福祉用具選定士とは?資格取得によってできることや主な職場・試験概要を解説
介護サービスが必要な高齢者や障がい者が効果的なリハビリや機能訓練に取り組むためには、利用者のニーズや身体に合った福祉用具を使用することが重要です。
福祉用具選定士は利用者にとってベストな福祉用具を選定し、道具にまつわる情報を提供する仕事で、最近では介護業界や医療業界においてとくに注目が集まっています。
本記事を読めば、福祉用具選定士の業務内容や主な就職先、受験資格・試験内容、資格を取得することで享受できるメリットについて再確認できます。
福祉用具選定士とは
福祉用具選定士は、福祉用具専門相談員となる人材の育成や質の向上を目的に実施されている民間試験です。福祉用具の選択をしなければならない医療・介護現場などで重宝されます。
介護福祉士や看護師、理学療法士など、介護職・医療職のキャリアアップにも役立つでしょう。
引用元
一般社団法人 日本福祉用具供給協会:福祉用具選定士 認定研修会のご案内
資格取得によってできること
福祉用具選定士の資格を取得することで、福祉用具に関する知見が得られ、利用者一人ひとりのニーズに沿ったベストな福祉用具を選定できるようになります。福祉用具選定士の資格を取得することで、何ができるようになるのかをチェックしましょう。
福祉用具にまつわる知識の習得
まず第一に、福祉用具に関する知識や選定のスキルが身につきます。福祉用具選定士の認定研修を受講すると、教科書の内容に沿って座学で知識を得られるだけでなく、時には実技で教員から直接指導を受けながら、福祉用具の使い方について知ることが可能です。
福祉用具の選定がおこなえる
実際の福祉用具の使用を想定したシチュエーションでの用具の選定や、それぞれの利用者に応じた用具の選定方法について学べるので、より実践的な知識やスキルを育めます。
福祉用具には種類がたくさんあり、状況によって使い分けることが重要です。
用具名 | 特徴 | 用途 |
特殊寝台 | 背部・脚部の角度を変更でき、床底部の高さを調整可 | 食事や排尿などを行いやすい角度に調整する |
車椅子 | 座った状態で移動できる | 歩行困難な方を移動させる |
床ずれ防止用具 | 体圧が1カ所に集中しないようにするマットレス・クッション | 床ずれ、皮膚の壊死を予防 |
体位変換器 | 空気パットで体位変換しやすくする | 床ずれ、皮膚の壊死を予防介助しやすい体位への変換 |
手すり | 移動の際の持ち手になる | 杖が使えない場所でも移動しやすくする |
スロープ | 持ち運び型のスロープで、必要な時に広げて使う | 段差や穴を渡りやすくする |
歩行器・歩行車 | 四脚または車輪付きで体重を一部預けて歩行できる | 身体のバランスを保ち、歩きやすくする |
歩行補助杖 | 杖で身体を支えられる | 足腰への負担を和らげ、歩行の安定性を確保する |
ポータブルトイレ | 持ち運びできる簡易トイレ | トイレまでの移動が難しい方のトイレとして使用 |
シャワーチェア | 安定性が高い風呂用椅子 | 風呂場での立ち座りが難しい方をサポートする椅子 |
入浴補助用具 | 入浴・シャワーを補助する器具一式 | 風呂場内での動作をサポートする |
段差解消機 | 車椅子を数メートル昇降させるリフト | 車椅子に乗ったままで段差のある場所を移動できる |
簡易浴槽 | 折り畳み式やエアータイプの浴槽 | 持ち運びが可能で寝たきりの方でも入浴させられる |
立ち上がり座椅子 | 座席にバネなどがついている | 立ち上がりを補助する |
スライディングボード | 要介護者の体を滑りやすくさせる台 | 寝たきりの人を移動させる
移乗の負担を軽減する |
六輪歩行器 | 普通の歩行器よりも車輪が多いので多方向に動きやすい | 歩行が難しい方をサポート |
自動排泄処理装置 | センサーで排泄物を自動吸引 | 自力での排泄・排尿が難しい方をサポート |
福祉用具専門相談員や福祉用具プランナーとの違い
福祉用具専門相談員は、各都道府県知事の認定した事業所による福祉用具専門相談員指定講習を受講し、計50時間のカリキュラムを修了したのち、筆記の修了評価をクリアすることで取得できる資格です。
介護保険制度が適用されている福祉用具の貸し出しや販売を行う事業所では、福祉用具専門相談員2名以上の配置が義務付けられています。また、福祉用具選定士試験の受験要件にもなっているので、福祉用具選定士を目指す方は取得が必須です。
福祉用具プランナーは福祉用具に関するアドバイスや使用状況をモニタリングする仕事で、福祉用具選定士よりも講習期間が長いのが特徴です。
福祉用具についてしっかり学んで生きた知識を体得したい方に向いています。
引用元
一般社団法人 全国福祉用具専門協会:福祉用具専門相談員についてのQ&A
福祉用具選定士の主な職場・就職先
福祉用具選定士の主な就職先は福祉用具の貸し出しや販売をおこなっている事業所やメーカーです。利用者一人ひとりの状況に合わせて適切な福祉用具を提案していきます。
具体的には、以下のような職場で働くケースが多いです。
・福祉用具メーカー
・ドラッグストア
・特別養護老人ホーム
・介護老人保健施設
・介護福祉用品売り場
・福祉用具販売店
・福祉用具貸与事業所
・福祉用具住宅改修事業所
また、介護や医療の現場で働く介護福祉士や看護師の方が福祉用具選定士の資格を取得することで、より現場のニーズに沿った福祉用具も選定できるでしょう。
福祉用具選定士になるために|受験資格・試験概要
福祉用具選定士になるためには、福祉用具選定士認定研修会を受講し、研修修了後に実施される筆記試験に合格する必要があります。認定研修会の受験資格や試験の概要、試験の申し込み方法をチェックして、福祉用具選定士になるための準備をしましょう。
受験資格
福祉用具専門相談員としての業務経験が2年以上ある方か、保健師・看護師・理学療法士・作業療法士・社会福祉士・介護福祉士・義肢装具士などの資格保有者であれば、福祉用具選定士認定研修会を受講できます。
福祉用具専門相談員や介護福祉士の情報については下記を参考にしてみてください。
福祉用具専門相談員の仕事はきついの?仕事内容や資格について解説!
介護福祉士は国家資格? 受験に必要な要件は?|取得するメリットや合格するためのポイントも紹介
引用元
試験概要
福祉用具選定士認定研修会にはA研修とB研修の2種類あり、どちらも受講する必要があります。どちらか一方のみの受講では福祉用具選定士として認定されません。
2024年に実施される予定の福祉用具選定士認定研修会の日程は以下のとおりです。
会場(A研修) | 研修期間 | 研修会場 |
東京会場 | 9/17〜9/19 | KFC Hall&Rooms
(東京都墨田区) |
名古屋会場 | 7/23〜7/25 | ウインクあいち
(名古屋市中村区) |
大阪会場 | 7/9〜7/11 | 新大阪丸ビル別館
(大阪市東淀川区) |
福岡会場 | 10/15〜10/17 | リファレンス駅東ビル
(福岡市博多区) |
A研修の受講料は日本福祉用具供給協会の正会員であれば2万6,000円で、一般の方は3万円です。3日分の昼食代込みの受講料となっています。
会場(B研修) | 研修期間 | 研修会場 |
東京会場 | 11/26〜11/27 | KFC Hall&Rooms
(東京都墨田区) |
名古屋会場 | 10/29〜10/30 | ウインクあいち
(名古屋市中村区) |
大阪会場 | 11/12〜11/13 | 新大阪丸ビル別館
(大阪市東淀川区) |
福岡会場 | 12/10〜12/11 | リファレンス駅東ビル
(福岡市博多区) |
B研修の受講料は正会員が2万2,000円で、一般の方は2万6,000円です。
A研修ではベッドや車椅子での介護や安全対策・メンテナンスについての講習を受け、B研修では歩行器や床ずれ防止、移動リフトについての講習を受けます。
日本福祉用具供給協会のホームページによれば、A研修を受けてからB研修を受けた方が、より効果的に福祉用具についての知識やスキルを獲得できるそうです。
引用元
一般社団法人 日本福祉用具供給協会:福祉用具選定士 令和6年度研修スケジュール
一般社団法人 日本福祉用具供給協会:福祉用具選定士認定研修会
申込方法
2024年に実施される福祉用具選定士認定研修会の申し込み日程は4/1(月)からとなっており、30名の定員に達した段階で受付が締め切られます。
「福祉用具選定士認定研修会 参加申込書」と「福祉用具選定士研修会 参加申込書の送付について」に必要事項を記入し、受験資格に必要な証明書のコピーと一緒にFAXで送りましょう。
福祉用具選定士の資格取得でみられるメリット
福祉用具選定士を取得すると、利用者一人ひとりの状況に沿ったベストな福祉用具を選定し、福祉用具の使い方に関しても親身になってアドバイスできます。
介護が必要な高齢者や障がい者がより快適に日常生活を送るためには、それぞれの身体やシチュエーションに応じた福祉用具選びが重要になってきます。
利用者やその家族に寄り添ってベストな福祉用具を提案できる福祉用具選定士は、介護利用者の生活をよりよいものにできる仕事です。
利用者や家族から直接感謝されることもあり、やりがいを感じることも多いでしょう。
福祉用具選定はやりがいを直接感じやすい仕事!
福祉用具選定士は利用者に必要な福祉用具を提案し、よりよい生活を送れるようにサポートします。利用者や家族から感謝される機会も多く、やりがいを感じられる仕事です。
福祉用具選定士になるためには、福祉用具選定士認定研修会のA研修とB研修を受講する必要があり、福祉用具専門相談員としての実務経験が2年以上あるか、介護系・福祉系・医療系の特定の資格を保有していることが受講要件として定められています。
福祉用具選定士の知識やスキルは、要介護者を抱えている介護や医療の現場などにおいても重宝されるので、介護福祉士や看護師などのスキルアップとしてもおすすめの資格です。
福祉用具選定士の資格を取得して、スキルアップやキャリアアップを目指しましょう。
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