美容業界が、その次にいくために 独立を目指すあなたへ vol.7【i.山内大成さん】#1
独立・開業を目指す人に向けて、独立をしてサロンオーナーになった方の経験談をご紹介。今回は、大手有名サロンGARDENで活躍後、2019年5月に「i.」を立ち上げた山内大成さん。前編では、山内さんがなぜ独立に至ったのかについて、詳しくお伺いします。
日本一の美容師を目指してきたこれまで
――まずは、これまでの経歴からお伺いします。美容師になった理由は?
最初は、仲のいい尊敬する友人が美容師になると言ったのを真似たのがきっかけでした。よくある「モテたい」みたいな気持ちもありましたし、裕福ではなかったので、すぐ働ける仕事がいいなと思ったのも理由のひとつです。
美容学校の2年がもったいなく思えたので、高校卒業後は、働きながら美容師免許が取れるサロンを探しました。そこで見つけた愛知のサロンに就職し、岐阜の店舗に配属されて、働きながら通信で免許を取得。18歳で働きだして、20歳でスタイリストデビューしました。
――驚くほどスピーディですね!
昔から、効率を考えて無駄を省いて、スピーディに事を運ぶのが好きなんです。周りを出し抜いてやろうとかじゃなくて、今やるべきことを効率的にやっていったら、人より早く結果が出たというか。
でも、スタイリストデビューの半年後に、「日本一になるぞ」と意気込んでそろえた総額100万円のハサミを全部盗まれてしまって…。通信の学費とかも自分で払っていたし、お金も時間もないなかで、新しくハサミを買うなんて不可能。もうこれは1回やめようと思って、美容師を離れることにしました。
そうとなったら、まだ美容師しか経験していなかったので、いろんな仕事が知りたいなと。そこから1年は接客業を中心に、いろんな仕事を10個くらい経験しました。社会経験になったし、美容師の外のいろんな常識を知ったというか。
――そこから美容師に戻ったのは?
バーテンダーをしていたお店のお客さんで、美容室のオーナーをしている方がいて、声をかけてもらったんです。そこは小さな個人経営のお店で、以前働いていたのがショッピングモールに入っているような大型店だったので、まったく違うタイプのお店も経験したいなと思って、お話を受けることにしました。
――個人店と大型店を経験されたんですね。
はい。小さなお店のメリットは、アシスタント指導とかがない分、自分のために空き時間が使えるんですよね。
なので、そのサロンにいる時期は、コンテストに出ることに力を入れていました。地方で実力を示すには、コンテストで受賞するのが早いと思って。幸い結果も出せて、いろんな賞をいただきました。30代40代の有名美容師のなかで20代前半の僕が表彰されて、しかも「とんそく」という変な名前で出ていたこともあって(笑)、かなり目立っていたと思います。
そんなときに、GARDENで働いていた前サロンの先輩から、「GARDENで一番売り上げている人のアシスタントにならないか」と誘われました。
東京のトッププレイヤーの仕事を間近で見られるチャンスは、そうありませんから。またアシスタントからのスタートにはなりますが、GARDENに入ることにしました。
GARDEN歴代最速でトップスタイリストに
――その後、異例の速さでトップスタイリストになりましたよね。
アシスタントから再スタートして、2年後にスタイリストデビュー、1年後には月300万円を売り上げるようになりました。でも最初のころは、かなりきつかったですね。毎日のように叱られていました。だけど、やっぱりトッププレイヤーのアシスタントにつけたことは、自分の糧になったと思います。撮影にもたくさん同行させてもらえたことで、メディアとのコネクションもできました。
――そんななか、独立を決めたのはなぜですか?
トップスタイリストになり、会社のいろいろなところが見えるようになって、「変えていかなきゃいけない」と感じました。美容師としてトップが見えてきたことで、次のステップとして経営面のことを勉強していたこともあって。
そこで会社に、「業界は今後こうなるし、会社もこうしたほうがいい」とか、若手がやめていかない方法とか、いろんなアイディアを提案したんです。
でも、社歴も浅くて若い僕の声は、上層部には届きませんでした。もちろん支持してくれる人もいたけど、組織が大きい分、否定的な意見も出ますし、変化を嫌う人は多いですから。僕としては、辞めたいとは思っていなかったし、喧嘩別れになるのはイヤだったので、退社を決めるまで毎日のように社長や代表と話し合いました。でも、受け入れてもらえなかった。そうなると、僕のやりがいとか考えと、ちょっと違うなということで、独立することにしました。
――やりがいや考えというと?
美容業界の闇というか、無駄な部分とかを変えていきたいんですよね。
たとえば経営でいうと、今は3年で80%の美容室がつぶれると言われている時代。プレイヤーが経営をするのが当たり前だったところから、経営能力のある企業が美容室を作り出して、すごい速さで200店舗とかを作っている。逆に、美容師脳でやってきたサロンが、どんどん縮小していっているんです。だから今、美容師が次を考えていかなきゃいけないと思うんですよ。
あとは、美容業界のお金の流れとかも気になっていて。美容師の利益っていうのが、年間630憶くらいあって、それを今はサロン間で取り合いしている状況なんです。でも実際、そのお金がどこにいっているかってなると、実際に施術している美容師じゃなくて、ディーラーだったりメーカーだったりする。そういうのを変えていけないかなと。ちゃんと美容師に利益が出るように…というか。
ここで美容師が動かなかったら、本当に終わってしまうじゃないですか。だから、美容業界が、その次にいくための方法を作りたいんです。
ステップアップしていくために必要なこと
異例のスピードで業界トップクラスの売り上げを出した山内さん。次のステップとして、独立開業することに決めました。そんな山内さん流のステップアップのために大切なことを教えていただきました。
1.無駄を省き、今すべきことを全力でする
2.トップクラスの師の下で学ぶ
3.新しいことを始める前にはきちんと知識を入れる
後編では、開業した「i.」についてと、今後の展望についてお伺いします。
▽後編はこちら▽
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取材・文:山本二季
撮影:高嶋佳代