一人ひとりが「楽しく自分らしく働けるサロン」を目指したい【nico…代表 溝口和也さん】#2
高田馬場、藤沢、札幌にて、仲間と共に3つのサロンを経営している溝口和也さん。一度は過労による体調不良で美容師の道を諦めるも、働き方を変えて復帰。回復後の活躍は目まぐるしく、プレイヤーを続けながら仲間とサロンを立ち上げます。
前編では、美容師としての再スタートをするまでの経緯、サロン開業を決意したきっかけを伺いました。後編では、プレイヤーをしている傍ら経営者としての顔も持つ溝口さんが、理想の働き方を目指して同期と立ち上げたサロン「nico..」ついて、その想いに迫ります。
お話を伺ったのは…
nico…代表 溝口和也さん
地元・北海道にある専門学校に進学し、卒業後は都内を拠点とした大手サロンに就職。本厚木のサロンに配属されたあと、下北沢へ異動したタイミングでヘアアレンジの仕事をスタート。過労による体調不良で、一度は休業するも業務委託契約にて美容師として復帰。その後は、仲間3人と共にサロン「nico..」を立ち上げ、現在は高田馬場、藤沢、札幌に展開中。
サロン「nico..」へかける想いを具現化し、スタッフと共により良い環境を目指す
内装のこだわりについても聞いてみました！「高田馬場のサロンはアンティーク調を意識した内装にしました。実は途中でSNSに投稿する作品撮りを行う都合上、わざと白いペンキを塗るようなリフォームも数回しているんです。おかげで写真映えが良いと好評ですよ（笑）」。と、溝口さん。
――サロン「nico..」のコンセプトを教えてください。
みんなが楽しく、自分らしく働けるようにという願いを込めています。そのためには、働き方も安定した収入も重要です。
――どのように実現しているのでしょうか？
「nico..」では、組織的に見るとほかのサロンと変わりないのですが、給与面はできるだけスタッフに還元できる仕組みにしました。5年目で5%ずつアップしたり、80人の指名がとれたら10%プラスにしたり。積極的に口コミを集めているスタッフにはまたプラスで…と柔軟に評価して個々の収入に対応しているんです。
これは、僕が業務委託の雇用形態で働いていたときの条件を反映したもの。デビュー当時はこのような働き方はなく、収入も上げられませんでした。過去の経験から後輩にはそういう思いをさせたくないと思い、業務委託契約として働いたときから導入しようとずっと考えていたことでした。
――開業にあたって、最初の場所を高田馬場にした理由は？
正直、場所にあんまりこだわりはなかったんです。僕は今まで本厚木、下北沢、ロンドンといろいろな場所で美容師として働きましたが、どこでやっても同じじゃないかと。そうなると、わざわざ激戦区の表参道でなくても良いよねってなったんです。
一つだけ「人が多く出入りするエリア」を条件に決めた場所が「高田馬場」。立地的に専門学校が多く、学生の流入が多いと見込んでの選択でした。
――経営者として、悩ましいと思うことはありますか？
できるだけみんなの生活が安定しながら楽しく働けるサロンにしたくて、給与面のことはもちろん、休みも取得しやすくするなど試行錯誤しましたが、それがかえってだらけやすい環境にもなっていると考えていて。あくまで一人ひとりが「楽しく働く」ために作った環境です。スタッフが根底にある意識を忘れないためにも、定期的なミーティングは欠かさずに行っています。
――社長の溝口さんと接する機会があるのはスタッフも安心なのでは。
そうだと良いですね。ただ、僕は常時サロンにいられるわけでもなくて。その代わりに、各サロンに僕の同期を含め、信頼できる幹部を配置しています。サロンで起こった問題や人間関係のもつれに対して、迅速に対応できるようにケアしておくべきだと思っているので、僕がいないときでも任せられるように組織作りにも力を入れました。
――スタッフやサロンを想っていることが伝わってきます。
経営者だけが得しているじゃんって思う会社は少なくないと思っていて。僕が大事にしている軸は、みんなが楽しくいられることです。自分だけが儲けてもつまらないじゃないですか。会社が元気でいるためにも、働くスタッフのモチベーションが低いと無理でしょう？ 代表者だけが気分が良い会社なんて、何のために頑張れば良いのか分からないと思うし、続かないと思うんです。
完全な利益度外視は無理だけど、会社を続けたい気持ちはある。できるだけみんなと長く一緒に働ける場所をこれからも守り続けていくつもりです。
効率の良さよりも大事なこと。これからもお客様ファーストな接客をしていきたい
溝口さんのプライベートでの過ごし方はというと…「ゴルフが趣味なんです。同じ経営者の先輩と定期的に会って楽しんでいます。経営者同士の視点での話し合いもできるので、趣味も仕事の話もどちらも共有できるのは息抜きになりますし、心強いです」。
――美容師として働く魅力とは、ずばり？
一人ひとりと長いお付き合いができるところでしょうか。家族ではないし友人でもないけど近くにいるし、その人の人生を知っているという不思議であたたかい関係性。そんなつながりを持っていられるところが、この仕事の魅力だと思うんです。
お客様にも、僕が思っているのと同じ気持ちでいてほしくて。こう思えるのは、過去の経験からなんです。
――過去の経験といいますと？
最初に働いていたサロンにいたとき、どうしても売上を達成することばかりに目がいってしまい、一人でも多くのお客様をさばくことだけを考えていたことがあったんですね。そんなとき、ご婦人でカラーリタッチのメニューを希望したお客様がいらっしゃって。ほかに担当していたお客様が複数人いて作業化してしまっている部分がありました。でも、そのご婦人にシャンプーしているとき「気持ち良いわ、ありがとう」と感謝の言葉をいただいたんです。効率を優先させてしまってあまり気持ちが込められていなかったにも関わらず、そんな言葉をかけてくれるなんてと、とても申し訳ない気持ちになりました。効率化より、もっと大事なことがあると気付かされた瞬間でした。
当たり前のことなのですが…こうした経験を重ねてきたことで、とにかくお客様が満足できているかが重要。全てのお客様に対して、丁寧な接客ができるように心がけています。
――溝口さんが慕われている理由が分かりました。今後、美容師になる人へアドバイスをお願いします！
まず、美容師を目指した時点で何かになりたいと思えた気持ちを褒めてあげてほしいです。
最初から何かになりたいなんてすごいことだと思うんですね。
そういう夢とかって成長するにつれて、大体忘れてしまうものなんです。それって僕自身にも言えることで。今後目指す方と一緒に、僕も「美容師になりたい！」と思ったときの気持ち、お客様やスタッフに気づきをもらったことを忘れずに進んでいきたいと思っています。
溝口さんの理想を叶えるサロン経営ができている3つの秘訣
1.自分にとって譲れない条件をもとに、選択をする
2.需要があるものに対して応える姿勢を持ち、積極的に取り組む
3.自分だけが良いのではダメ！ 客観的な視野を持つ
取材・文／東 菜々（レ・キャトル）
撮影／生駒由美
Salon Data
住所：東京都新宿区高田馬場４丁目１１−９
電話：03-6279-1245
