魅力ある年齢の重ねかたが美容業界への恩返し。私の履歴書 Vol.29【SUNVALLEY 朝日光輝さん】#2
昨年、カリスマ美容師を格付けしたガイドブック「KAMI CHARISMA」で最高評価である三ツ星を獲得。技術はもちろんのこと、モデルや女優からも愛され第一線で活躍を続けているヘアサロン「SUNVALLEY」の朝日光輝さん。前半では、美容師を目指したきっかけやヘアメイクを始めたきっかけなどを伺いました。後半では、現在まで第一線を走れた理由や今後の展望などを伺いました。朝日さんの仕事に対する情熱は尽きることなく、燃え続ける想いを知ることができました。
プライベートサロン〜SUNVALLEY
自分の知識や能力を下の世代へと伝えていきたい
――マンツーマンで接客を行うプライベートサロンを開いていたこともあったそうですね。
数字だけを求められる立場になったときに、突然美容師がつまらなくなってしまったんです。このままで良いのかなと思い、一人でマンツーマンサロンを出しました。シャンプーもやるし、美容師としての満足度は最高に高かったです。ただ、マンツーマンだと10時間働いたとしても、10人しか施術することができないんです。これだとたくさんのお客様を喜ばせられないことに気づきました。体力的にもこのまま永遠に続けることはできないんだろうなと……。もっと多くのお客様を喜ばせたいなと思ったし、ちゃんと人を育ててみたいなという気持ちになりましたね。
――人を育てたいと思ったきっかけは何かありますか?
OCEANの高木くんとか若手の美容師と仲良くさせていただいているのですが、彼らはすごくハツラツとしていてエネルギッシュで。夢と希望に満ち溢れていたんです。そういうエネルギーを間近に見て、とても刺激的だったんですよね。それまでは年上の人ばかりと仲良くしていたのですが、ようやく後輩とも仲良くするようになって、新たな刺激に感化されました。
若いスタイリストたちを見たときに、彼らが持っているものを伸ばすために、自分が培ってきた感覚や能力を使えるのではないかと思いました。自分の知識や考え方を若い人たちに少しでも与えられたら、彼らは自分たちの才能とプラスアルファで伸びて、楽しい美容業界になると感じたんです。
教育に関しては、まだまだ模索中です。最近の若い子は早くデビューして、昔と違って伸び方が異なると思います。ただ、基本をしっかり教えたいとは思っているので、ベースは渋谷が教え、アレンジの部分は僕が教えてうまく分担するようにしています。スタイリストデビューまで3年間のカリキュラムも作っていますが、できるだけ早くデビューして欲しいという思いはありますね。
――第一線で20数年間も活躍してこられた理由は何でしょうか。
周りのタレントさんはもちろん、カメラマンさんやスタイリストさんなど、プロフェッショナルな人たちに囲まれてお仕事をしていました。ふと「あんな人いたね」というように使われて捨てられるのは嫌だなと思ったんです。そこから40代・50代のカリスマになって、魅力ある人生・生き方や年齢の重ね方をすることも美容業界への恩返しかなと思いました。
あとは、目標を高く持つこと。日本の主軸は若い人たちがメインですが、海外は40代・50代が一番、脂がのってカリスマなんです。そういう風に僕らの美容寿命を延ばしていきたいなと思っています。アジアとかいろんなところで価値を高める仕事ができないかなと。そういう高い目標や夢はありますね。
――仕事に対する情熱はどこからきていますか?
僕たちの商売って目の前の人をサロンに来たときよりも美しくすること。サロンに来た方達が思っているイメージにより近づける。美しくなったら、みんなハッピーになって帰るじゃないですか。それはヘアメイクも一緒ですよね。喜んでいる様子を見ると、人対人の仕事に楽しさがあってエネルギーがわきます。自分が人を通してエネルギーを与える、喜びを与えることが楽しいですね。単純に人が好きだから頑張れるんだと思います。
――仕事でのインスピレーションは、どこからわいてきますか?
基本、コンサバなので自分が作るものは女性らしいとか可愛らしいスタイルが多いです。その人の骨格や顔の形や髪質、そのときの気分とトレンドを料理する感覚です。ゼロから構築する感覚は無いので、素材を見極めて足していくようにしています。ある程度いろんな引き出しは常にストックしておきます。自分の中で可愛いとかきれいとか美しいとか、モノでも人でも建物でもなんでもストック。あとはモデルを見たときの感覚で、味つけを楽しんでいます。
将来の展望
美容の楽しさを自分らしく伝えていきたい
――お客様への想いを教えてください。
結婚していなかった人が結婚して子どもを産んだり、旦那さんを連れてきたりとか、人の人生に絡んでいけるのが美容師の面白いところだと思います。親戚でもなんでもないですが、お客様のライフスタイルに寄り添えて変化を見てあげられる部分は、不思議な感覚ですね。新しく指名してくださるお客様もいらっしゃるのですが、その子たちは若さに溢れすごく魅力的で可愛いお客様が多いです。
これしかできないので、基本は生涯現役でいきたいです。今更、ずっと来てくださっているお客様に「僕はもう美容師辞めます」なんていうことは絶対に言えないかなと思います(笑)。死なない限りは一緒に歳を取りたいなと思っています。
――今後、美容業界をどのように盛り上げていきたいですか。
自分ができることでそんな大層なことはないのですが、周りから「あのおっさん、いつも楽しく仕事しているよね」って思われる、そんな立ち位置にいられたらいいかなと。寡黙な人もいれば、楽しい人や明るい人もいて、いろんな人がいる方が面白いと思います。自分は、美容を楽しくやっていることに尽きると。そういう美容の楽しい間口をたくさん作っている一人になれたらと思います。とにかく自分が楽しく、第一線で。
――今後の展望を教えてください。
やはりコロナもあって、4月はお店を休んだりしてやばいなと思うこともありましたが、5月・6月はとても忙しくて、前年比よりも良かったんです。それを思うと、やはり美容師って、どんな状況下でも生きていける本当にいい仕事だなと改めて思えた瞬間でもありました。大変ですが美容の楽しさをしっかり身につけてもらって、みんなが伸びていく方向に後押しできるようにサンバレーも寄り添っていければと思います。
僕自身としては本当に長く、ロングランで仕事を続けること。第一線で美容を楽しみながら、格好いい姿を見せ続けることが他の美容師さんや日本の美容業界に少しはお力添えができることかなと思います。だんだん年齢を重ねていくと、感謝の気持ちが増えていくじゃないですか。おじさんみたいですけど、いかにお返しをしていけるかということに尽きますね。
――息を切らさずにですね!
今も本当に休みなく働けているので、それがありがたいなと思います。仕事の仕方が20年間くらいほとんど変わっていないんです。ただ今回の新型コロナウイルスの影響で生まれて初めて2週間休みました。その先は体験したことないですが、まだまだ休めるなと思いましたけどね(笑)。
朝日光輝さん成功の秘訣
1.自分の感覚を大切にする
2.とにかく楽しむこと
3.すぐに行動へと移す
▽前編はこちら▽
自分にとっての道しるべは自分が作る。私の履歴書Vol.29【SUNVALLEY 朝日光輝さん】#1>>
撮影/石原麻里絵(fort studio)
取材・文/梅澤 暁