自分がコミュニケーションを楽しむ「孫接客」で利用者さんに笑顔を届ける! 訪問美容師・佐々木祐太さん

訪問美容師として、9年のキャリアをもつ佐々木祐太さん。前編ではその道に進んだきっかけや、訪問美容師としてのあり方を決定づけた、ある利用者さんとのエピソードを伺いました。

一番のきっかけとなったのは、22歳のときに経験した大きな交通事故。一緒に事故にあった仲の良かった先輩を亡くし、辛い時期を過ごされたそうです。そんななか一筋の光となったのは、入院中に仲良くなった女性たちに、毎朝ブローをするようになったこと。美容師はどこでもできる仕事だと、可能性を見出したそうです。また訪問美容師になってからしばらくは、サロンワークとの乖離に悩んでいた佐々木さんですが、ある利用者さんとの出会いで気持ちが変わっていったといいます。

後編では佐々木さんが実践してきた、利用者さんを笑顔にする方法を伺います。何より大切なことは、自分もコミュニケーションを楽しむことだと佐々木さん。またこれまでの訪問美容の世界は、髪型にこだわる人と、短くして介護がしやすいように考える人が両極端だったそうで、佐々木さんはその中間になるようにしているとのこと。利用者さんに喜んでもらえるスタイルでありながら、介護もしやすくなるよう心がけているそうです。

今回お話を伺ったのは…

佐々木祐太さん

北海道の美容専門学校を卒業後、都内サロンに8年間勤務。その後、訪問美容の世界に飛び込み、経験を積む。現在はインスタグラムで「訪問美容アドバイザー」を名乗り、訪問美容師や、興味のある人に向けた発信にも力を入れている。

大切なのは自分がコミュニケーションを楽しむこと

佐々木さんが施術された方のお写真。利用者さんの笑顔に会えるこの仕事に大きなやりがいを感じるという

――訪問美容師として、心がけていることはどんなことでしょうか。

利用者さんを笑顔にすることを心がけてきました。そのために実践していることのひとつが、「孫接客」です。お客さまのお話をくみとるため、孫のように少し近い距離感で会話をするようにしています。またお客さまにもよりますが、まずは触れることを大切にしています。手を握ってみたり、肩をさすってみたり。このご時世ではなかなか難しいのですが、ボディコンタクトをしながら優しく話しかけていくうちに信用が生まれ、心を開いてくれるようになります。そうすると周りの人には言えないような悩みや不満なども吐き出してくれるようになり、前向きになってくださる方が多いです。

――なるほど。ちなみに「孫接客」を始めたきっかけは、何かあるのでしょうか?

何かきっかけがあるというより、僕はただただ高齢者の方とお話するのがすごく好きなんです。おばあちゃん子なのですが、東京に来たのを機におばあちゃんと話せる機会がすごく減ってしまって。その寂しさを埋めるために、高齢者の方とも孫のように接しているうちに仲良くなっていきました。以前に働いていたサロンでも高齢のお客さまに選んでいただくことがすごく多かったのですが、孫のように近い距離で話しているうちに自然とお客さまがついたんです。自分自身が会話を楽しむことが、とても大切だと思っています

利用者さんとご家族の両者に喜んでもらえるスタイル作り

ご家族からの希望をくむのと同時に、利用者さんに喜んでもらうことも大切にしていると佐々木さん

――ほかにも大切にされてきたことはありますでしょうか。

利用者さんたちに興味を持つことも、とても大切なことだと思っています。たとえばどのような時代に生きてきたか、どのような苦労をされてきたかはかならず調べますし、知識として頭のなかに入れるようにしますね。そうやって興味を持って接してもらえることに対して、悪い気持ちになる人はいないと思いますし、心の距離も近くなります。

もうひとつ心がけていることが利用者さんから聞いた戦争体験などのお話を、僕自身も多くの人に語っていくことです。僕は訪問美容師を育成する立場として講演活動をさせていただくことも多いのですが、こういうときにも戦争体験についてお話させていただくことがあります。これから訪問美容師として働く方に、高齢者の方が生きてきた背景を知ってもらいたい思いもありますし、高齢者の方が生きた証を多くの人につないでいくことは、人生の終盤に担当させていただく者の大切な役目なのではないかと思っているんです

――訪問美容師として、技術面で心がけてきたことはありますか。

利用者さんを喜ばせるためにスタイルにこだわる部分と、ご家族の意向をくみ介護のしやすい髪型にすることを両立するように心がけてきました。これまでの訪問美容師さんはスタイルにすごくこだわるか、短くしておけばいいという人か、どちらかに偏っている方がとても多い印象があったんです。自分のこだわりを出しすぎず、そのなかでもきれいになることを喜んでもらいたい気持ちがありますね。僕が担当することで髪型を好みの形に変え、外出を嫌がっていた方ができるようになったり、運動嫌いな人がリハビリを頑張るようになったりする方もいます。

美容師の働き方として、訪問美容がスタンダードになるように

訪問美容を始めたい人に向けた、スタートアップセミナーも数多く担当する佐々木さん

――インスタで「訪問美容アドバイザー」を名乗る佐々木さんですが、これから訪問美容師を始めたいという方に何かアドバイスはありますでしょうか?

よくお伝えするのが、「訪問美容師」という言葉で検索をかけていろいろな情報を見て、まずはどんな風に働きたいか、働けるかをイメージしてみてくださいね、ということです。訪問美容師は働き方が大きくわけて3つあります。個人で独立する、訪問美容の会社の従業員になる、美容師としてサロンワークは続けながら副業にする、この3つです。そこまで具体的にイメージしてみないと、なかなか動き出せないんですね。逆にそこまでイメージしている方であれば、すでに働いている人からアドバイスをもらえることも多いですし、動き出しやすくなると思います。僕もアドバイスできると思うので気になる方がいましたら、ぜひ連絡ください(笑)。

ちなみに介護者の資格である初任者研修は、かならず取らなければならないわけではありませんが、施設の職員さんにヒアリングしてみた結果、やはり資格のある人のほうが安心してお任せできると仰る方が多かったです。いろいろ勉強になることも多いので、取得することを視野に入れてもいいかもしれません。

――今後の目標を教えてください。

訪問美容のイメージを、よくしていきたいと思っています。あんまり格好よくない世界だと思われているのがすごく嫌で。インスタの発信に力を入れているのもこれが理由のひとつです。そして訪問美容の発展に、少しでも貢献できたらいいなと思っています

インスタでアドバイザーを名乗るようになってから、多くの方から連絡をいただくようになって、うちの会社にも10人くらい入社してもらいました。興味がある方や働きたい方をもっと増やしたいので、引き続きインスタで発信していきたいです。最終的には訪問美容師を育成する仕事にシフトしていけたらと思っています。美容師の働き方のひとつとして、いつか訪問美容がスタンダードになるよう力を尽くしていきたいですね
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利用者さんを笑顔にする施術の3つのポイント

佐々木さんが実践してきた利用者さんを笑顔にする施術について伺うと、ポイントは以下の3つでした。

1.「孫接客」で、自分もコミュニケーションを楽しむ

2.利用者さんが生きてきた時代を知り、多くの人に語り継ぐ

3.利用者さんに喜んでもらいながら、ご家族の意向もくんだスタイルを作る

お話をお聞きする前に佐々木さんのインスタを見させていただいたところ、高齢者の方と楽しそうに接している動画がありとても印象的でした。少子高齢化する社会のなかで、訪問美容という働き方に益々注目が集まりそうです。興味のある方は参考にしてみてくださいね!

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