完全自由シフト!スタッフのモチベーションを下げない仕組みで8店舗を経営 「CLUTCH」代表・濱浩太朗さん
完全自由シフトで、売上ノルマ、ミーティングはなし。型破りな美容室経営で、4年半の間に大阪、博多エリアで直営店8店舗を経営するまでになった経営者がいます。それが「CLUTCH」代表取締役の濱浩太朗さんです。
前編では経営術について詳しく伺いました。集客できる、求人に人がくる、離職しない、お客さまがリピートする、この4つの仕組みがあれば会社は成り立つと話す濱さん。そのためスタッフのモチベーションを下げないように、自由な環境を作り、不満に思うことを消しているそうです。また濱さんはほとんどスタッフに指導をすることもなく、人を育てようとしていないといいます。がんばりたいと思ったときに経験が積める環境を提供することが、会社の役目だと考えているそうです。
今回お話を聞いたのは…
濱浩太朗さん
株式会社CLUTCH 代表取締役
2社で美容師としての経験を積んだあと、2017年10月に独立。大阪、博多エリアで美容室、ネイルサロン、アイラッシュサロンの直営店8店舗を経営している。またSNS発信にも力を入れており、Twitter、インスタグラムで美容室経営について発信しているほか、YouTubeでは「美容室 独立 開業 経営チャンネル」で独立や開業に関する動画を毎日アップしている。
ホームページ
CLUTCH
KOTARO HAMA
Twitter:こうたろう@美容室経営者
YouTube:美容室 独立 開業 経営チャンネル
Instagram:@clutch_hama
自由な環境で、スタッフの不満要因をなくし、モチベーションを下げない仕組み
――濱さんが経営するサロンの特徴を教えていただけますでしょうか。
自由シフト制で、お休みも出勤も自分で決めることができます。朝礼、終礼、ミーティングはなし。帰るときに終わっていない人がいたら待ってなくてはいけない、退社するときにお客さまを連れていってはいけないというような、暗黙のルールもありません。
――なぜそのようなことをしたのですか?
自由な環境を作り、不満に思うことを消して、スタッフのモチベーションを下げないためです。会社は集客できる、求人に人がくる、離職しない、お客さまがリピートする、この4つの仕組みがあれば成り立つと僕は思っています。集客の仕組みはスタッフには任せず、会社で力を入れていますね。個人集客ができるようになったらスタッフは会社にいる意味があまりないと思うので。求人に人がくる、離職しない仕組みは、働く環境が良ければ保つことができますし、お客さまのリピート率も、スタッフのモチベーションによってある程度変わるとあるとき気が付いたんです。
――どんなことをきっかけに気付かれたのですか?
以前働いていた会社でマネージャー職をしていたときに、店長が入れ替わったことがありました。リピート率が50%のAさんが店長を任されていたお店に、Bさんというリピート率30%の人がきて、入れ替わったところ、その月にリピート率が逆転したんです。降格したAさんは30%になり、昇格したBさんは50%に。技術と接客が1カ月でそんなに変わるわけがないので、これはモチベーションの差なんだなと気付きました。デビューしたばかりのジュニアスタイリストと、中堅のスタイリストを比べたときにジュニアスタイリストのほうがリピート率が低いというのもよくあることです。スタッフのモチベーションをあげることは難しいので、不満要因になるようなものはなるべく取り除いて、モチベーションを下げないことを心がけています。
自由シフト制で土日の休みも自由に!
――なるほど!自由シフトということですが、勤務時間はどのように決めるのでしょうか?
うちのサロンでは正社員と業務委託が選べるのですが、正社員はこれくらい働いてほしいという最低時間だけは決まっています。それをどう分配してもいい。業務委託は何時間でもOKという形です。ママさん美容師など、正社員で勤務時間を短くしたい人は、最初にどれくらい働けるかを聞いて固定給を決めています。
――自由シフトにしてもお店は問題なくまわるのでしょうか?土日などはどんな状況ですか?
とくに大きな問題はおきていませんよ。美容師さんはある程度働く時間と収入が比例するので、効率的に稼ごうと土日に働く人は多いです。予定などがあって休む人はもちろんいますが、全員が土日に休んでしまうということはないですね。ただスタッフの総数が多くないと難しいかもしれないとは思います。スタッフがひとりやふたりの店舗があると、土日にお店が休みになってしまうこともあるかもしれないですね。うちのサロンの場合は今のところ、働き方が気に入っているスタッフが、自分の知り合いや美容師仲間を連れてきてくれたり、離職率も低いので人手不足の店舗がなく、問題なく経営ができています。
ただ極論を言ってしまえば平日が全部予約でうまっていたら、土日を全部休んでもいいと思うんです。まだうちのサロンではできていないですが(笑)。
スタッフを育てる意識は持たない。がんばりたい人が経験を積める環境だけを準備
――ミーティングはないということですが、困ることはないでしょうか?
とくにないですね。指導もしないですし、売上ノルマもないですし。もっと言ってしまうとスタッフと一緒に飲みに行ったりすることもありません。
――そうなんですね!これくらい売上を立ててほしいというようなことも伝えないのでしょうか?
伝えないです。これくらいを目標にしてくださいと言ってあがるなら伝えると思いますけど、あがらないのでね(笑)。僕は人を育てようとは全然していないんです。育つ人というのはやれと言われなくても勉強するんですよ。いくらやっても育たない人は、どんなに環境を準備しても、伝えても、育たない(笑)。そういう人を育てようと思うからしんどいんだと思うんです。基礎的なことができていないときや、お客さまに迷惑がかかっていることがあれば話しに行くこともありますが、それ以外は基本主体性に任せています。自分で働く量も決められるわけですから、がんばれない人がいても全然いいんです。そういう人も会社にとっては大切な財産だと思っています。
――スタッフの方のやり方に、口をはさみたくなることはありませんか?
それもないんです。多分それは僕がそこまで売れなかったからだと思います(笑)。やり方に対するこだわりがないんです。お客さまが喜んでくれるなら、やり方はなんでもいいのかなと。ただスタッフのなかにやってみたいことができたときには、経験を積んだり学んだりできる環境はこちらで準備しようと思っています。たとえば広告について学びたいスタッフがいたら一部を任せたり、撮影をがんばりたいというスタッフがいたら機材をそろえてモデル代を負担するとか。過去には店舗を作ってみたいというスタッフに、新店舗のデザインを任せたこともありました。やりたいことがあるときに、その環境を整えるのが会社の役割なのだと思っています。
濱さんの経営術が成功した3つのポイント
濱さんの経営術が成功したポイントを伺うと、以下の3つでした。
1.スタッフにとって魅力的な自由な環境を用意する
2.不満になる要因を排除し、スタッフのモチベーションを下げない仕組みを作る
3.人を育てようとはせず、がんばりたい人が経験を積める環境を提供する
後編ではスタイリストになりたてのころ、なかなか芽が出ずに苦労したという濱さんがどのように打開策を打ったのかを伺います。最初は必殺技を探そうとしていた濱さん。しかしきちんとあいさつをする、次回提案をするなど美容師の基礎の部分を徹底的に見直したところ、結果がついてきたといいます。後編もお楽しみに!