医療との提携でサロン運営に安心感が生まれました/SerA by U-REALM 森 亜伊希さん #1
コロナ禍で、これまでと同じ働き方が難しくなってきた美容業界。そんなwithコロナ時代を生き抜くために、他のサロンはどんな取り組みを行っているのか、そのプラス効果は?
今回取材したのは、横浜にあるヘアサロンSerA by U-REALMの代表・森 亜伊希さんです。大手サロンであるU-REALMが2019年12月に横浜でオープンしたSerA by U-REALM。オープンから数カ月で見舞われた新型コロナウイルスの流行によるサロン体制の変化や、外部医療サポート会社によるアドバイザリー契約を導入したメリットなど、コロナ禍でのサロン改革についてお聞きします。
お話を伺ったのは…
SerA by U-REALM
代表 森 亜伊希さん
横浜Styleの発起人として高い技術力と作品作りのスキルを持つ。2019年12月、SerA by U-REALM代表としてU-REALMに参加。現在は髪質改善のスペシャリストとして、幅広い世代の支持を集め、横浜エリアを牽引している。
Instagram:@sera_urealm_aiki
オープンから2カ月で直面したコロナ禍にブランドサロンが出した答え
―昨年、新型コロナウイルスが流行し始めた時期の様子はいかがでしたか?
横浜はクルーズ船のこともあったので、東京よりも早い2月から影響が出始めました。2月の頭にはマスク営業をスタート。2月半ばに下船が始まり、そこから徐々にお客さんが減り、緊急事態宣言が出るかどうかの3月ラスト1週くらいはかなり暇でした。
4月の緊急事態宣言が出る段階で、U-REALM全体として期間は未定で一度休業することに。1週間くらいで、通常通りではありませんが営業を再開しました。
その後はスタイリストは出勤し、アシスタントは5月の緊急事態宣言明けまで休みにしました。通常営業が再開したのは6月からですね。
―緊急事態宣言中のスタイリストの出勤は、予約状況に合わせて?
そうですね。みんな不安な時期でスタッフによってモチベーションに差が出てきやすかったんですよね。うちの場合はスタートしたばかりで人数も少なかったので、あまりバラつきはありませんでした。
しかし大きい店舗ほどその差は大きくて、外に出たくないというスタッフもいれば仕事がしたいというスタッフもいたので、各々の判断で対応していこうということになりました。
各スタイリストが予約状況をそれぞれ調整して、予約が入っているお客さんだけ施術しにくる。給料は出社の有無に関わらず基本給は全額、スタイリストは休業前の売り上げに対して特別給与をつけて支払われるかたちになりました。
雇用助成金の兼ね合いもあり、全店でトータル何人休みましょうとか、各店で休業日数を振り分けたりという調整は現在もU-REALM全体でしています。
うちは現在スタイリスト5名アシスタント4名と、規模的にも個別の予約管理で問題ないので、僕が全体は把握しつつ各々での調整をメインでしてもらっています。
外部医療サービスとの提携で、感染対策を万全に
―当時、取り入れた感染対策について教えてください。
パーテーションの設置や消毒の徹底、スタッフの健康管理チェックなどは、昨年5月中には導入していました。自分たちでネットやニュースを見て、考えながらいろいろ取り入れていきましたね。
またU-REALM全体としては、6月にキャピタルメディカという医療サポート会社とアドバイザリー契約を結び、感染対策についてのガイドラインが作られました。
―外部からのアドバイスが入って、新たに取り入れたことはありましたか?
フロントのパーテーションの設置と換気の徹底はその時に指摘されて取り入れました。また、ドライヤーの風でエアロゾルが飛ぶこと、飲み物にフタをしないとエアロゾルが入ることもそこで知りましたね。当時はまだ、エアロゾル感染についてはそこまで認知されていない時期でしたから、驚きましたね。
流れとしては、5月中にほとんどの感染対策には取り組んでいたので、それを審査してもらい、改善点があれば指摘してもらう…という感じでした。
―メリットとして感じたことは?
美容業界では外部の医療的な視点を取り入れているところがなかったので、強みにはなっているかと思います。6月の通常営業再開に合わせて取り入れたので、SNSや予約サイトでも発信していました。
どこまでお客様の安心につながったかは正直わからないですけど、「これを守っていれば大丈夫だ」という基準ができたことは、サロンをやっていく上での安心材料にもなりました。お店の広さや席の配置、スタッフ人数なども考慮した上で、満席になっても問題ないか等含め、審査を受けられたのはよかったと思います。
緊急事態宣言の影響は受けつつ、宣言明けには盛り返す流れに
―宣言中もオープンしていたとは言え、集客は難しかったのではないかと思いますが…。
そうですね。3月の時点で、U-REALM全体としてコロナ関連の発信、お店をやっていますよという発信は一切せず、来てくださったお客さんだけ対応する方針になっていました。余計なことはせずステルスでやっていく感じですね。いろんないざこざに絡まずに(笑)。そして6月になってからは、SNSや予約サイトはすべてコロナ対策をアピールして通常営業を再開しました。
―昨年の売り上げの変動はいかがでしたか?
土地柄もあり影響は早めに出始めましたが、緊急事態宣言中も近隣の方はいらっしゃいましたね。とくに1回目の緊急事態宣言明けの6月はかなり新規のお客さんが多かったです。当時は完全予約制にして3割くらい枠を減らしていましたが、すぐに埋まってしまうほどでした。
スタイリストが辞めたり入ったりという影響もありましたが、いい感じに盛り返してきましたね。今年に入って神奈川の感染者数が増えていた1・2月は少し減りましたが、3月にはすぐに戻りました。
―売り上げの内訳や接客の仕方に変化はありましたか?
物販はすごく上がりました。今は全体の15%くらいが物販で、今後20%にしていきたいなと思っています。施術時間やメニュー数などは予約時点で調整はしていますが、基本的には制限せず、より丁寧に情報をたくさん提供するようになりました。その結果、物販が上がった感じですね。
僕の場合は、わざわざこんな時に来てくれているお客さんだからこそ、美容室に来ている時間を有意義にしてもらいたいなと思ってるんです。ヘアケアアイテムだけじゃなくて、インナービューティやアクセサリーとか、美容に関する気になるものが、ここに来たら全部ある。そんな感じで喜んでもらえる方がいいなと。
施術時間などの制限を設けなくてもいいというのは、感染ガイドラインで確証があったので。クイックなメニューを作るよりも、美容を楽しみたいお客さんに来ていただけるお店作りをした方が最終的にいいと判断しました。
………………………………………………………………………………………………………………
医療的な外部の視点を取り入れることで、お客様にもスタッフにも安心を与えられたというU-REALMの取り組み。感染対策への判断が難しいなか、何をして何をしなくていいのかを知れることは、サロン運営にとって大きなメリットになったのではないでしょうか。
後編では、森さんの1日のタイムスケジュールや、今後取り組んでいく課題などについてお伺いします。
▽後編はこちら▽
美容業界の未来のためにブランドサロンだからできること/SerA by U-REALM 森 亜伊希さん #2>>
取材・文:山本二季
撮影:片岡 祥