スポーツトレーナーに国家資格が必要な理由とは? 持っておくことによるメリットとおすすめの資格をお伝えします
最近では様々な競技において、日本代表選手の活躍がメディアで取り上げられ、スポーツの人気もより一層高まっていると思います。特にオリンピックでメダルを取る選手も増えており、スポーツ人口も増加していくと予想されるでしょう。
しかし、スポーツの世界では選手や監督といった表に出ることの多い人だけでなく、サポートしている人の方が大勢いるのが実態としてあります。プロチームやプロ選手であれば、専門的なサポートを行う人が何人もいて、それぞれ選手のために一緒に動くやりがいのある仕事です。
そういった仕事を主に行うのは、スポーツトレーナーであり、選手を陰から支える必要不可欠な存在です。しかし、スポーツトレーナーと言っても様々なサポートの仕方があるので、一概に仕事内容や働き方が決まっているわけではありません。
そこで今回は、スポーツトレーナーの資格という視点から、取得した方が良い資格、資格の取り方まで詳しく紹介していきます。
スポーツトレーナーの役割とは?
先ず始めに、スポーツトレーナーの仕事や役割についてですが、一概にスポーツトレーナーの仕事は同じではなく、クライアントに求められる能力や契約内容によって仕事内容が違うのが現状です。
選手の健康状態を確認・維持する
スポーツトレーナーに共通する大切な仕事内容の1つとして、選手の健康状態を確認して維持することが挙げられます。特に実業団選手やプロアスリートは身体が資本のため、健康第一で身体の管理をしなければなりません。
しかし、どれだけ気を付けていてもケガや病気、ドーピングなどの専門知識を全て自力で網羅するのは非常に難しいため、専門的な知識を持ったスポーツトレーナーのサポートが必要になるのです。
もちろん、どういった専門知識を習得しているかで選手に対するサポートの仕方も変わってくるため、資格によって方法も違ってきます。
選手のパフォーマンス能力の向上
単に選手の健康管理を行うだけでなく、選手としてのパフォーマンスを向上させて、本番で活躍できるようにサポートしていかなければなりません。
競技についての専門知識を持っているスポーツトレーナーも多くいますが、専門外の競技の選手を担当することもあるため、どのようにアプローチしていくかは目標や現状を考慮して、ケースごとに考えていく必要があります。
選手が試合を続けることが出来るのかを判断する
選手が、ケガや病気になってしまうなど万が一の想定もしておかなければなりません。実業団選手やプロアスリートに至っては、身体を酷使することも多々あるため、ケガのリスク対策が必要です。
昔のように精神論で継続すれば、長期にわたって復帰することが難しくなる場合もありますが、今はスポーツ科学も進化しています。
しっかりと選手の身体を検査したり、状態管理を行い、より良い方法でのサポートをしていくことが可能です。
選手本人の意思も確認しながら、練習や試合の継続が可能か否かを判断する重要な役割もあります。
アプローチ方法の違い
どのような資格を取得しているかでサポートの仕方が変わってくると説明しましたが、大まかに分けると3つのアプローチが考えられます。
栄養的なサポート
管理栄養士といった、日々の食事からアスリート専用の食事まで、選手に必要な栄養を考案してサポートする方法です。選手からの相談を受けて、アドバイスを行う場合もあれば、選手個人やチームに帯同して食材の調達から調理までを任される場合もあります。
特に、国際的に活躍するアスリートを担当する場合には、海外での遠征や国際大会時における食事や衛生環境は日本と違うため、事前準備や現地の情報収集など仕事内容も大幅に増えていきます。
単に食事に関する栄養の知識だけでなく、国内や海外の環境・条件に合わせて準備できる能力も必要になるでしょう。
技術的なサポート
同じ競技を経験したことのある人がスポーツトレーナーであれば、精神的にはもちろん、技術的にもサポートがスムーズに行える場合もあります。
例えば、テーピング技術やトレーニング理論など、スポーツトレーナーとして同じ知識や技術があったとしても、担当する選手と同じ競技を経験していないのと、経験していたというのでは、必要なトレーニング量やケアの仕方なども全く同じになるとは言えないはずです。
競技経験者の知識も、時には必要な場合があると思うので、技術的なサポートもスポーツトレーナーにあった方が良い要素の1つではないでしょうか。
医学的なサポート
医師免許に限らず、理学療法士やあん摩マッサージ指圧師などの医学的な専門知識を習得している人によるサポートは、非常に心強いものです。
競技者として経験があったり、栄養面やサポートの信頼性が高いスポーツトレーナーだったとしても、万が一ケガをした場合、応急処置が必要な場合、継続すべきかの判断をする場合において、医学的な知識を持っていれば、より正確な判断ができます。
スポーツトレーナーが国家資格を持っていることによるメリット
国家資格は、国に認められた知識・技術を習得しているという証明にもなります。そのため、まだ日本ではスポーツトレーナーが国家資格ではないという状況を含めても、有資格者であることの意義は大いにあるはずです。
特に、医学系の国家資格を取得している人は、様々な場面でスポーツトレーナーとして活躍することが期待できます。
高度な医学的知識を習得することが出来る
テレビや雑誌などで、「このトレーニング法は医学的にも○○に効果がある!」「○○は絶対にやってはいけない!」など、目を惹くようなタイトルや内容を見たことがあるはずです。
確かに、スポーツにも生かせるような効果的なトレーニングやストレッチ、日常動作などの情報も得ることが出来るかもしれません。
しかし、スポーツにおいて実業団選手やプロアスリートの世界では誰でも出来るような方法だけでは不十分です。
医学的な専門知識を習得している人に直接指導してもらう必要があります。
そのため、スポーツトレーナーは日々、医学的な知識や技術を習得することが大切になります。一般の人が理解できない専門的な部分が多くあるため、そういった資格を持っている人は貴重な存在です。
資格によってはもしもの時に応急処置が出来る
医学的な資格を持っているという事は、身体の仕組みをよく理解しており、資格によっては施術を行うことが出来ます。ただし、施術の内容や出来る範囲に関しては医師以外は多くの制限があるため、知識があるからと言って何でも対応できるわけではありません。
それでもケガをした際に、悪化しないための応急処置を行ったり、復帰に向けたプランやリハビリを行うことができたら、選手にとっても安心して対応をお願いすることが出来るはずです。
メディカルトレーナーとしても活躍することが出来る
整形外科や接骨院などで働いている人が多いメディカルトレーナーですが、痛みやケガを抱えている選手が、より早期に復帰できるようサポートを行う専門家として活躍しています。
治療やリハビリに関しては医師や理学療法士によって行われますが、競技に復帰するためにトレーニングを再開したり、メディカルマッサージなど日々のサポートについてはメディカルトレーナーの担当です。
スポーツドクターもある
オリンピックや大きな国際大会に関わる人は、聞いたことがあるかもしれませんが、スポーツドクターという仕事もあります。スポーツドクターは医師免許を取得した後、4年間以上医師として経験を積み、スポーツ協会の講習や審査を経て認定される資格です。
スポーツドクター自体は国家資格ではありませんが、医師免許を取得している人のみ資格を得られるため、事実上、国家資格取得者のみの資格と言えます。
普段は実業団やプロスポーツチームに従事していますが、オリンピックや国際大会の際には、運営協力として派遣される事もあります。医師としての知識や技術、処置が可能なため、スポーツにおいても非常に重要だと言えるでしょう。
スポーツトレーナーにおすすめの国家資格とは?
スポーツトレーナーとして活躍するために、取得しておきたい国家資格について紹介していきますが、1つだけでなく、複数の資格を取得することでサポートできる幅を増やすなど、どこまでクライアントに対して貢献できるかにも繋がっていきます。
より活躍したり、自分自身のスキルアップ、キャリアアップのためにも、余裕があれば複数の資格を取得するのが良いでしょう。
管理栄養士
スポーツ選手を栄養面でサポートするために必要な国家資格です。資格取得には、管理栄養士養成施設を卒業した後、実務経験などを経て受験することが出来ます。
合格率は50%台と、高い数字ではないため、難易度で言えば高めだと言えるでしょう。
栄養士がスポーツトレーナーとして活躍するには、食事に対するアドバイスをするだけでなく、担当するチームやプロアスリートの現状や目標、他のサポートを行う人との連携、活動場所でのサポート法など、問われる能力が多くあります。
上記でも述べたように、特に海外でも活動を行うチームや選手の場合では、いつでもどこでも同じような栄養管理が出来るわけではありません。
常に選手の状態だけでなく、周りの環境を踏まえてサポートをしていく必要があるでしょう。
あん摩マッサージ指圧師
あん摩マッサージ指圧師は、日本におけるマッサージが出来る数少ない資格の1つとなります。法律でもマッサージをすることは該当する有資格者のみ認められており、医師やあん摩マッサージ指圧師以外は禁止されているのが現状です。
資格取得には3年以上の専門学校に通った後に資格試験がありますが、合格率は80%台としっかり知識と技術を身に付けていれば問題なく資格を取得することが出来るようです。
この資格を取得していればスポーツトレーナーとして専門的なマッサージを施したり、選手の疲労軽減、怪我の予防にも役立ちます。
理学療法士
理学療法士は、主に病院や治療院、接骨院などでリハビリを必要とする人に対してサポートを行う専門家として認められています。
日常動作において障害があったり、痛みを伴う場合に専門的な視点から、身体のゆがみを修正して痛みを軽減させたり、悪化させないように動作の方法をアドバイスすることが仕事内容です。
スポーツトレーナーとしても、ケガからの復帰を目指す選手は多くいるため、重要な専門家として重宝されています。
医師
まず医師免許を取得するまでの過程も簡単ではありませんが、医師免許を取得しているスポーツトレーナーは、ケガ時の応急処置、ケガから復帰までのサポート、日々の選手管理におるケガ予防など、どの場面でも非常に需要のある資格だと言えます。
スポーツドクターとしての資格もあれば、サポートの幅も広がり、選手にとっても安心できる免許だと言えるはずです。
現場ではもしもの時などには迅速な判断が求められます
スポーツでは、どの競技においてもレベルが上がるにつれて、ケガや緊急性の高い事故のリスクも上がっていきます。
実業団選手やプロアスリートへのサポートを行うのであれば、国家資格をまず取得して、知識や技術だけでなく、選手に応じて対応できる能力や、万が一の際の迅速な対応が可能な状態にしておくことが大切です。
どの免許が良いかというよりは、選手が求めるスポーツトレーナーはどういった内容なのかを把握して、ニーズに合わせて知識や技術が提供できるかが大切になってくるでしょう。