スタッフが満足できる制度を徹底! 結果、お客様への最高なサービスに【Magico代表 上原潤一郎さん】#2
下北沢を拠点に現在27店舗ものサロンやサービスを展開している、Magico(マジコ)代表の上原潤一郎さん。各サロンのコンセプトやカラーは三者三様です。上原さんが、一つひとつのサロンに込めた想いや真意とは? また、ついに「magico 本店」以来「Magico」の名を背負った2号店「Magico Harajuku」がオープン。約17年越しに「Magico」を継いだ背景に迫ります。
お話を伺ったのは…
Magico代表 上原潤一郎さん
原宿、青山、下北沢にてヘアメイクアップアーティストや美容師の経験を積んだのち、下北沢にてサロン「Magico」をオープン。その後、下北沢を拠点に、原宿、表参道など着実にエリアを広げ、暖簾分けやFC展開を取り入れつつ、続々と店舗を拡大。今年1月に新たな試みとして「Magico Harajuku」をオープンさせ、話題となっている。
「Magico」のサロン名に込めた気持ち。引き継いだのは「M」のみ
――「Magico」の由来をお聞かせください。
美容室ってすっきりするだけじゃなく、気分転換もできて元気がもらえますよね。いわゆるウェルネスを感じてもらえるサービスってほかにないと思うんです。変身させて笑顔にできるなんて…まるで魔法みたいじゃん!って。魔法といえば、マジックだと思いついたのが由来です。マジックの語源である言葉が「Magico」なので、個人的には洒落を効かせたつもりなんですけど(笑)。
――原宿に進出した際に「Alan Smithee(アランスミシー)」とし、「Magico」を継がなかった理由は?
長く続けられた「Magico」の良さを、「チェーン店」というイメージで一括りにしたくなかったんです。
絶対的な自信があるとか何かにかけているとか、そういったサービスがあるならチェーン店として展開するのは問題ないと思いますが、僕が大事にしたかったのは、サロンごとの個性や柔軟性なんです。一つひとつ違う個性やコンセプトがあった方が、お客様も興味を持ってくれるのではないかとも考えました。
そもそも、下北沢と原宿の客層が同じではないですから。例えば音楽で言うと、下北沢は邦ロックがかかってても違和感ないけど、それを原宿に持ってくるのは違うじゃないですか。下北沢では純喫茶なのに原宿だと一気に安っぽいチェーン店になっちゃう、みたいなイメージかな。
――だからサロン名が違うのですね。
一つだけ関連性を紐づけるために、それぞれのサロン名には「Magico」のMを入れることを意識しました。「anthe M」とか「GAME」とか「MOTHER」とか。基本的には各サロンごとに配属するスタイリストを軸に展開しています。例えば「anthe M」はベテラン勢が揃っていたり、「MOTHER」には若手の女性をメインにしたり…サロンのコンセプトもそれぞれ。新人、中途、ベテランとそれぞれのレベルごとにサロンがあった方が良いと思っての采配でした。
ただ、最初にコンセプトを決めるのは当たり前ですが、場所やそこで働く人、ご来店いただくお客様などいろいろな層によって、サロンのムーブやミッションが変わるのは事実としてあります。「Magico」は、そうした時代や人に合わせて柔軟に対応できるサロンを目指しています。
若い世代にとって助走になるサロンで在りたい
――ところが最近、「Magico Harajuku」がオープンしましたね。その背景は?
17年目を迎えるにあたり、改めて「若者」を応援していくサロンにしたいと再確認したことが理由です。
――若い世代に着目したきっかけは?
最近思うのは、意欲的な子が多いこと。今の子って、自分のやりたいことをしっかり伝えられて、主張がはっきりしているんですよ。ハイトーンのカラーがやりたいとか、ブリーチを学びたいとか、こういうお店を作りたいとか。SNSが発達している影響なのか情報を入手しやすく、自発的に調べられることで、自ら勉強して成長できる世代なんだと肌で感じました。
いっぽう、ここ10年くらい出店するエリアが銀座一辺倒だと感じていて。銀座のサロンのターゲット層はどうしても大人なうえに高単価。ゆえに、熟練の技や経験が長い人が求められるんですね。そうなると、先述した意欲的な若い世代に寄り添い、応援してあげられるサロンって、今いくつあるんだろうかと思ったんです。今やるべきことは、未来ある若い世代の土台を作ることなんじゃないかと考え、心機一転のつもりで「Magico」の2号店を原宿に出店したんです。
――若い世代に寄り添うために行っている取り組みをお聞かせください。
「Magico」にはアシスタントの概念がありません。若い世代が早く活躍するためには、長い下積みよりも経験が重要だと思うからです。だからスタイリストデビューをする前に、カラーリストデビューができるカリキュラムを組んでいます。イメージとしてはジュニアスタイリストでしょうか。カラー技術のほか、集客のノウハウも指導しているので、入社して半年でカラーリストデビューし、1年以内にはもう100万円を超える売上を獲得しているなんて事例も少なくありません。スタイリストデビューをする前に一人前として自立できることは、のちに強みになると考えています。
ほかにも、それぞれのスタッフの成長や背景、客層の変化に伴い、新しい試みに挑戦できるサロンを出したり、仲の良いスタッフ同士でサロンを出店させたり…そういう可能性を考えると、我々経営側としては暖簾分けやFC展開をどんどん行っていくべきだと僕は思うんです。
否定をしない肯定するコミュニケーションを徹底
――では、経営をする中で大事にしていることは?
否定をしないコミュニケーションを心がけています。
人は何か意見を言われたとき「いや、でも、だって」と言いがち。でも、そうした否定の言葉を口にせず、まずは肯定してみてください。大事なのは「YES&」だと思うんです。
スタッフに何か言うときも言い方には気をつけています。注意するのではなく、あくまで激励として「こうすればもっとかっこよくなるんじゃない」とか「もう少し楽しんでも良いんじゃない」とか。これは、お客様にも言えることです。お客様から希望を提示されたら、「いいですね、●●を加えるともっと良さそうですね」と肯定と提案を一緒に出すと、尊重している気持ちが伝わり、話を聞き入れてもらいやすいです。
否定は何も生み出しません。何事も否定から入るのは良くないと思いますね。
――独立するにあたって、必要なことは?
独立は誰でもできますが、自分の主観だけでは長続きしないと思っていて。必要なのは、人を思う気持ちではないでしょうか。お客様はもちろん、スタッフのことも笑顔にできるビジネスのビジョンが見えていないと難しいと感じます。
もともと誰にも真似できない世界観や技術を持っていて、自信があるならば挑戦してみても良いと思うんです。だって名声と技量があれば、その人の技術を学びたい、着いていきたいと思う人もいるはずですから。ただ、「この人」に施術してもらいたい!と思われる「何か」が必要ですよね。でも、自分にはないから無理だと諦めることもないですよ。もし、自分に自信がないなら、得意な人を仲間にすれば良いんです。接客が上手な人、集客ができる人、とにかく人望がある人…自分一人だと無理だけど、何人か手を合わせれば実現できることもあります。
加えて、今は技術だけを武器に独立するには難しい時代。SNSで調べれば、たくさんのテクニックが入手できます。溢れているからこそ、「ないところ」を生み出せるところが求められると思うんです。個人的には、ガチガチに教育するのは遅いのかなと。だからこそ、「Magico」は個々の意欲や積極性を尊重しているんです。
――美容業界で「働く」とはどんな意義がありますか?
やっぱり美容師は、ウェルネスを一番身近に感じてもらえる職業だと思っています。今までも、これからもそこをかなり重要視していますね。
僕が思うに、人にウェルネスなサービスを届けたいならまず自分が整っていないと届けられない。その側面をカバーしてあげることが僕というか、会社としての役割だと感じています。
――最高なサービスを提供するには、与える側の幸福度も重要なのですね。
そう思います。お客様に満足していただけるサービスを提供するには、会社としてイキイキ働いてもらえる制度や設備が必要です。髪の毛を綺麗にカットしてもらって、色を染めてOK!ではなく、元気も与えられてパワースポットだと思われるような場所にしていきたい。それがサロンのあるべき姿だと、僕は思うんです。
お客様とスタッフに愛される経営術
1.規模感を把握し、それに見合った経営戦略を考える
2.その土地に住まう人や風土を各サロンに反映させる
3.意見や提案を受け入れ、肯定するコミュニケーションを徹底する
取材・文/東菜々(レ・キャトル)
撮影/生駒由美
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