ZACCが好き。ここで働き続けたい想いをフランチャイズという形で実現!【ZACC JINGU 伊藤塁さん】#1
いつかは独立して自分の店を持ちたい…と考えている人も多いでしょう。さまざまな独立の形をご紹介する本企画。
今回お話しを伺ったのは、老舗ヘアサロンZACCからフランチャイズという形で独立を果たした伊藤塁さん。しかも伊藤さんのZACC JINGUはフランチャイズ1号店なのだとか。独立にあたってフランチャイズという方法を選んだ理由、独立を決意するまでの心の動きなどをインタビューしました。
お話を伺ったのは…
ZACC JINGU
代表 伊藤塁さん
美容専門学校を卒業後、オーストラリアへ語学留学する。ここでメイクの経験と実績を積み、帰国後もヘアメイクアップアーティストとして活動。その後、27歳で美容師となるべくZACCに入社。2023年2月11日ZACC JINGUをオープンさせる。
31歳のスタイリストデビューから、SNSを活用して売上NO.1のトップスタイリストへ
――専門学校を卒業してから、すぐサロンに就職していないんですね。
このまま美容師になるべきか考えたくて、オーストラリアに語学留学しました。たまたま同じシェアハウスにイタリア人のメイクアップアーティストがいて、彼といろいろ話をするうちに、僕が本当にやりたい仕事は美容師ではなくてヘアメイクなんだと気づいたんです。オーストラリアでヘアメイクとして実績を積んで帰国しました。
――帰国後もヘアメイクのお仕事を?
事務所に所属して、雑誌やテレビの仕事をしていました。あるとき有名な女優さんから「前髪を切ってください」と頼まれたことがあったんです。「いいですよ」と引き受けたものの、髪を切るのは学生のとき以来。震える手を押さえながら何とかカットしました(笑)。
海外ではメイクとヘアは分業化されていますが、日本ではヘアありき。ヘアの技術が求められます。美容師としてのスキルを持っていた方がいいかも…と思うようになりました。それにヘアメイクの仕事は、すごく波があるんです。依頼があれば月に何百万も稼げますが、なければ収入はゼロ。収入のベースに美容師の仕事があれば生活が安定するのでは、という思惑もありました。
――数あるサロンの中でZACCを選んだのはなぜですか?
実は美容室業界のことをまったく知らなくて、美容師からヘアメイクになった先輩に、修行をするならどこがいいか相談したんです。3つ挙げてくれて、最初に返事をくれたのがZACCでした。その当時は肩まであるロン毛でしかもひげ面。27歳になるまで就職したことのない男を雇ってくれるなんて奇蹟ですよね。
――ヘアメイクの実績があっても、美容師の修行はシャンプーから?
もちろんです。僕は12月入社だったので、すでにその年の4月入社の子たちがいました。7~8歳も年下の先輩から「下手くそ!」って言われながら仕事を覚えたんですよ。
――スタイリストデビューは何歳でしたか?
31歳です。30歳で長男が生まれていたので、ZACC代表の高橋(和義)をはじめ幹部たちには「そろそろ一人前にしてやらないと」という温情もあったのかもしれません(笑)。
――スタイリストになったら、売上をつくるのが大変ですよね。
街でお客さまに声をかけて髪を切らせてもらう、なんてことをよくやっていました。それでも顧客が増えない。子どもがいるのに手取り10万円台の給料で、妻から「もうやっていられない。美容師を辞めるしかない」と言われたこともあります。
そんなとき、美容師にもインスタを始める人が出はじめたんです。最後のチャンスと思ってメイク動画を発信したらこれがバズって。毎日投稿するうち、順調にお客さまが増えました。売上トップを続けることができたのは、この投稿がきっかけです。
目指したいサロンと現実のギャップから、悩んだ末に独立を決意!
――ZACCに入社してから、「いずれは独立」という想いはあったんですか?
まったくありませんでした。27歳という年齢で雇ってもらえた恩を感じていたので、なるべく長く在籍して、お店に貢献したいと思っていました。
ただ、働くうちに「ここがイヤだな」とか「こうしたらもっとよくなる」とか、いろいろ見えてきたんです。自分なりに相談したり、実際に動いてみたりしましたが、サロンの規模が大きくなると、そう簡単に思い通りにはなりません。試行錯誤をした結果、自分でサロンをつくった方がいいのでは…という想いが芽生えました。
――それは何年前のことですか?
5年ほど前になります。その年、(ZACC代表の)高橋あての年賀状に「年明けにお話ししたいことがあるので時間をください」と書きました。
――高橋さんもびっくりなさったのでは?
僕の言動を見ていて、なんとなく気づいていたと思います。高橋と話をして「僕も店の現状を見て、そうだなと思うところはあるんだ」という本音を聞いて、代表なりに考えていることが分かりました。それなら僕は自分なりに改めたり、発信したりして、できることをやろうと決めたんです。
僕は店がイヤだから辞めたいという気持ちはまったくなくて、ここで働き続けたい想い、いい方向に変えたい想いをくみ取ってくれたのだと思います。
高橋に年賀状を送ってから1~2年は独立したい想いと、ここで自分にやれることがまだあるのではという想いで揺れ動いていましたね。
――では5年前の段階では、まだ独立の準備はしていなかったんですね。
具体的には何もしませんでしたが、お金だけは貯め始めました。具体的に動き出したのは辞める1年前からですね。
――フランチャイズの話はいつ頃から出てきたんですか?
ZACCにはフランチャイズの経験もノウハウもまったくありませんでしたが、話題にはのぼっていました。僕自身もギリギリまでフランチャイズでやるのか、完全に独立してやるのか迷っていましたし。まだZACCの本部でもルールが整っていなくて、決まっていないことがたくさんあるんです。
僕の場合は資金的な援助を受けませんでしたが、これから援助の方法などルールが決まっていくのだと思います。
――1年間で準備するのは大変でしたか?
勉強していたとは言え、本で読むのと実際に動いてみるのとではまったく違いました。サロンには週6日、朝9時から20時まで出ていました。当時は1日5枠で、そのすき間を縫って独立の準備をしていたんです。もう二度とやりたくないですね(笑)。キャパ的にも「よくやったな」と思います。週1の休みは物件を見て回ったり、打ち合わせをしたりでつぶれてしまうし、平日も仕事を優先すると時間が足りないので睡眠時間を削るしかない。開業までの1年間は3時間睡眠で乗り切りました。
一回だけ精神的にやられたことがあったんですよ。吐き気が止まらなくて、「これがみんなの言っていたストレス性の吐き気か!」って(笑)。症状が出たのはこれっきりです。
――伊藤さんがZACCを退職したのはいつですか?
’23年の1月31日です。2月に入ってから内装工事もオープンギリギリまでやってもらって10日間で作り上げました。
――独立するに当たってご家族、特に奥さまの反応はいかがでしたか?
応援してくれていました。ただ開業までの1年間は家族と過ごす時間が取れなかったのが辛かったですね。
週1回の休日は子どもと一緒に過ごすのが僕の楽しみでもあったのに。今は週2日の休みがあるので、ちょっと持て余しています(笑)。
伊藤さん流! 後悔しない独立の準備
1.留まってできることはないのかを考えて行動に移してみる
2.抱えている問題の解決策を上司やスタッフと共有する
3.独立という考えが頭をよぎったら、まずは資金を貯める
フリーランスのヘアメイクとして活動した後、美容師としてのキャリアを積むために27歳でZACCに入社した伊藤さん。後編では伊藤さんの考えるフランチャイズのメリット、起業してよかったことと大変なことについて伺います。
撮影/古谷利幸(F-REXon)