コロナ禍でも来店ペースが崩れない「エイジングケアサロン」で集客に成功「SENSE beauty salon」
美容業界に大きな打撃をもたらしたコロナ禍。閉店に追い込まれたお店も多い一方で、コロナ禍を好機として、店舗拡大に成功している人もいます。自由が丘を中心に4店舗を経営する木田昌吾さんもそのひとりです。
前編では、木田さんの転機になったという「SENSE beauty salon」の経営について伺います。コロナ禍になる前に新卒5人の採用を決めており、コロナ禍の真っ只中にオープンした「SENSE beauty salon」。ミーティングの時間を多くとりマネジメントを強化したことと、どんな状況でも来店ペースが崩れないエイジングケアサロンを打ち出したことで経営に成功したといいます。
今回、お話を伺ったのは…
木田昌吾さん
美容師/「keep hair design」ほか3店舗のオーナー
大手ヘアサロン勤務を経て、父親が経営していた「Hair Boutique KEEP」を継承する形で2013年3月に「keep hair design」をオープン。2018年3月に「THREE by KEEP尾山台店」、2020年9月に「SENSE beauty salon自由化丘」、2023年5月に FC店「カラープラス旗の台店」と、10年で4店舗を出店。また2020年「髪が女のすべてを決める」を出版するなど、多岐にわたって活躍している。
マネジメント強化でコロナ禍の出店に成功
――10年で4店舗を出店されていますね。店舗を拡大している理由はどこにありますか?
出店ペースはそんなに早い方ではありませんが、コロナ禍に3店舗目の出店に成功して、今後は1年に1店舗展開する準備をしています。3店舗目の出店のころは、新卒を5名採用することが決まっていたなかで4月に緊急事態宣言に入ってしまい、一時はどうなることかと思ったのですが、この出店に成功したことが大きな飛躍につながったと思います。
――具体的にはどのようなことをされたのでしょうか?
時間だけはたくさんあったので、マネジメントに時間を割くことにしました。具体的には、店長教育、組織やルール作りをしたほか、ミーティングの時間を取って、抽象的な議題についてみんなで考えたり、ディスカッションする時間も作りました。たとえばスタッフがどんな理由で美容師になって、どんなことを成し遂げたいか、美容師としてどう輝きたいかなど、抽象度の高い問いをたくさん立てました。正解はとくにないので、スタッフも考え続けることになります。それまでは日々の業務に忙殺されていましたが、自分はどうありたいか、何を目指すかということを意識するきっかけにもなったと思います。
エイジングケアという普遍的な打ち出しの可能性
――ほかにも何か取り組んだことはありましたか?
もうひとつは、縮毛矯正や白髪などエイジングケアに特化した打ち出しをして、集客に成功しました。そのきっかけとなったのが、マーケティングの勉強会に参加して、「LTV」について考え始めたことです。LTVとはライフタイムバリューの略で、「顧客生涯価値」という意味。顧客が一生のうちに自社にどれくらいの利益をもたらしてくれるかを示す指標のことです。前の店舗に関してはLTVが決して高くはなく、これをあげるためにはどうしたらいいかを考えるようになりました。
――そこからなぜエイジングケアに特化するようになったのでしょうか?
流行りに左右されない普遍的なものを打ち出したほうがいいというアドバイスを受けたからです。くせ毛で悩んでいる人はこの先いなくなりませんし、高齢化で白髪に悩む人も増えていくと考えました。
この頃、プレイヤーではなく経営者としての仕事に集中しようと思っていたので、1週間くらい漫画喫茶にこもって、自社のLP(ランディングページ、検索結果や広告などを経由して訪問者が最初にアクセスするページのこと)を作りました。ホームページの開設の仕方も分からなかったので、ゼロからすべて学んで。その結果、髪に悩みを持つ方はコロナ禍でも来店してくれたので、売上をキープすることができました。Googleの口コミでは4.9という評価を獲得しており、エイジングケアという分野では地域ナンバーワンになることができたんです。
スタッフが活躍できる場を用意できれば、成功すると信じて
――木田さんは3店舗目から、経営に集中しようと思われたんですね。
そうですね、あまり現場にいかなくなりました。1店舗目のときは完全にプレイングマネージャーという感じでしたし、2店舗目もプレイヤーが7、マネージャーが3くらいの割合でしたが、3店舗目ではその割合が逆転。父の代から受け継いでいるお客さまや一部紹介のお客さまを除いて、予約の枠を切ってしまったんです。先にもうプレイヤーではない状態を作ってしまって、そこからは経営に集中するようになりました。自分で自分を追い詰めるというか(笑)。
2店舗目を出店したころは、シャンプーソムリエやフォトグラファーなど色々なことに手を出していて、今から考えてみると経営に向き合うことが怖かったのかもしれません。3店舗目からは経営の面白さを感じられるようにもなりました。また僕が店にいないことで、スタッフの成長にもつながったと思っています。
――コロナ禍で時間をとれたことが、飛躍につながったようですね。
あとから振り返ってみると、ですね。渦中にいたときは、ただただ必死でした。ミーティングやマネジメントの時間をとっていたのも、先の見えないなかでも、スタッフの心をつなぎとめたいという一心だったと思います。一方で、スタッフが成長できる新店舗が用意ができれば、成功するはずという根拠のない自信もありました。スタッフが中抜けしてしまう一番大きな要因は、活躍する場がないからだと考えていたからです。不安ななかでついてきてくれた仲間には本当に感謝しています。
「SENSE beauty salon」がコロナ禍の出店でも成功した3つのポイント
1.マネジメントに時間をさき、内部強化を行った
2.流行に左右されないエイジングケアサロンを打ち出し、集客に成功した
3.店舗運営をスタッフに任せ、経営に集中した
後編では、木田さんが実践してきた強い組織作りについて伺います。業務委託サロンが増え、正社員として美容師を雇用するのが難しくなっていますが、木田さんが大切にしているのは理念について正しく伝え、スタッフの意見を聞くことだそう。また接客の柱を「元気、感動、つながり」の3つに置いている木田さん。社内ルールを作ったことで、やるべきことも明確になり、お客さまのリピートにもつながったといいます。