“ゆる~く”でも“コツコツ”と続けられたのは姉妹だからこそ。互いに補い合う“ゆるふわ”経営が長く続ける秘訣!【ピュビケアサロン白金台 得田由美子さん#2】
前編に続いて、デリケートゾーン専門のサロン『ピュビケアサロン白金台』オーナーのおひとり、得田由美子さんのお話しをお届けします。フェムケアという言葉すらない15年前に、なぜデリケートゾーンに特化したサロンを開設したのか、認知されていなかったパーツのケアがここまで認知されるようになったきっかけなどを伺いました。
後編では、デリケートゾーンの脱毛だけでなく美容と健康にまで施術の範囲を広げたいきさつ、女性経営者だからこそ受ける困難と乗り越え方、これからの展望などをご紹介します。
お話しを伺ったのは…
ピュビケアサロン白金台 オーナー
得田由美子さん
大学卒業後、出版社、広告代理店などマスコミ業界を渡り歩く。外資系コンサルティング企業に勤務していた妹の美奈子さんとともに、2009年白金台にデリケートゾーン専門サロンを開く。美奈子さんは経営全般を、由美子さんはサロンメニューのコンテンツや商品開発を担当している。
天災・トラブルなどの嵐を乗り越えられたのは姉妹の絆があったからこそ!
――起業のパートナーに妹の美奈子さんを選んだのはなぜですか?
4歳違いの妹とは普段から仲がよかったんです。ただ性格はぜんぜん違って、それぞれの得意分野も違います。逆にそれがよかったのだと思います。パートナーが見つからなかったら、私ひとりでも起業していたと思いますが、ここまで続けられたかどうか…。東日本大震災やコロナなど天災があったり、ビジネスが上手くいかなくてトラブルになったり、いろいろな嵐がありました。私だけだったら、乗り越えられなかったと思います。
――どんなトラブルだったんですか?
経営者が女性だとなめられることが多いんですよね。契約書を交わしたのにきちんと守ってくれない会社がありました。急に発注件数が増えたな…と思った矢先に計画倒産されたこともあります。
――ひどいですね。今はどんな対策を取っていますか?
契約を交わすときは顧問弁護士を通しています。それ以来、トラブルは少なくなりました。
創業当初は、ただでさえ女性経営者はなめられているのに、デリケートゾーンに特化した私たちのサロンは「ものすごい下品」な職業という差別を感じました。女性が女性のためにする仕事なんだから、もう男性とはいっさい仕事をしない!と思ったほどです。
これから起業する方は、いきなり顧問弁護士を雇うのは大変だと思うので、リーガルチェックができるアプリなどを利用するといいですよ。そうすれば不利な契約を結ばなくて済みます。今はITスキルがあるだけで、お金をかけずに済むので便利ですよね。
――姉妹だと率直に意見が言い合える反面、言い過ぎてしまって収拾が付かなくなることはありませんか?
パートナーが友だちや知り合いでしたら亀裂が入ってしまうかもしれませんが、私たちの間では問題はないですね。妹だからこそ、姉妹の結束が強くなったと思います。
確かにずっと一緒に仕事をしていれば、お互いに「もうやってられない!」と思うことはあります。幸いなことに、そのタイミングがお互いにズレていたので(笑)、決裂することはありませんでした。
サロンをオープンしたばかりのとき、起業について取材を受けたんです。そのとき「ゆるふわ起業」と書かれたときは、「なんてぴったりなネーミング!」と思いました。資金調達のため投資家にプレゼンする事業計画があるわけでもなく、ただやりたいことをやっているだけで、自分たちの思惑に合わせて事業を広げたり引き締めたりできる。いい表現だと思いました。
お客さまの不調に寄り添うために鍼灸メニューを追加
――ブラジリアンワックスから始まって、今はどんなメニューがありますか?
レーザー脱毛、レーザースキンケア、骨盤底筋マッサージそして鍼灸治療です。どのメニューもお客さまのお悩みに応えるために始めました。サロンでは他人には見せないプライベートな部分を見せている関係性があるからこそ、人には相談しにくいことも話しやすいのだと思います。そのお悩みが商品開発にもつながっているんですよ。
――お客さまの相談はどんなことがあるんですか?
乾燥や蒸れ、ニオイといったお悩みを、どうケアしていいのか分からない…というご相談が多いですね。デリケートゾーンは肌よりもデリケートなうえに吸収率が高く、いろいろな成分を吸収してしまうんです。身体用のボディソープは刺激が強すぎるので、専用の洗浄料を開発しました。ところが当初はリキッド状だったので、洗い残しが多く見られたんです。手軽にしかも完璧に洗えるように、泡タイプの洗浄料に変更しました。
――鍼灸のメニューが加わったきっかけは何ですか?
お腹が冷えているお客さまが多くて、冷えている方はだいたい子宮内膜症や子宮筋腫など婦人科系の悩みを抱えていらっしゃるんです。冷えの問題を和らげたくて、鍼灸を取り入れました。閉経前後にホルモンのバランスが乱れている方にも鍼灸はよく効きます。いろいろな症状を見ているだけに、この方はこんなお悩みを抱えていらっしゃるのでは…と推察できるようになりました。
――お客さまと一緒に成長なさっているんですね。
このお仕事は、幸いにもお客さまから「ありがとう」とおしゃっていただける。感謝していただけるのがモチベーションにつながります。どんなに大変なことがあっても、「ありがとう」のひと言で救われます。
――創業から今までいろいろなことを乗り越えて、今なお続けていらっしゃる秘訣は何でしょうか?
誠実であることですね。施術の後、お帰りになるお客さまの表情で満足していただけたかどうか分かります。満足していただけたらなら、次につながりますから。サロンのお客さまに対してはもちろんですが、製品を購入してくださる方にも必要です。ウソをつかない、誇大広告をしない、できないことはやらない、お客さまがイヤがることはしない。これが大事だと思います。
――人材の確保に頭を抱えるサロン経営者が多いようです。その問題はありますか?
お客さまも大事ですが、スタッフも大事。スタッフの働きやすさを考えるようにしています。女性はライフステージによって働き方が変わるもの。子育てに介護…と、その人によって働きやすさが違うので、それぞれの人生が心地よくなるようにお手伝いするつもりでいます。
――これからの事業展開を教えてください。
オーガニック成分しか配合していない「ピュビケアオーガニック」をこの夏、フルリニューアルしました。さらに今、開発中のコスメがあります。オリジナルブランド、「ピュビケア」のセサミオイルです。乾燥が気になる方の施術に使用できればと考えています。オイルだけでなく、婦人科系のヘルスケア全般をケアするものをどんどん開発したいですね。ゆくゆくは海外にも販路を広げられればと思っています。
――これから起業を考えている方に、アドバイスをお願いします。
必要なのは始める勇気です。とにかく動くことが大事です。その際にITリテラシーを高めておくことをお勧めします。マーケティングでもファイナンスでも、スキルがあればコストをかけずにできますから。
「これをやりたい」という思いがある人は続けられます。起業すると、自分でやらなくてはいけないことがどんどん増えるもの。やり続けるには、自分が好きなこと、やりたいことでなくては続けられません。誰かに喜んでもらえることも、続けるモチベーションになります。美容の仕事はお客さまに喜んでいただけて、その反応をダイレクトに受け取れる珍しい業種です。しかも、一生続けられる手に職のある仕事。自宅でもできるし、育児をしながらでもできる。リタイアしてからでもできます。年齢に関係なく続けられるので、どんどん参入してください。
老舗サロンと認められるまで事業を続ける3つのポイント
1.お客さまの悩みに寄り添い、施術や製品で応えること
2.お客さまや製品に対して誠実であること
3.スタッフの人生が心地よくなるようにサポートすること
デリケートゾーンケアに特化したピュビケアサロン白金台。女性のQOLを高めるための脱毛に始まり、さまざまな症状を和らげる鍼灸、介護脱毛など女性の一生に寄り添っています。ちょっとした不調にも真摯に向き合ってくれる姿勢こそが、15年にわたって広く長く愛されている秘訣なのかもしれません。
撮影/古谷利幸(F-REXon)