趣味の会話だけでは終わらせない。バーのマスターくらいの立ち位置を目指す「e-Sugar」佐藤けいすけさん

2023年8月、渋谷にe-Sportsに特化した美容室「e-Sugar」をオープンさせた佐藤けいすけさん。前編では、なぜそのようなお店を開いたのかを伺いました。

後編ではなぜ佐藤さんのお客さまはリピートが多いのかを掘り下げます。好きなことでつながっているお客さまとその話題で盛り上がるのだろうと思っていたら、意外にも大切にしていることは、「趣味の話だけに終始しないこと」だという佐藤さん。またお客さまとの距離は遠すぎず、近すぎず、目指すのはバーのマスターとお客さまの関係性だといいます。

今回、お話を伺ったのは…

佐藤けいすけさん

美容師/「e-Sugar」代表

都内一店舗を経て2023年8月、渋谷にe-Sportsに特化した美容室「e-Sugar」を開業。顧客の多くを、ゲーム関係者、趣味がゲームやアニメの人、2.5次元の舞台俳優とそのファンなどが占める。e-Sportsの大会やイベントのヘアメイクも担当している。

twitter@keeeeeeeeisk

既存のお客さまに満足してもらうことを最優先に

「e-Sugar」の店内。左側が黒を基調とした事務所、右側が白を基調としたサロンになっている

――ゲームや、アニメという共通の趣味があるとはいえ、お客さまがリピートしてくれるかはまた別の問題だと思います。お客さまと接するなかで心がけてきたことはありますか?

お客さまに高い満足度を提供し、長く通ってもらうことを心がけてきました。前編でもお話した通り、このサロンには一切の宣伝広告費はかけていないため、プライベートサロンとなっても、以前のサロン勤めしていたときのカット料金をキープできています。お客さまに満足してもらうために、金額は変えたくないと思ってやったことでした。

マンツーマン施術で完全予約制にしているので、看板も出していません。ふらっと見て、入ってきても僕が対応できないこともあるし、お客さまとの時間を圧迫してしまうことになると思うので。

――今通ってくださるお客さまの満足度をあげることが大事なんですね。

はい。それが経営面では最優先の項目だと思っています。満足してくだされば、勝手にリピートや紹介につながっていくと思うので。

あとは居心地のいい空間を叶えること。マンツーマンでほかのお客さまや美容師がいないことがまず大きなプラスですし、タブレットで動画を見るときも音を出せるのがいいといってもらうことが多いです。なかにはUber Eatsを頼んで食べている人も(笑)。内装にもこだわりました。シャンプー台は完全に体が横になって寝ることができてヘッドスパができるようなものにし、曲線をいかした内装にするなど圧迫感をなくすことを心がけました。

距離が近すぎても遠すぎてもNG。長く通ってもらえる距離感を大切に

お客さまとの程よい距離感を大切にしているという佐藤さん

――ゲームやアニメが好きな人が多いということですが、やはり会話はゲームやアニメの話題が多いのですか?

美容室に来ることを緊張する方も多いので、入り口はその方の好きなゲームやアニメの会話が中心ですが、その話題だけ終始しないようにしています

――それは意外ですね。

好きなことは取っかかりにしつつ、その方のもっとパーソナルな部分、人となりを知りたいと思って接しているし、僕も自分の好きなことや趣味以外にも、個人的な話をするようにしています。飲み屋さんとか、学校で知り合った人くらいの関係性を築きたいと思っていて。そうしないとそのゲームやアニメが好きではなくなったら、ここには来なくなってしまいますから。あとはプライベートサロンなので、僕の人間性を分かってもらうことが、安心して通ってもらえる要素の1つだと思っています。

――ではかなり近い関係性が理想だということですか?

でも近すぎても、あまり良くないんですよね。これは、前の会社の上司に教えてもらったことなのですが、近すぎると逆に話しづらいことが出てくる、だから適度な距離感を大事にしろと言われてきました。たとえるなら、バーのマスターとお客くらいの距離感。バーのマスターに愚痴れるのは、遠からず近からずの絶妙な距離感があるからだと思うんです。これくらいの関係性を理想にしています。だから僕は関係性によって変わってくる場合もありますが、お客さまが中学生や高校生でも絶対に敬語を使うし、入り口では美容師とお客さまという関係性を超えないようにしてきました。

友達のような関係をずっと築けるのなら問題はないのかもしれませんが、仲が良すぎると何かが起きたときに一気に関係性が崩れてしまうこともあると思うんです。絶妙な距離感を保つことが、お客さまが長く通ってくれるポイントだと思っています

e-Sportsをもっと盛り上げていきたい

佐藤さんが作った「e-Sugar」のロゴ。将来的にはe-Sportsチームを作ることを夢見ているそう

――施術の面で心がけていることはありますか?

「なりたい自分」を叶えることです。まずはお客さまがどうなりたいのかというニーズを引き出して、実現しています。

――ニーズを引き出すために、やられていることは?

その方の生活、趣味などをきちんとヒアリングすることです。たとえば普段はスタイリングをするか、美容室にどのくらいのスパンでくるのかなど美容面や、どんな仕事をしているのか。その生活のなかで邪魔にならないこと、次の来店まできれいな状態を保てるヘアスタイルを提案するようにしています。

――趣味について聞く理由は?

趣味によっても適した髪型は変わってきますよね。ゲームをやるっていうことだったら、前髪がかかると邪魔になるので、少し短めにしたり、スポーツが趣味な人だったら、汗をかくと思うので、軽くしたり。僕のお客さまは趣味でつながっている人も多いですが、技術の満足度はベースの部分だと思っています。それがなければ長く通ってもらうことは難しいのではないかと

――最後に今後の目標を教えてください。

「e-Sugar」をオープンしたことは通過点だと思っており、これからこの空間のなかでやりたいことがたくさんあります。たとえばオフィス空間の有効活用。プロジェクターをつけて、ゲームイベントのパブリックビューイングをしたり、レンタルスペースにしても面白いかなと。あとは、e-Sports関連の外部のお仕事を増やしていきたいので、このスペースでプロ選手のアーティスト写真が撮れるようにする構想もあります。せっかく独立して自分の箱を持てたので、面白いことをやっていきたいと思っています。

あとは夢物語のようなことなんですけど、将来的に自分のe-Sportsチームを作れたらいいなと思っています。そのためにこのお店のロゴも、僕が考えたのですが、e-Sportsのチームロゴを意識しており、ユニフォームのエンブレムみたいにできたらいいなと。e-Sports界隈はこれからもっと盛り上がっていくと思いますし、それに少しでも協力できたらいいなと思っています


佐藤さんが高いリピート率を維持する3つのポイント

1.宣伝広告費にお金をかけず、プライベートサロンになっても価格はあげない

1.適度な距離をとり、お客さまと何でも話してもらいやすい関係性を作る

3.お客さまのニーズを生活や趣味から引き出し、「なりたい自分」を叶える

佐藤さんにお話を聞いて感じたのは、とにかくお客さまに対するサービス精神が強いこと。趣味でつながるだけでなく、高い美容技術や居心地の良い空間を実現できているからこそ、お客さまの信頼を集めているのだと感じました。好きなことを仕事に活かしたい人はぜひ参考にしてみてくださいね。

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Salon Data

e-Sugar
住所:東京都渋谷区東1-26-32拓新ビル6F
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