CANAAN 鈴木かりんさんに聞く ノーブリーチの需要と透明感を出す秘訣【美容師のカラー技術】#1
ヘアダメージが気になるお客様からオーダーが多い、ブリーチ無しのカラーリング。「ブリーチせずに透明感を出したい」という要望は、安定して入るオーダーのひとつです。
ハイトーンやデザインカラーの流行で、ブリーチありきのカラーリングが当たり前になってきましたが、ブリーチに抵抗を感じる一般のお客様はまだ多い! しかし、時季を問わず人気の高いグレージュカラーは、ブリーチなしだと、透明感を出すのが難しい色味でもあります。
そこで今回は、ノーブリーチのグレージュカラーを得意とする『CANAAN 銀座』副店長・鈴木かりんさんにインタビュー。前編では、鈴木さんが感じるノーブリーチの需要の高さと、オーダーに応えるために必要なカラーの知識について教えていただきます。
赤み強めの日本人の髪を、ノーブリーチで透明感あるグレージュに染める方法とは? その秘訣を深掘りします。
CANAAN
鈴木かりんさんにインタビュー
銀座店 副店長/スタイリスト。専門学校卒業後、CANAANに入社。ノーブリーチで作る透明感カラーに定評あり。愛され系、フェミニン系のデザインを得意とし、ラベンダー系ベージュやピンク系のカラーリングが人気。
Instagram:@kaaari_3
若い世代にも需要の高い、ノーブリーチの透明感カラー
―今あらためて注目を集めているノーブリーチ。お客様からの需要はいかがですか?
ブリーチで髪の毛を傷めたくないという方は一定数いますし、会社や学校の規定で明るい髪色にできない方への提案としてもノーブリーチの需要は高いと思います。
もちろんブリーチをしてから暗めに色を入れることもできますが、時間が経って退色してくると、どうしても明るさや黄みが出て派手に見えますし、ダメージも気になりますから。
ノーブリーチのオーダーをされるのは、20代~30代前半の女性が多いです。とくに春は、高校を卒業して初めてカラーをするという方からのオーダーも増えます。
銀座という立地もありますが、私のところに来てくださる方は、「若いから好奇心でブリーチしちゃう」という感じじゃなくて、「髪はキレイでいたいけど髪色には透明感が欲しい」という、少し大人っぽい考えの方が多いですね。
派手色が流行っていますけど、派手にするよりナチュラルな方がおしゃれだと思っている子も、けっこう多いんだなと感じます。
―CANAANはカラーに定評のあるサロンですが、なかでも鈴木さんはノーブリーチを強みにされています。そこに注力した理由は?
CANAANは、営業時間を考えた施術行程の仕組みが、細かく決まっています。すべての施術が15分刻みになっていて、カラー剤の塗布も15分で終えるのが決まりです。その形態を崩さずに、自分の色を出す、というのが前提にあります。
そこで、カラー剤の配合やハイライトの入れ方など、ブリーチを使わないで透明感を出す方法を考えるようになりました。
ノーブリーチでのカラーリングは、一度で色をガラッと変えるというよりは、段階を踏んで色を作り上げていく施術です。ダメージが少ない分、次回の提案も自由度が高いので、リピートにつながるというのもポイントですね。
重要なのは、赤みを抑えつつ明るさを出すこと
―ブリーチ無しカラーでオーダーの多い色はありますか?
最近人気があるのはピンク系、安定してオーダーが多いのはラベンダー系のベージュ、いわゆるグレージュですね。とくにグレージュは、「赤みを消したい」「透明感を出したい」というオーダーが多いです。
―ブリーチをせずにグレージュで透明感を出すのは難しいと聞きますが、どのあたりが難しいのでしょうか?
グレージュにするには、赤みを抑えないといけないんですが、日本人の髪ってもともと赤みが強いんです。その強い赤みを、ブリーチを使わずにしっかり抑えるには、ある程度アッシュやブルーなどの、くすんだ色味が必要になります。
ですが、グレー系でしっかり赤みを消すと、日本人の肌色に合わないし、重い印象に。アッシュやブルーは、入れれば入れるほど、髪の色味が暗くなるというデメリットがあります。
髪はトーンが暗くなるほど、透明感は見えにくくなるし、赤みを抑えようとすると髪色が暗くなって透明感が出なくなってしまう。
だから赤みをしっかり抑えつつ、透明感がわかるように、ある程度の明るさを出す。その匙加減が、一番難しいところだと思います。
―鈴木さんならではの配合のポイントは?
根元はとくに赤みが強いので、赤みが入っているラベンダーは混ぜないようにしています。髪質が硬めで赤みが強い場合は、ブルーを多めにして、加水の量を調節。ブルーで暗くなった分を、アルカリ量を上げてブラウンを削り、明度を上げる感じですね。
あとは、黄みがどのくらい出ているかによって、ラベンダーの量を調節します。ラベンダーは黄みを抑えてくれるので、色落ちしたあともオレンジっぽくならずキレイに仕上がりますよ。
―最後に、ノーブリーチを極めたい人に向けて、カラーリング技術をあげるためのアドバイスをお願いします!
カラーリングで重要なのは、髪質の見極めです。そこは、実際に染めてみて、いろんな髪質に触れないとわからないことなので、数をこなす必要はあると思います。私自身、アシスタント時代は、とにかくたくさんモデルさんの髪を染めていました。
スタイリストになってからは、「自分の売り」を見つけて、注力していくことも大事です。推しの色を見つけるというだけでもいいと思います。
私の場合は、ラベンダーベージュとピンク系の2色に絞った色味提案をしています。そうしないと、お客様も迷っちゃうんですよね。ある程度、こちらから絞った提案をしてあげて、そのなかで髪質に合わせて微調整をしていくのが良いと思います。
鈴木かりんさんが作る『ノーブリーチ×透明感グレージュ』のポイント
ブリーチを使わずに、透明感のあるグレージュを作り上げる鈴木さんのカラーリング。
ポイントは、日本人が持つ髪の赤みを、カラー剤の配合で補整することなのだそう。アッシュとブルーで髪の赤みを抑えつつ、ラベンダーで黄みを補整すれば、退色後まで美しい仕上がりに。髪の立体感とやわらかさを演出するハイライトは、ライトナーで細かく入れたもの。これにより、ノーブリーチでも高いデザイン性のあるスタイルに仕上がっています。
お客様への提案キーワード
1. 日本人特有の髪の赤みが取れる
2. ブリーチ無しでも透明感が出せる
3. 色落ちもなだらかでキレイ
意外にも若い世代からのオーダーが多いという、ノーブリーチで透明感を出すカラーリング。安定した需要があるという点でも、知っておきたい技術です。後編では、鈴木さん流『ノーブリーチ×透明感グレージュ』の作り方を、詳しく教えていただきます。
▽後編はこちら▽
CANAAN 鈴木かりんさんが「ノーブリーチ×透明感グレージュ」の作り方をレクチャー!【美容師のカラー技術】#2>>
取材・文:山本二季
撮影:片岡 祥
モデル:鈴木リディ