「美容室以上、クリニック未満」をモットーに、myrrhを長く続けることが目標【myrrh 代表 磯邊恵実さん】#2

美容師からスパニストに転身し、ヘッドスパ専門店での勤務を経て自身のサロン「myrrh(ミルラ)」をオープンした磯邊恵実さん。頭皮や髪に悩みを抱える人、疲れを感じている人など数多くのお客様を、ほっとできる空間と確かな技術で癒やしています。

後編では、サロン名の由来やこだわりのメニュー、オープンから3年経った現在の心境、今後の目標などをインタビュー。

お話を伺ったのは…
myrrh 代表 磯邊恵実さん


大村美容ファッション専門学校卒業後、都内3店舗の美容室で勤務。2015年に銀座のヘッドスパ専門店に転職し、ヘッドスパの技術を磨く。2018年にRESALON(アール・イー・サロン)表参道店にて統括サロンマネージャーに就任。2021年3月にパーソナルヘッドスパ専門店myrrhをオープン。

Instagram @myrrh_isomeg

開業準備中に、施術やアドバイスに役立つ複数の資格を取得

初回は「パーソナルスカルプ診断®」を実施。その結果を元に、必要な施術とホームケアを提案しているそう。

――独立に向けて動き出したのはいつですか。

コロナ禍で出歩けない期間に入り、サロンもしっかり1ヶ月お休みした時です。私はお店がなければ何もできないんだなと実感して、国からの給付金10万円を独立資金の一部に回しました。それからさらに資金を貯めて、RESALONを辞める3ヶ月くらい前から物件探しもスタート。アルバイトとして入った時から独立の意志は伝えていたので、退社はわりとスムーズでした。今も、前の職場にはシャンプーなどの取引先としてお世話になっているんです。

それから、開業準備と併行して、毛髪診断士やアロマテラピー検定、日本化粧品検定、ヘアケアマイスターといった資格も取得しました。本当に自分には何もないと思っていたので、何者なのかというのをわかりやすくするために肩書が必要だと感じたからです。

――開業準備と資格の勉強の同時進行は、なかなかハードだったのでは…。

資格の試験会場から直接、友人の結婚式に行ったこともあります(笑)。でもハードスケジュールには耐性があるので結構平気だったかも。

毛髪のサイクルや体のしくみなど、別の資格でも重なる内容が多かったので、いっぺんに勉強した方が結果的には楽だったと思います。ひとつずつ順番にやっていたら、私にはちょっと面倒くさかったかもしれません。

――オープンに漕ぎつけたのが2021年。まだコロナが収束していない頃ですね。

そうなんですよ。まだマスク着用も必須の時でしたし、大丈夫かな?と思う面がいろいろある中でのオープンでした。

――myrrhという店名はどのようにつけたのですか。

アロマテラピーの勉強をしている時に、植物由来の香り成分の名前として「ミルラ」というものがあることを知りました。匂いの元になるのはミルラの木の樹脂なのですが、自然界では小鳥が傷口を癒やす塗り薬のようなものでもあるそうです。リラクゼーション系のサロンをつくるにあたり、ぴったりの名前だと思いmyrrhにしました。

読みづらいと思うんですけど、開業当時は住所非公開にしていたので、このサロンを探してくださった方に理解していただければいいかなと。ちょっとカッコつけた感じですよね(笑)。

――サロンの空間づくりでこだわったことを教えていただけますか。

myrrhという名前の通り、小鳥たちの止まり木のような、お客様がゆったりくつろげる空間にしたいと思いました。家に帰って来たようにホッとする場所というか。借りたスペースが住居としても使えるところで、自由に改装してもよかったのですが、あえて家っぽさを残しました。天井や床の木材の感じも、壁や照明もサロンのコンセプトに合っていたからです。

リピーターのお客様には、その人専用のスリッパや着替えのTシャツを用意しています。サロンにいらした時に「ただいま」「おかえりなさい」という感じがあるといいなと思ったので。

無理せず長く続けるために、お客様は1日3名が目安

「お客様の要望に応えたくて、豊富なメニューを用意しました」と磯邊さん。人気スパメニューは、45分、65分、100分と施術時間が3つあり、その日の予定や体調などに合わせて選べるのも魅力。

――1日3名限定のプライベートサロンにしたのはどうしてですか。

もともとは、スタッフを何人か雇用することも考えていました。ただ、スパの業態は女性スタッフが多いので、結婚や出産のタイミングで離職したり地元に帰ったりということも少なくありません。人が揃うのを待ってオープンを遅らせたくはなかったので、自分一人で身軽に始めることにしました。

1日3名というのは、朝・昼・夕方にひとりずつくらいがちょうどいいかなというざっくりとした設定です。実際は夜に来店されるお客様もいたり、1日4人になることもあったりと、臨機応変にやっています。何しろ自分ひとりなので、私自身が体調を崩すわけにはいかないですから、無理せずに長く続けられる人数というのは考えました

椅子としても、フルフラットにしてベッドとしても使えるシャンプー台を設置。カラーをする時もヘッドスパをする時も楽な状態で過ごせるようにこだわったそう。

――メニュー設定ではどんなことを意識しましたか。

「今日は自分へのご褒美にこのメニューをしましょう」とか、「お急ぎなのでこのメニューでサクッと済ませましょう」とか、ひとりひとりのお客様の状況に合わせて幅広い提案ができるように考えました

「ヒト幹細胞活性スパ」がメインなのですが、ほかにも頭皮のピーリングやAGA対応のケア、不眠の方向けのケアなど、いろいろなお悩みに特化したメニューを設定しています。ご利用いただくお客様の中には、トリートメントをもっとしたいとか、マッサージ時間を延ばしたいとおっしゃる方もいます。そういう、「ポロッと出る要望」をすくい上げられるようにしたくて、オプションメニューも多彩に用意しました。頭皮の汚れが気になりやすい夏や、疲れが溜まりやすい年末など、シーズンに合わせたメニューもいろいろあります。

バリバリ働く女性、ママさん、髪に悩む男性などさまざまなお客様がいらっしゃるので、それぞれが必要とするものを取りこぼさないようにしたいと思っています

――ケアメニューだけでなくオーガニックカラーもありますが、それはなぜですか。

お客様には、頭皮や髪をどう改善していくのか1、2年後を見据えた目標をお話しするのですが、その目標を邪魔しないカラーという意味でオーガニックカラーを用意しています。うちでぜひカラーをしてくださいということではなく、カラー剤の理論や品質を説明して安心してもらい、もしよかったらどうぞというくらいの考えです。

ヘッドスパとカラーを同じ場所でできた方がお客様にとって楽ですし、せっかく美容師としての経験があるので、痒いところに全部手が届くようにしたいという思いもありました。

――なるほど。あくまで頭皮と髪のためを考えたうえのことなのですね。

私が目指すのは、「美容室以上、クリニック未満」のサロンなんです。髪のうねりや抜け毛、白髪などの悩みが出てきた時に、美容皮膚科やAGA外来のようなクリニックはハードルが高いけれど、ちゃんと専門的なケアがしたいと思う人は多いのではないでしょうか。だから、クリニックと美容室の間のことができれば絶対に需要があると思っていました。

この店を守り続けたい。そのうえで新しいことにも挑戦

「お客様を癒やすためには、自分の心身をきちんと休ませることも大切」と磯邊さん。時間ができれば愛犬とドッグランに行き、ぼーっとするのが楽しみだとか。

――オープンから3年経ちましたが、今感じていることをお聞かせください。

やっと、余計な不安が抜けたように感じます。経営面のキャッシュフローや税金のことなどが、なるほどこういう風に回っているのかと理解できました。

それもあってか、サロンはいかに目の前のお客様に集中して還元するかを大切にする場所であり、それ以外は後でいいという思いがより強くなりました。自分のお客様を大切する気持ちのアウトプットの場所として、myrrhがあるという感覚です

店舗を増やさないのか、フランチャイズをやらないのかと言われることが多いのですが、拡大的なことは全然考えていないんです。私を信じてついてきてくださったお客様や、検索して見つけてくださったお客様のために、このサロンをずっと守っていくことを大切にしたい。myrrhはこのままの形で続けながら、自分の成長のために外部活動はしたいと思っています。

――外部活動というのは?

お客様からいただいたご縁で、新規のヘッドスパサロン立ち上げのコンサルティングに携わるようになりました。いわゆるヘッドスパの先生業のような。自分が所属する場とは違うところの人と一緒に仕事をするというのは、最初はなかなか難しかったです。同僚に指摘するのと、社外の人に指摘するのとではやはり違うので、伝え方としてとても勉強になりました。

守り続けたいこの店の仕事と、求められる仕事、両方やっていくというのもいいかなと思っています

――磯邊さんにとって「働くこと」とは?

お客様に喜んでいただくことにやりがいをすごく感じるので、働くことが自己実現になっています。自分が得意なサービスや技術をお客様に提供して、報酬や感謝の言葉をいただいて、その結果自分が嬉しくてお客様に還元したくなる。そういう好循環をつくるものだなと思います。

――今後の目標は何でしょうか。

ずっと同じ場所かどうかはわからないですが、末長くこの店を続けていくのが目標です。もしかしたら、自分のライフプランの中で細くなることはあるかもしれませんが、細く長くやっていきたい。「終わりを決めていない目標」です。また、この店があるからこそいただける仕事も増えてきたので、それは何でも挑戦しようと思っています。

磯邊さんがやりたいことを叶えた3つの秘訣

1.悩むよりも行動を起こして進む

2.目標とする人をまずは真似て、自分流に工夫していく

3.自分を信じる。信じられる自分になるまで努力を重ねる

撮影/高嶋佳代
取材・文/井上菜々子

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Salon Data

myrrh
住所:東京都南青山4-17-51 est Largo OMOTESANDO 303号室
電話:03-4362-8536
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