技術の共有でサロンをひとつに!『K.e.y原宿』の強い組織作りの極意に迫る
柔軟な経営スタイルでファンをつかんでいる『K.e.y原宿』。外部の仕事も積極的に行っていますが、実はオープン当初は雑誌などの仕事はほぼゼロだったそうです。メディアへの登場が増えた理由は、オーナーの田中さん自ら出版社を回り営業をかけたからだそう。今では興味があった雑誌はすべて担当したとのことです。『K.e.y原宿』が人気店に成長した陰には、そんな地道な活動をはじめ、自分たちで企画した書籍の出版やチーム力を高める技術共有がありました。
後編では、強い組織作りの極意に迫ります。
丁寧に作る書籍だからこそ、伝えられること
————「世代美の創造」のためには、どのようなことが大切でしょうか?
「一般の方々の視点を持つことが大切だと思っています。簡単に聞こえるかもしれませんが、業界で働いていると思いのほか、難しいことです。美容師はもちろん、ファッション誌の編集さん、スタイリストさんなど、お客さま以外で一緒に働くのは、基本的に業界の人たちですからね。そのため髪型、ファッション、メイクなど、一般の方が本当はどのようなスタイルを魅力的だと思っているのかを把握することが重要です。
そして情報はインプットするだけではなく、発信して反響を確認するまでをワンセットで行う必要があります。そこで『K.e.y原宿』では、毎年私の妻からアイデアを聞きながら書籍を出版していて、本のメインテーマが『世代美』です。内容としては、その年代にあった魅力的なスタイルを提案しており、本を読んだことをきっかけにサロンに足を運んでくださる方もいらっしゃいます。SNSなどのネットのツールも大切だと思いますが、時間をかけて丁寧に作る本だからこそ伝えられる内容があると思いますね」
コミュニケーションに頼らない組織作りとは
————強いチームを作るために意識していることはありますか?
「サロン全体で技術を共有することです。時折、『強いチームを作るためにはコミュニケーションが大切』という意見を聞くこともありますが、私は対話だけでは難しいと思っています。価値観はみんな違いますから、実体がないコミュニケーションに頼ることはそれほど効果的だとは思えません。
それよりもサロン全体で前面に打ち出すスタイルを決めて、全員でその髪型を作るための技術を学べば、行動を揃えることができます。こちらのほうが、ずっとわかりやすく効果的です。業界を見渡しても、グラデーションカラーをウリにするなど、人気サロンには同様の傾向にあると感じていますね。
そこで『K.e.y原宿』では『ラウンドレイヤー』というスタイルを作り、サロン全体で共有しています。『ラウンドレイヤー』とは、髪全体の質感を合わせるスタイルです。髪型のイメージは、まず頭を球体としてとらえて頭頂部に平面をあてがいます。すると頂点が生まれるので、そこから水を垂らすと均等に放射状に流れていく。このビジョンを持って、髪全体を均一に調整していくことがポイントです。ちなみに、人は軽いところや重いところがなくなり、均等な毛量になると触り心地もよくなります。この状態を目指して、スタッフ全員で腕を磨くことが、強いチームを作るコツですね」
設立10年目での大きな変化を目指して
————最後に、今後の目標を教えてください。
「若い世代にサロンをバトンタッチしたいですね。オープン当初の目標は、ターゲット年齢が39.8歳になった時、つまりサロンが10年目に突入したタイミングで世代交代をすることでした。今年は9年目なので、サロンを継ぐことができる腕のある若手の育成が現在の最大の課題ですね。
ちなみに『K.e.y原宿』では、2年でのデビューを目標に設定しています。また、できるだけ早くにお客さまに触れさせることも指導の際には意識しているポイントです。訓練よりも、実践と言い換えてもいいかもしれません。何が起こるかわからない時代ですから、柔軟に対応できる力を若手のうちに身に付けてほしいと思っています」
強い組織作りの極意
高い技術力を求めて、全国各地からお客さまが訪れているという『K.e.y原宿』。強い組織作りの極意をまとめると、下記の3つでした。
1.一般の方の視点を持つために自分たちで企画を作り発信する
2.技術の共有でチーム力を高める
3.実践型の指導で、柔軟に対応できる力を育てる
お子さま連れのお客さまも安心してくつろげる環境を整えている『K.e.y原宿』。入口のベルを鳴らすと、スタッフがベビーカーを運びにお迎えし、また、お母さんがまわりのお客さまに気を遣わないように、営業時間前に『ママさん専用の予約枠』も設けているそうです。一流の接客を体験したい方、チーム作りに悩んでいる経営の方は、サロンに足を運んでみてはいかがでしょうか。
▽前編はこちら▽
お客さまに美を届けるキーマンを目指して!『K.e.y原宿』のブランディング術に迫る>>