【美容師あるある】単なる「巻き方」投稿ではダメ。「上手く巻ける髪型って?」に繋げてSNS集客に成功【PLATINA トップスタイリスト 山崎優衣さん】#1
美容業界でよくあるお悩みや課題にフォーカスする本企画。今回は、スタイリストの「売れる秘訣」について探ります。取材させていただいたのは「PLATINA」のトップスタイリスト・山崎優衣さん。当時は誰も注目していなかった「巻き方」の投稿をコツコツ続け、今やInstagramのフォロワー数は6万人超え。お役立ちアカウントで終わることなく、「巻くと一番可愛い髪型」と自身の得意なレイヤーカットに絡めた発信で、売れっ子スタイリストに。
前編では、月の売上250万円超えをキープしている秘訣、Instagramの「巻き方」投稿がヒットした理由をお聞きします。
教えてくれたのは…
「PLATINA」トップスタイリスト 山崎優衣さん
大手サロンに6年間勤め、2022年4月にオープンした「PLATINA」に入社。Instagramのフォロワー数は6万人超え。デビュー前に「巻き方」の投稿が大ヒットし、現在はワンカール巻きでも可愛くキマる山崎さん流レイヤーカットを求めて、遠方から足を運ぶ人も。
山崎優衣さんのInstagram:@zaki_210
美容師の集客:売上が停滞したときは、「上げる」努力より「下がらない」努力をする
――まず、これまでの経歴を簡単に教えてください。
大手サロンで6年間働いていましたが、同期に「『PLATINA』を立ち上げるから一緒に来てほしい」と誘われ、今年4月のオープンにあわせてこちらに来ました。前のお店で、もともと表参道で配属希望を出していたんですが、配属されたのは新宿店…。新宿店でも楽しく働かせていただいていましたが、同期に声をかけてもらったとき「やっぱり表参道でも一回挑戦してみたい!」と思ったんです。
――新宿から表参道に移り、何か変化を感じていますか?
お客様の年齢層が若干上がりました。新宿では学生さんの来店が多かったんですが、今は25歳〜30代前半が多いですね。学生さんはたまにいらっしゃるくらい。
私のInstagramを見て来てくださる方がほとんどなのですが、お客様の好みと私の好みが似ていることが多くて、スタイル提案をするときも「私もこういうの可愛いって思ってました〜!」と意気投合することが増えました。
――ちなみに、現在の売上はどのくらいですか?
前の店では月300万円くらい。そこでは3枠取っていましたが、PLATINAではもっとお客様にしっかり向き合いたいと思い、平日2枠、土日3枠に減らし、ゆとりのある働き方に変えたんです。それでも先月は280万円いったかな。月250万円はキープしているので、売上は大きくは変わっていないかもしれません。
――月280万円はすごいですね! とはいえ、売上が伸びない時期もあったのではないかと思うのですが、そういうときはどのように打破してきたのですか?
私の場合はデビューする直前にInstagramが当たったので、ありがたいことにデビュー初月から好調だったんですけど、停滞するときはありましたね。売上がここから上がらない…というときは、顧客を大事にしようという思考に切り替えるようにしていました。自分についてくれているアシスタントにも「接客、力入れていこうね」と声をかけたりして。
あとInstagramの投稿も増やすようにしていました。不調だからといって辞めちゃいけない。大事なのは下がらないようにすることですね。
――PLATINAに来て、お客様と一から関係性をつくらなければいけないときもあったかと思いますが、どのように信頼を得てきたのでしょうか?
お客様の年齢層が上がったこともあって、会話の雰囲気とか、言葉遣いとかに気を配るようにしていました。私自身、初対面の人にタメ語で話されるのが苦手で。美容室に行って「いくつ?」とか聞かれると「私のこと若いと思って下に見てるのかな?」と感じてしまうので、自分は同じことをお客様にしたくなくて。自分より若い方もいらっしゃいますが、こちらから年齢は聞きませんし、きちんと敬語を使って、対等な目線で接するようにしていました。
逆に、私より年上の方に「私なんかがが来てすみません…」と言われることもたまにあって。お客様にはそういう風に感じてほしくないので、重たい空気にならないようにフランクに接するように心がけています。
美容師のSNS運用:デビュー前に「巻き方」の投稿でフォロワー数2万人に。現在もInstagram来店が大半
――デビュー前からInstagramが当たったんですね!
正直、SNSってあまり好きではなかったんですけど、やるならきちんと戦って、自分のフィールドをつくらなきゃと思ったんです。
私は5年目でデビューしましたが、3年目くらいのときから徐々にInstagramに力を入れはじめ、デビュー1年〜半年前くらいにバズったんですね。確か9000人だったのが2万人くらいまで伸びたと思います。私の投稿を見て良いなと思ってくれても「今は美容室に行くタイミングじゃない」という人もいるので、大体バズってから3ヶ月後くらいにお客様が増えるんですよね。それで、良い波が来ているうちに早くデビューしようねってことでカリキュラムも頑張ってこなしたんですけど。
――当時はどのような投稿をされていたのですか?
何百万人という美容師がInstagramをやっている中で、自分がヘアスタイルの投稿を上げたところで埋もれちゃうだろうなと。じゃあ自分にはどんな投稿ができるんだろう?と考えた結果、巻き方を発信することにしたんです。撮影のときとかに、モデルさんに「美容師さんの巻き方って上手だけど、見ててもやり方がわからないし、真似できない」とよく言われていたので。せっかく自分の髪の毛長いし、男の人ができない戦い方をしようって。
最初は巻き方やヘアアレンジを投稿していることを周りにいじられていました。でも、続けていればいつかは実を結ぶもので、「巻き方」投稿がバズり、周りもセルフアレンジを投稿するように。
――これまでで一番反響が大きかった投稿は?
後ろの髪の毛の巻き方を紹介しているこの投稿です。みなさん正面から巻いている投稿をよく載せがちですが、「後ろの巻き方がわからない」という声も多かったんです。
――現在、Instagramで発信する上で工夫していることはありますか?
表参道に来てから気づいたのが、伸びる投稿と来店が増える投稿は違うということ。たまたま私の巻き方投稿を見つけてくれたとしても、巻き方の投稿しかなかったらただのお役立ちアカウントで終わり、来店には繋がりません。私はレイヤーカットを売りにしているんですが、レイヤーを入れるとワンカール巻いただけですごく動きが出るんですよ!というのを伝えたくて。巻き方投稿を見てくれた人に「どんな髪型だったらこの巻き方が上手くできるか」というところまで考えてもらえるように投稿しています。フィードにはセルフアレンジや私のプライベートも載せていますが、ハイライトにはきちんとお客様のヘアスタイルをメインで載せるようにしています。
――表参道に来て、投稿スタイルで何か変化した部分はありますか?
前のお店ではフルマックスで働かせていただいた一方、お客様にはカットのときだけ入り、他は全部アシスタント任せ、という接客スタイルに虚しさを感じていました。PLATINEでは「もっとお客様と密に向き合う」という考え方に変えたので、投稿でもフォローしてくださる顧客様向けに巻き方の投稿を増やしています。
スタイリストあるある:集客とSNS運用で気をつけたいポイント
1.売上が停滞したときは、お客様としっかり向き合える良い機会と捉え、「下がらない」努力に切り替える
2. ヘアスタイルの投稿だけが正解ではない。他の美容師がやっていないことに目をつける
3.ヘアアレンジを投稿する際は、お役立ち投稿で終わらないよう「どんな髪型で活かせるか」まで伝える
コツコツ頑張ってきたInstagramが実を結び、今や売れっ子スタイリストとなった山崎さん。彼女もまた「継続は力なり」を信じてきた人です。売上が停滞したときはいったん向上心をオフにして、「維持できてればOK」という思考回路に切り替えても良いかもしれませんね。後編では、山崎さんが愛される秘訣が満載の接客術と新人教育についてご紹介。
取材・文/佐藤咲稀(レ・キャトル)
撮影/喜多二三雄