美容業界の底上げには、「育成」が必要不可欠【Violet 代表 前原穂高さん】#2
お客様の美容に対する欲求や要望に応えるをモットーに、都内にとどまらず名古屋市にもサロンを展開している「Violet」。前原穂高さんが「AFLOAT」での経験を活かし、美容の可能性を広げるサロンとしてスタートさせました。前原さんはお客様の満足度だけではなく、スタッフの育成にも力を入れており、教育に特化したオンラインサロンも提供しています。
前編では、前原さんが「Violet」を立ち上げるまでの経緯を伺いました。後編では、そのサロンのコンセプトと教育に特化している理由をお聞きし、将来的に目指したい「Violet」像についてお聞きします。
お話を伺ったのは…
Violet 代表 前原穂高さん
「AFLOAT」で幹部デザイニングディレクターとして12年間勤めたのち、2015年春に独立し、「Violet」を立ち上げる。現在は、表参道・銀座・栄・横浜駅の4店舗を展開。スタイリストを務めるほか、テレビや雑誌のメディアでも活躍中。
どの色にも染まれるようなサロンを目指したい
――「Violet」は、美容の可能性を多くの人に発信したい思いから立ち上げられたと伺いましたが、改めてコンセプトをお聞かせください。
どの時代の浮き沈みにもついていけて、どんな色にも染まれるようなサロンを目指しています。
ファッションや美容業界って、時代によって「流行」がコロコロ変わりますよね? サロンの立ち上げ当時で言えば、赤文字系や青文字系と呼ばれるファッションが流行っていましたが、そのとき流行るファッションによって、流行るサロンも変わるんです。時代の流行に沿って、特性を引き出せるサロンが人気になり、どちらかが流行るとどちらかを打ち出しているサロンの売上が落ち着いてしまう。そうした波を間近で見てきて、何かにラベル分けをせずに時代の流れに合わせたスタイルを提供していきたいと思ったんです。赤文字系・青文字系のどちらかになるわけではなく、どちらの色も混ぜて対応できるサロンにしたいと思い、「Violet」と名付けました。
――実際、売上に影響はあるのでしょうか?
今は昔に比べて流行の境界線が曖昧なこともあり、そこまで急激に上がり下がりはありませんが…満遍なくウケるサロンにするには、時間をかけていく必要があると感じています。やはりサロンとしての「強み」を一つに絞ったほうが話題性や注目度は高いんですね。そうしたサロンと比べてしまうと、勢いが今ひとつかなと思うところはあります。
「Violet」が時代にとらわれず、他の個性の豊かなサロンと並ぶには、一人ひとりのスタッフのデザインやアイデアの幅の広さがカギになってくると思っていて。そのためにも、スタッフ一人ひとりの技術の基盤が必要だと思い、教育には力を入れています。
「Violet」含め、美容業界にて「育成」に力を入れていきたい
――具体的な取り組みについてお聞かせください。
オンラインサロン「ABU美容師大学」を設立しました。「Violet」のスタッフはもちろん、外部のスタイリストも入会可能です。
――どんなことが学べるのでしょうか?
大まかに言うと、僕が今まで「AFLOAT」で学んできた経験を詰め込みました。4つのコースに分かれていて、サロン技術学部、サロン営業学部、撮影学部、マネジメント学部から自分が必要な項目が選べます。
――「ABU美容師大学」ならではの強みは何でしょう?
サロンワークでの知識だけではなく、メディアにも出演させていただいた経験をまとめて学びに落とし込みました。実際に僕が成果を出してきているところが強みだと感じています。
――前原さんご自身の経験を盛り込んだカリキュラムが学べるのですね。
僕自身、メディア仕事を経験する中でスタイリスト以外のヘアメイクアップアーティストをはじめとした他業種の方の仕事を間近で見られる機会があり、技術やアイデアの幅が広がったと実感したからこそ、カリキュラムに取り入れたいと思ったんです。
――どんな経験だったのですか?
同じ現場でも、ヘアメイクアップアーティストとスタイリストが目指す地点ってそれぞれ違うんですよ。例えば、ヘアメイクはその撮影のときだけ完璧にキープできれば良いですが、スタイリストは日常的にサロンから出たあとの可愛さもキープしてあげる必要があります。ヘアメイクが提案する可愛さを日常で表現できるように考えるのがスタイリスト。手段は違えど、そうした他の仕事の良さも自分の仕事に融合され、磨かれていくのだと思うんです。オンラインサロンではそのことが学べるように、カリキュラムに組み込みました。
――オンラインサロンの最終目的は何ですか?
最終的には、教育サロンとしてネームバリューを持たせたいと思っています。「Violet」だけではなく、美容業界全体の底上げが僕の目標でもありますから。
昨今、フリーランスや業務委託などと働き方の多様化が進んでいますが、その働き方を実現するには基盤の技術力が必要です。その基盤作りを怠ってほしくないですし、業界全体の底上げのためにも「教育」には今後も力を入れていきたいです。
日本独自のスタイルを作り上げるための海外出店を構想中
――「Violet」が求めるスタッフ像は?
常に歩みを止めず、向上心があって学び続けられる人が良いですね。そのうえで、自分のことばかりではなく、周囲の人のことを思いやれて一緒に成長をしていける人が望ましいと考えます。
――では、サロンとしての今後の目標をお聞かせください。
向こう20年分までの計画を立てていて、経営計画書を毎年考えて発表しています。その中で近いうちに実現したいのは…
まずは、働き方の多様性に対応できるようにしたいです。昔はサロンに就職するのが一般的でしたが、フリーランスや業務委託契約など多様化した働き方が増えてきました。「Violet」も少しずつ、スタッフやこれから入社を考えているスタイリストの意向を聞いて、働き方について柔軟に取り組みたいと考えています。
あとは、海外へのサロン展開。日本は良くも悪くも周りに合わせることが得意なため、どの分野の流行も他国から流れてきているものが多いですよね。例えば、韓国ヘアがとても流行っていますが、韓国ヘアは欧米のスタイルをアジア人に似合うように韓国人が考えた髪型なんです。
日本の美容業界を盛り上げるためにも、韓国のように自国で流行を生み出していかないといけないと思っています。「日本ならでは」の良さを見つけるための一歩として、海外出店を近いうちに実現させたいと考えています。
トッププレイヤーとして経営者として成功できた秘訣
1.どんなこともヒントになると考え、全く違う視点から美容の側面を見る機会を増やす
2.流行をおい続けるだけではなく、お客様ごとの目的に合わせた「きれい」を叶える
3.実際に自分が経験した出来事をカリキュラム化し、「ここ」でしか学べない内容作りを意識
取材・文/東菜々(レ・キャトル)
撮影/SHOHEI