手サロンにまだ目をつけられていなかったんですよ。
――どこでシフトを?
スタッフを雇い、集客が安定してきた2〜3年目くらいのときです。ちょうどその頃はネイルブームの到来で、あちこちにネイルサロンができはじめていたんですね。美容業界全体的にそうだったと思いますが、価格競争になってしまっていて、ワンカラーやグラデーションカラーを2000円台で出していた時代でした。
でも、それだと「安いだけなら、別にうちじゃなくても良いよね?」となるわけで。スタッフと話し合い、試しにもともとやりたかったモチーフネイルや痛ネイルを安い価格で打ち出してみようか、となったんです。そうしたら大当たり(笑)。
――差別化に成功したわけですね。
池袋も女性が集まるような街に変わっていき、アニメショップもその後どんどん拡大し、アニメの街として定着していったことも勝因の一つに。おそらく、価格競争に乗って安さ勝負をしていたらサロンを維持できなかったと思います。
ネイリストの店舗拡大:社長がいなくてもサボらない「信頼関係」を日頃から築いておく
――2021年に2店舗目をオープンされましたね。
おかげさまで1号店が予約困難な状況になったことと、コロナ禍が落ち着き、「ネイルをしたい」という人がまた増えていくだろうと予想して。あと、開業10年目の節目ということで2号店を出すのに良いタイミングかなと思って。
そんなときに、「一緒に働きたい」とうちに応募してきてくれた子たちがいて、面接時に「じゃあすぐにでも出店します! 急いでテナント探しますから」と約束したんです。そのときに入社してくれた子たちが今の西口店のスタッフです。
――スタッフの採用ありきの出店だったのですね。同じく池袋に構えたのにはどんな理由が?
店舗が近ければヘルプにも行きやすいですし、池袋と言っても西口と東口とでは客層が全然違うんですよ。どちらかというと東口の方が若い層が多く、西口は落ち着いた年代の方が多いです。西口店も東口店も痛ネイルのオーダーは多いですけどね。
――2店舗を統率する上でのコツはありますか?
私は今、スクールの準備や他の事業展開で忙しく、東口店にも西口店にもいない間、サロンワークはスタッフに丸投げ状態(笑)。でもうちの子たちはみんな優秀で自慢できるスタッフばかりで、しっかりやっていただいています。
――丸投げできるのは、スタッフさんを信頼してるからこそですよね。
そうですね。自分が考えていることって相手にも伝染するので、「信頼されていないんだな」とスタッフに思われたら終わりなんです。
逆に、私自身もスタッフたちに信頼してもらえているから、事業展開をしていけていると思います。一人だと何もできないので、本当にみんなに感謝しかないです。
――スタッフさんの信頼を得るために大事なこととは?
誰よりも働く、ですね。
自慢話ではありませんが、開業して3年間は1日も休まず、毎日出勤していたんです。スタッフはもちろん8時間勤務ですが、自分は10時〜21時までずっとサロンに立っていました。週休2日が可能になったのはここ最近です。その休日も打ち合わせなどを行っているため、実質働きっぱなしなんですけど(苦笑)。
――そんな社長の背中を見てたら、スタッフもついて行きます!となりますよね。
「ついて行きます」というより、上に立つ人間がサボっていれば下の人間もサボりますからね。自分がきちんと働いていれば、スタッフたちも「社長がこんなに頑張っているんだったら、自分も頑張ろう」と思ってくれるんじゃないかなと。
別に、自分と同じくらい働きなさいとスタッフに強制するつもりはないですよ。休みはきちんと取ってもらうのがうちのやり方ですから。
ネイルサロン経営のあるある:独立・集客・店舗拡大のコツ
1.日頃から礼儀を大事にしておく
2.安さ勝負ではなく、唯一無二の強みを打ち出す
3.自分がいなくても店が回るよう、スタッフと日頃から信頼関係を築いておく
「うちのスタッフはほんとしっかりしているんです」とよく口にされていた郭さん。スタッフさんをとても信頼していることが伝わってくる取材でした。後編では、採用で重視していることやスタッフのキャリアパスについて伺います。
取材・文/佐藤咲稀(レ・キャトル)
撮影/喜多二三雄