元気に働いていたあの人が突然に……。労災保険の基礎知識 #2
ここでは、負傷・疾病・障害・死亡の場合について説明します。業務と労働者の負傷・疾病・障害・死亡との間に、何かしらの因果関係がある場合において、労働災害が認められます。それは、「業務遂行性」と「業務起因性」という二点の基準において判断されて行きます。
業務遂行性とは、労働者が労働の契約に基づいて事業主の支配下にある状態のことを言います。業務起因性とは事業主の支配のもとでの業務に起因して災害が発生したためケガ・病気になってしまったという考え方です。
業務災害とは、労働者が労働契約に基づく事業主の支配のもとで労働を提供する過程「業務遂行性」において、労働に起因して発生「業務起因性」した災害のことを言います。
■業務遂行性から労災が認定される場合
過重労働により起こった疾病・アスベスト被害など、職業との因果関係が経験上確立されているものについては、業務災害として認定されています。残業時間が1ヶ月に100時間を越え出るような労働を押しつけられた過重労働、脳疾患や心疾患が起こる可能性もまさに現在増加中です。
それは業務中ではなく、自宅に帰って寝ている最中に起こってしまうかもしれません。そのような「業務遂行性」がない状況下であっても、業務災害として認定される場合はあります。いろいろな問題を考えることができ、建築現場で、一生懸命労働をしている人が、アスベストをとりあつかった業務をしていたために「中皮腫」(ちゅうひしゅ)を発症するケースがあります。悪性の場合、胸膜や腹膜に沿って広く浸潤するものが多くあります。
ただし、それが発症するのは一般的には、数十年先と言われています。「業務遂行性」という考えに導かれれば、判断が相当難しいということも理解することができます。
■労働者の過失で災害を招いた場合、労働災害が認定されないことも!
とにかく労働環境は家庭で過ごしているよりも確実にリスクの高い場所です。常に危険に晒されている状況と考えて問題はありません。被災者、または同僚の過失で発生した災害だとしても、ここに業務遂行性・業務起因性があれば、労働災害は認められます。
ただし、労働者に「故意」や「重大な過失」があった場合には支給がされなかったり、支給が制限されることもあります。
それは、
- 労働者が故意に負傷、疾病、障害、死亡、またはその直接の原因となった事故を生じさせた場合
- 労働者が故意の犯罪行為または重大な過失によって負傷、疾病にかかり、またはその原因となった事故を発生させた場合
- 労働者が故意の犯罪行為または重大な過失によって、あるいは正当な理由がなく療養に関しての指示に従わないから、負傷や疾病、障害の程度をひどくさせてしまう、またはその回復を妨げた場合
においてです。
■まずは被災者の治療が優先…
労働災害が起こったら、まずはしなければならないことは、治療…… です。最寄りの「労災指定病院など」で治療を受けるようにしましょう。もしも、重大災害が起これば救急車を呼ぶ必要があり、警察へも通報をし、労働基準監督署に連絡してその後の処置についての指示を仰ぐ対応をしなければなりません。
労働災害の治療費は、基本労災保険から支払いされることになります。それは、通常の私傷病ではありませんので、健康保険証を使用することが出来ませんので注意をしてください。労災指定病院で治療を受ければ、治療費は、病院から労働基準監督署に請求されることになります。患者さんは支払いのことを考える必要がありません。
しかし何かしらの事情によって、労災指定病院など以外で受ける場合があるかもしれません。そのようなケースでは、一旦患者さんが立て替えをして、あとで費用は、患者さんに対して支給されることになります。
■災害がどうして起こったのか、事実関係を明確にする
- 事故を見ていた人はいるのか。
- 誰が起こした事故なのか。
- 事故はいつ起こったのか。
- 事故はどこで起こったのか。
- 事故はなぜ起こってしまったのか。
それらの事柄を詳しくメモを残しておく必要があります。それは、
- 労災申請書類を書く時
- 保険給付に関しての不服申立・行政訴訟を行う時
- 労働基準監督署長による労働災害の認定の時
- 業務上過失致死傷罪、労働安全衛生法違反などの警察官・監督官の捜査の時
- 使用者の損害賠償責任、安全配慮義務違反など、労災賠償裁判の時
にも必要になって来ます。大きな事故が起こる場合もあり、警察官などの現場検証があるケースも想定できますので、「災害現場の保存」をすることも可能な限り努力をしなければなりません。
■届出・申請をする
労働災害が発生すれば、労働基準監督署への災害発生報告とともに、保険給付を受けるための手続きが必要になって来ます。会社の証明や添付書類を求める届出や手続きが多いため、会社が基本代わって手続きをしてくれているようです。
■必要な捜査に応じる必要がある
労働災害は、労災申請書類の提出を受けて、所轄の労働基準監督署長が認定します。必要があれば、被災者や関係者の事情聴取もあり、会社からの資料の取り寄せや、ドクターからの意見聴取や、事故現場への立ち入り調査などがあります。大きな事故が起こった場合には、労働基準監督署の監督官が「労働安全衛生法違反事件」として捜査を始めます。多く労災事件は、業務上過失致死傷事件であり、警察官も捜査を開始することになります。
文/sapuri