「いらっしゃいませ」をなくし、お客さまを下の名前で呼ぶことで、通いたくなるサロンへ 「HUE」朝岡佑介さん
インナーカラー特化の美容師として、成功をおさめている美容師・朝岡佑介さん。
前編ではそのきっかけや、SNS発信で心がけてきたことを伺いました。朝岡さんがインナーカラーの特化にいきついたのは、富山市の美容室でずっと働いてきて、派手なことを嫌う富山県の県民性をよく知っていたからだそう。その読みがあたり、インスタグラムからの新規集客が30人になったこともあるといいます。またインスタから「HUE」の認知度をあげるため、施術後の写真を送ってお客さまからインスタに投稿してもらったり、「いいね周り」をしたりと、地道な努力の姿も見えてきました。
後編では朝岡さんが「HUE」で実践している、お客さまから選ばれるための工夫について伺います。とくにこだわっているのがお客さまを下の名前で呼ぶようにしているということ。さらに「いらっしゃいませ」を言わないようにすることで、お客さまとの距離が近くなり、通いやすいサロンになっているといいます。
朝岡佑介さん
富山市の美容室でキャリアを積んだあと、別のサロンに転職。インナーカラーに特化したインスタグラム発信で人気を集め、店長として「HUE」の立ち上げに携わる。2022年3月には、「HUE」の権利を譲渡され代表取締役に就任。
お客さまを下の名前で呼ぶことで、より近い距離感に
――接客面でこだわっていることはありますでしょうか?
お客さまがこのお店に親しみをもってくれて、より近い距離になれることを心がけています。そのために、お客さまを下の名前で呼ぶようにしているんです。これは新規のお客さまでもそうしていて。最初にカルテの記入をしてもらったあと、すぐに「ありがとうございます。○○さん今日はよろしくお願いします」と、その瞬間から下の名前で呼ぶようにしています。下の名前を呼ばれる機会って大人になればなるほど少なくなるので、ぐっと距離が縮まります。美容室が緊張して嫌だという方もいるので、近所のお兄ちゃんくらいの感覚で接するようにしていますね。
――なるほど。確かに上の名前で呼ばれるのと下の名前で呼ばれるのでは、大きく印象が変わりますね。
そうなんです。あとはこのお店では「いらっしゃいませ」をなくしました。「こんにちはー、どうぞ」という感じで。これも距離感を近くするためですね。いらっしゃいませがないからといって「この店なんなの」という風にはならないですし、実は多くのお客さまが気付いてないという(笑)。言っていないんですよと伝えても、「あ、そういえばそうですね」くらいの感じです。
お客さま目線のカウンセリングで顧客満足度アップ
――ほかにも接客面でこだわっているところはありますでしょうか?
お客さま目線のカウンセリングです。たとえばこの髪型にしてください、と言われて、はいわかりましたと切り始めるのではなくて、なぜその髪型にしようと思うのか、どんなライフスタイルなのかを深掘りして聞くようにしています。その内容によって、お客さまがなりたい姿に近づけることがあれば、提案するように心がけていますね。これがあるかないかで顧客満足度がすごく変わると思っています。
以前の僕はお客さまの話をちゃんと聞くというより、自分がこうしたいという思いが強かったのですが、前に働いていたお店のオーナーに指摘されたんです。お客さま目線が足りていない、と。それから意識してお客さまの話に耳を傾けるようにしていきました。今の自分がやっていることは、そのオーナーから影響を受けていることがかなり多いです。
――そうだったんですね。ほかにはどんなところに影響を受けているんでしょうか?
このお店の営業時間もそうです。そのオーナーの店で働いていたときと同じ、完全週休2日制、1日8時間労働になるように徹底しています。僕が「HUE」の店長になったときも、「店長を任せるけど社員には変わりないから、この労働時間を守って」と言われていて。そのお店で働いてみて初めて、この労働時間でもお店を維持することが可能だと知ったんです。今も予約を待ってくださっているお客さまがいるので、枠を増やせばもっと売上を伸ばすこともできるのですが、完全週休2日制、1日8時間労働は変えていません。今は子どもが小さいこともあって、仕事と私生活のバランスはちゃんと考えていきたいと思っています。
常に学び続ける姿勢を忘れずに
――お話を聞いていると、ほかの方から指摘を受けた部分やいいと思ったことを素直に取り入れる姿勢を感じます。学びを大切にされているのでしょうか?
そうですね。オンラインサロンも複数入っていて、常に学び続けたいと思っています。そうしないと、そこで終わっていくような気がしていて。自分の技術や、流行をつかむ力を常にアップデートしていきたいと思っています。オンラインサロンのオーナーや、そこに入っている方たちの話を聞くと、改めていろいろ考える機会になったり、気付きが得られたりするんですよね。こうやって自己投資することが、結局自分に返ってくるなと思っています。
――最後になりますが、今後の目標を教えてください。
将来的には独立したい美容師が集まって、リスクなく独立できるシェアサロンを作りたいんです。まずは契約社員のように毎年更新する形でスタッフとして雇って、そのスタッフの売り上げが上がってきた時に希望があれば、まず1席貸す感じにして。そうするとそのスタッフは、働く場所を変えずに個人事業主になれるという仕組みです。
そのシェアサロンともつながるのですが、完全週休2日、1日8時間労働といううちのサロンの働き方を実現できるスタッフをもっと増やしていきたいです。この働き方であればプライベートも充実しますし、しっかりお客様にも満足していただけて、その結果、お給料も増やすことができると思うんです。そうすれば自己投資もできて、もっと自分の力が伸びていくでしょうし、その良いスパイラルに入っていけるのかなと。僕にもそれが実現できたので、この働き方が美容師のスタンダードになるといいなと思っています。
朝岡さんが「HUE」を経営するうえでこだわってきたこと
朝岡さんが「HUE」を経営するうえでこだわってきたポイントを伺うと、以下の3つでした。
1.「いらっしゃいませ」をなくし、下の名前で呼ぶことで通いやすいサロンにする
2.お客さま目線でカウンセリングを行い、顧客満足度をアップさせる
3.完全週休2日制、1日の労働時間を8時間にし、ライフワークバランスをとる
朝岡さんのお話を聞いていて感じたのは、常に学ぶ姿勢を持ち続けることはもちろん、実践することの大切さです。インスタ運用の成功や、店長をしていたお店を任されるようになったのも、言われたことや、やると決めたことをコツコツと実践し続けてきた結果だと感じました。美容師としてもっと成功したい方は参考にしてはいかがでしょうか。