【子育て応援メソッド】会社の成功の秘訣はスタッフの幸せを作ること Ameri代表 高橋譲太郎さん #2
Ameri武蔵小杉店店長の楠康貴さんは、今年1月に育休を取得しました。男性の育休取得率は依然として低い数値ですが、サロン初の男性の育休、しかも店長という責任ある立場にありながら9日間の休暇をとることを実現。それを快諾したという代表の高橋譲太郎さんは、スタッフの産休・育休取得についてどのように考えているのでしょうか。
前編では、楠さんの育休取得までの経緯やパパとしての育児の様子、育児休業給付金について伺いました。この後編では、「スタッフの幸せを応援することが会社の成功につながる」とおっしゃる代表の高橋さんにインタビュー。
相手を支える「サーバントリーダーシップ」

株式会社BRANDSHIP代表取締役 高橋譲太郎さん。18才で床屋に就職。働きながら通信制の専門学校で理容師免許を取得後、美容室に転職。リクルートでHot pepper Beautyの営業を経験し、Ameriを立ち上げる
――楠さんが育休をとられるときは快諾されたそうですね。
楠がパパになることを知ったときは、嬉しかったですね。僕は、スタッフは家族だと思っているんです。スタッフから「結婚します」「子どもが生まれます」と聞くと、最近涙腺が弱くなったせいもあり、泣きそうになるくらい嬉しいんです。だから、楠の育休取得についても即OKを出しました。
他にも、「子どもが3才になるまでは働かずに子育てをしたい」というママさんスタッフがいますが、いま育休3年目に入っています。シフトに入っていないので現在は無給ではありますが、3年経ったときに、本人が働きたいと言えばいつでも受け入れるつもりです。逆に子育てに専念したいということであれば、それを尊重したいと思います。
――スタッフの方はとても働きやすい環境にあるんですね。
「ギリギリまで働いてくれよ」と、サロンの経営のことばかり考えてしまってスタッフの体調をないがしろにしてしまうオーナーの話を聞くこともありますが、僕は違います。勤務時間を短くしてもいい、休みを多くとってもいい、なんなら早めに産休に入ってもいいから、絶対に無理はしないようにと言っています。
なぜなら、スタッフの人生を応援するという基本スタンスでいるからです。人生において何を優先したいのかはスタッフそれぞれ違いますよね。彼らが実現したいことを応援・支援して、スタッフと一緒に実現させることが代表としての務めです。
そして、スタッフの幸せを作ることが、会社の成功にもつながると考えています。
――具体的にはどういうことでしょうか?
スタッフの幸せをひとつのピースとして、一枚の絵を完成させるということです。その一環として、「サーバントリーダーシップ(リーダーではあるが、相手に仕えていく)」という考え方を採用しています。
仕える事と書いて「仕事」ですよね。これがだんだんできるようになると、今度は相手を支えることもできるようになってきます。僕は、これを「支事」と書きます。これがミッションとして根付いたときに「志事」となります。
言い換えると、自分が成長する→お客様や仲間の喜びになる→その結果、会社が発展するということです。会社の発展は、奇をてらった〇〇手当とかではなく、原理原則(基本的な決まり)に基づくもの。僕の話は、一見難しいように聞こえるかもしれませんが、実はだれでも分かるようなシンプルなことなんです。
今も来年も10年後も、僕はこの原理原則を軸に、本質的な経営を心がけていきます。

美容師は魔法の力を持った職業

――産休・育休をとるスタッフが何人か重なった時期があるとお伺いしました。そのときは、どのように対応されたのですか?
2018年に、産休・育休が最大5人重なった時期がありました。5人同時となると、さすがにしんどかったですね。もちろんスタッフ募集も行い、そのときはひとり増やしてなんとかシフトを組みました。とはいえ誰でもいいから雇うというわけではなく、採用に関してはかなり厳しい基準を持っています。
では、5人抜けた分をどうしたかというと、僕がコンサルタントとして仕事をすることで収益をあげました。実は、サロン業務では報酬はまったくもらわず、コンサルティング業務で稼いだお金で自分の生計を立てています。そうすることで、社員にできるだけ多くを還元しやすくなります。
よく、社長は裕福だけれど、アシスタントからスタイリストになっても稼げないという話を聞きますよね。美容師は、ハサミでお客様の人生を素晴らしいものに変えられる、魔法の力を持っている職業です。でも、給与や休日の面で報われない。愛すべき美容師、誇るべき仕事のはずなのに。僕は、そういう美容業界の負の部分をなくしていきたいと思っています。
売り上げが上がれば週休3日もあり

――ママ・パパ美容師さんから寄せられる悩みや相談にはどんな内容がありますか?
正直、あまり明らかな悩みというのが思い当たらないですね。僕は、人にされて嫌なことはしないと決めているんです。100%できるかどうかは分かりませんが…。
例えば、「土日は出勤してほしい」というオーナーが多いと思いますが、家族の都合で難しいスタッフには出なくていいと言っています。なぜなら、家族は大事だから。僕は、スタッフを家族だと思っていますし、実際の自分の家族も大好きです。大好きな人たちが苦しむのって嫌じゃないですか。だからこそサーバントリーダーシップで相手のために尽くすことを重要視しています。
それから、スタッフそれぞれと定期的に面談をしていることも大きいと思います。店長の楠には、現場をほとんどまかせようと思っているので、先日もプライベートも含めてどうしていきたいかをヒアリングしました。そこで上がってくるNG理由をつぶしていくんです。
例えば、僕から「売り上げを出してくれれば、週休3日でもいい」と提案しました。「勤務時間を減らしても、生産性を上げ、高いパフォーマンスを出せれば、給料を下げることなく休みを増やせる」と。その仕組はすでにできているから、他のスタッフにも実現してほしいし、そのために必要なものがあれば会社としてバックアップしていきます。
――つぶせない課題はなかったのですか?
いまのところないです。というのも、できない理由を考えるのではなく、できる理由を考えて実践しているからです。明日解決できるかどうかは別として、解決するために会社としてはこんなことをやる。その代わり、スタッフにもこういうことをやってほしい。ということをすり合わせて、じゃあこれでやっていこうねと、一歩ずつできることを増やしていきます。
それでお互いが成長し、お互いの有益性が合致していきます。
――高橋さんの会社で働いているスタッフは幸せですね。
ありがとうございます(笑)。最近、スタッフからもそういう声をもらえるようになりました。「ジョウさんと話しているとすごくハッピーになれます」とか「将来がクリアになってきました」とか。嬉しいですよね。そういう場面が増えるように僕ももっと動いていきたいです。
――ママ・パパスタッフが働くにあたり、環境づくりや業務内容で留意されていることは?
会社の価値観を大切にしながら、本人の価値観も尊重することですね。歩み寄りだと思います。
会社は、パズルのピースが合わさってできている。ひとり欠けても、絵が完成しないんです。だから、それぞれのピースがきちんとはまるように、スタッフと会社の価値基準をきちんとすり合わせていくことですね。
高橋さんは産休・育休をこう考える
多いときは産休・育休スタッフが5人重なったこともあるという美容室Ameri武蔵小杉店。ピンチをチャンスに変える代表の高橋さんは、スタッフが産休・育休をとりやすいように、またサロンの運営をスムーズに運ぶために以下の3つを実践しました。
1. 基本スタンスは、スタッフの人生を応援すること
2. 育休スタッフの収益減はコンサル業でカバー
3. 定期的な面談でスタッフのNG理由をつぶす
育休中に自分を見つめ直すことができ、改めて美容師の仕事が好きなんだと再認識した店長の楠さん。そして、スタッフの幸せを作ることが代表の務めとおっしゃる高橋さん。Ameriは、スタッフひとりひとりの幸せのカタチを実現できる美容室でした。
▽前編はこちら▽
【子育て応援メソッド】店長自ら男性初の育休をとってみた! Ameri 武蔵小杉店 楠康貴さん #1>>
撮影/古谷利幸
取材・文/永瀬紀子
Check it

Ameri 武蔵小杉店
住所:神奈川県川崎市中原区市ノ坪26-1コトウビル3F
TEL:044-712-3214