個々が自由に能力を活かせるマネジメントを設計『SOCO』
スタッフが自由に働きやすい環境を作り、他にはない付加価値をお店に与えるために日々経営を学んでいる『SOCO』の関山さん。後編の今回は、そんな関山さんの考える「自由と自立」を両立させた働き方をうかがいました。
型を破り、今までにない自由な働き方をスタッフに提示したい
――スタッフさんのモチベーションを保つためにされていることはなんですか?
「したい、と思っていることを自由にできる環境を用意することによって、より上を目指そうとスタッフが自発的に思えるようにしています。美容師は職人の業界なので、規律がかなり厳しいお店もなかにはあるわけです。だけど制度を作ったり、上が発破をかけたりして人のモチベーションを上げるには限界があると僕は思っています。工学的に分析しある程度コントロールできる分野はありますが、人の情動はそう簡単にはいかない。そこで、何か結果を出してもらうには、本人たちの自由意思によってモチベーションをコントロールできる環境を作ることが大事だと考えています。たとえば作品作りとして自分の世界観を撮影で表現するにしても、うちは店のリソースをなんでも自由に使っていいことにしています」
――どの立場にいても自由に作品撮りをできるということでしょうか?
「ええ、作品撮りはスタイリストにならないとさせてもらえないお店もあるのですが、うちではそういった決まりを作らないようにしています。もちろん、自由と言ってもただ好きなことをやらせっぱなしにして放っておいては意味がないので、フィードバックは必ずするようにしていますよ。たとえば撮影した作品をスタッフがSNSで発信し、ファンが増えることで本人の売上げが増えれば成功です。だけど何も結果が得られなければ、その撮影は自己満足で終わってしまう。“自由と自立”は常にセットです。自由に好きなことをしたうえで、社会人として責任を持って結果を出してもらうことを重要視しています」
――一緒に働く人を探すうえで、何を大切にされていますか?
「最も重要視しているのは、ありきたりかもしれませんが“性格”です。ある本で読んだのですが、アメリカで業績を上げている企業を比較検証したところ、優良企業は人を採用するにあたって何よりも性格を重視していたそうです。実際、美容師の世界においても、職業上の能力は入社してからでも伸ばせると思っています。だけど人の仕事観や人生観、そういった根本的な部分を育て直すのは難しい。僕は何よりも情熱がある人と働きたいと思っているので、こちらが用意した環境を生かして自ら成長してくれるような人だと最高ですね。実際今いるスタッフたちもみんな本当にモチベーションが高く、お店に関することを自分ごととして捉えて日々動いてくれています」
――関山さんのこれからの目標を教えていただけますか?
「組織の責任者として立つということは、お店に所属しているスタッフ全員のキャリアに責任を持つということ。なので、スタッフたちがどれだけキャリアをこのお店で伸ばせるかが重要になってくるんですよね。美容師はまずアシスタントを経てスタイリストになり、店長になって、どんどんステップアップをしていきます。そう考えると、基本的にはお店を拡大していかないとスタッフたちの次のキャリアを用意してあげられないんです。なので1人ひとりがひとつ上の仕事の領域を常に目指せるように、組織を大きくできたらと思っています。そしてこれは、会社を運営するうえでの本質ではないでしょうか。僕がトップとしてこのお店を運営している理由は、僕が豊かになるためではありません。スタッフが自分の可能性にチャレンジしていける環境を用意し、社会の公器として『SOCO』がたくさんのお客さまに必要とされるお店にするためなんです。結果を出し続けることができる仕組みを作り、利益が上がればリスクを取り、次に向けて投入する。そうることでさらにたくさんの人から必要とされるお店にする。このサイクルを回し続けることが最も重要だと考えています。
そのためにも、今後はプレイヤーとしての比率を徐々に減らしていき、経営を中心に動くつもりです。そうして僕がいなくても組織が成長していける新しい環境を作り、個々の能力を引き出せるような人材育成に力を入れていこうと思っています」