【美容師のカラー&カット技術】Violet 前原穂高さん流 オイルカラー×質感調整で作る『素髪美人ヘア』#1
美容師がお客様のためにできることとは? Violetの前原穂高さんがたどり着いたのは、「素の髪そのものが美しい」と感じさせるスタイル作り。薬剤選びとカット技術を追求することで完成した、作り込んだ感じのない『素髪美人』に見せるデザインです。
前編では、前原さんが技術力を高めるためにしてきたこと、サロンワークでのこだわりについてお伺いしました。
Violet 前原穂高さんインタビュー
蓄えた技術と練習量が自信につながっていく
――技術力を高めるために、若手時代にしていたことは?
アシスタント時代は、とにかく練習ですよね。他の人より秀でないといけないと思っていたので、普通は練習しない時間に練習するっていうことをやっていました。例えば、休日にも家で練習するとか、クリスマスみたいな、みんなが早く帰る日に1、2時間でも練習して帰るとか。
1、2時間、練習時間を増やしたからって、すぐに上手くなるわけじゃないんですけど、「みんながやっていない時間にやった」っていう自信が大事なんですよね。「人よりも練習した」という自覚があると、自分にも言い訳できないし、それだけやってきたんだからって思えるというか。
――スタイリストになってからは?
スタイリストになりたての頃って、なんでもいいからお客さんが欲しい時期なのに、できないことがあるせいで担当するチャンスを逃すなんてもったいないじゃないですか。だから、まずは深さよりも広さだなと思って、できないことを探して、1つずつ潰していきました。
僕の場合は、和装のヘアセットとメイク、アイロンワークの勉強をし直しました。大体の男性が苦手なところで、カリキュラムでも詰めていなかった部分ですよね。だから、できないことが不安で。
アシスタントの時って、カリキュラムもあるし、黙っていても次の課題が出てくるんですよね。でも、スタイリストになると、課題が人それぞれになっていくから、うかうかしていると何も変わらないか、練習量が減る分アシスタント時代よりも下手になるんですよ。だから、スタイリストになった後は、できないことを自分で見つけて、自分で解決していくことが大切なんです。
――若手時代は、どんなことを磨いたらいいと思いますか?
最近の子は頭がいい分、いろいろ考えすぎているような気がします。「なんで今これをやっているんだろう」とか、「何に必要なんだろう」とか、考えすぎて立ち止まっちゃったり、嫌になっちゃったりする子が多い。でも、それはもったいないなって。
例えば、小学校で掛け算とか割り算を習う時って、意味はわからないし何に必要かもわからないけど、今になって必要だったってわかるじゃないですか。同じように、アシスタントの時に疑問に思っても、スタイリストになったら絶対に活きる時がくるんですよね。
勉強する最初の段階で、その活かし方まで考えていたら、絶対にスピードは落ちてしまうので。まずは単純に、いろいろやってみる方がいいのかなと思います。
――限られたアシスタント時代に、できることを増やしておくというか。
そうしたら、後からいろいろつながってくるので。僕も、とりあえずできることを増やそうと思ってやった、ヘアセットとかメイクの勉強がお仕事につながりましたし、アシスタントの時に先輩に言われて嫌だったこととか、大変だった練習とか、今の年齢になって思い返すと、無駄だったことはひとつもなかったと思えますから。
美容学生とアシスタントを合わせた下積み時代、5年半くらいでしたけど、もっとすごく長く感じました。つらかったし、大変でしたけど、密度がすごく濃かったなと思います。でも、その密度があってよかった。「あれだけやったじゃないか」って思えるし、それが自信につながって。さらに誰かに認めてもらえたりして、間違いじゃなかったんだって思えるようになりました。それを繰り返して、いいものが作れるようになるというか。
自信がないと、いいものって作れないですから。自分の中に不安や迷いがあるままで、たまたま上手くいくなんてことはありません。その土台になるものを、たくさん吸収しておけるといいのかなと思います。
お客様の気持ちを立ち上がらせ、素の美しさに導く
――サロンワークでのこだわりは?
僕の場合は、最初にお客様に会った時に、その人が可愛くなっていく道筋というか、ストーリーみたいなものが浮かぶんです。その浮かんだものを、あまり曲げない方がいいなっていうのが、なんとなくわかってきて。途中でブレちゃうと、なんとなく上手くいっても、自分の実にならないし、結果お客様も幸せじゃないというか。
だから、少し『上から』な言い方になってしまう時もあります、あえて。それが嫌だっていう方も結構いらっしゃるとは思うんですけど。
なので、お客様へのデザイン提案も、ライフスタイルに合わせて作るというよりは、目指す女性像に合わせてライフスタイルを変えてもらいたい、くらいの気持ちで提案しています。家でゴロゴロしているところを、無理やり立ち上がらせて、背中をたたいて押してあげる感じですよね。そういう仕事の仕方が多いです。
――結構スパルタですね(笑)。
そういう風にした方が、結果その方が良くなると思って言っているんですけどね。お客様の髪に責任を持って、キレイになるための道を作っていきたいんです。だから、お客様の気持ちを立ち上がらせることも、すごく大切だと思っていて。
そのために、まずサロンの中でできることは、しっかりスタイルを作り込んで「あなたの最高地点はここですよ」っていうのを見せてあげること。「こんな風になれるんだったら、ちょっと頑張ってみようかな」という気持ちになってもらえたら、お客様が日常でも頑張れるように調整します。再現しやすかったり、乱れていても可愛いように。
――今気になっているデザインは?
最近は、特別なことをしなくてもキレイでいられる、キレイに見えるというところを目指しています。例えば、根元に立ち上がりがあるスタイルとか。根元が立ち上がっていると、元々ふわっとしやすい髪の毛に見えるじゃないですか。あと、オイルカラーですね。染めただけでツヤが出るので、ダメージを隠すというより元々髪にツヤがある人みたいに見えるし、傷みも少なく済むので素材を壊さず元からキレイになっていくんです。
そういう「素材美」みたいなところを、演出したり作っていける技術が気になっています。
前原さんが提案する『素髪美人ヘア』
カラー+カットの施術でも、髪を傷めず「元から髪がキレイ」に見えるスタイルに。オイルカラーでのカラーリングで、ツヤと透明感を高めて暗めカラーでも軽やかな質感に。カラーの質感を損なわないようにカットを施し、柔らかく触れたくなるようなデザインが完成。
『素髪美人ヘア』のいいところ
1.暗めカラーでもツヤと透明感が出せる
2.どんな髪質の人も、手触りのよさそうな質感に
3.長さを変えずに印象を軽くできる
前原さんが気になっているという「素材美」を演出する技術を取り入れ、柔らかく手触りのよさそうな質感を叶えた『素髪美人ヘア』。後編では、その詳しい施術内容を教えていただきます。
▽後編はこちら▽
【美容師のカラー&カット技術】Violet 前原穂高さん流 オイルカラー×質感調整で作る『素髪美人ヘア』#2>>
取材・文:山本二季
撮影:廣江雅美
ヘア&メイク:前原穂高(Violet)
モデル:小林 桃
教えてくれたのはこの人!
前原穂高さん
Violet 代表
美容室AFLOATにて12年の実績を積み、2015年に独立。多くの芸能人やモデルのヘアを担当し、柔らかく女性らしいデザインは多くの女性の支持を集めている。雑誌やCM、TVでのヘアメイク、国内外でのヘアショー、セミナー講師など幅広く活躍。名古屋栄店に続き、2020年5月30日に横浜店オープン予定。
インスタグラム:hodaka
Salon Data
Violet(バイオレット)表参道店
住所:東京都港区南青山5-10-1 H2 AOYAMA BLDG.3F
TEL:03-5778-9646
URL:https://violet.tokyo/
Instagram:violet_hairsalon