並外れた行動力を武器に、駆け上がったヘアメイクアップアーティストへの道 私の履歴書 【ヘアメイクアップアーティスト 岩井ゆうかさん】#1

『nicola(ニコラ)』や『LARME(ラルム)』など、10〜20代の女性向けファッション誌を中心にヘアメイクアップアーティストとして活躍中の岩井ゆうかさん。まだ25歳という若さながら、ティーンズのモデルやタレントを中心としたヘアメイクという大役を見事にこなしています。

ただ、実は岩井さんは2023年の8月に一人前のヘアメイクアップアーティストとして現場デビューを果たしたばかり。そのスピード感あふれるキャリアの秘訣は、どこにあるのでしょうか。

前編では、そんな岩井さんの学生時代や下積み時代の話を伺いました。

YUUKA’S PROFILE

お名前

岩井ゆうか

出身地

大阪府堺市

年齢

25歳(2024年10月時点)

出身学校

ECC アーティスト美容専門学校 トータルビューティ科 ヘアメイクコース

憧れの人

ヘアメイクアップアーティスト・サイオチアキさん

私の履歴書 サイオチアキさん #1
私の履歴書 サイオチアキさん #2

プライベートの過ごし方

愛犬とのお出かけ(ドッグカフェやドッグラン、大きめの公園など)、岩盤浴、パーソナルトレーニングジムでトレーニング、旅行

趣味・ハマっていること

編み物

仕事道具へのこだわりがあれば

「定期的に新しいコスメや、トレンドのバズコスメなどを積極的に取り入れるようにしています。ティーンズ世代の雑誌を担当することが多いからといってプチプラのコスメや韓国コスメだけで揃えるのではなく、デパコスもラインアップしてバランスをとっています」

精力的にスキルを磨いた、美容専門学校時代

編み物が趣味だという岩井さん。被っている帽子も、なんと手編みだそう。手先が器用でクリエイティブな岩井さんは、どんな学生時代を過ごしてきたのだろうか

――ヘアメイクアップアーティストを志したきっかけをお聞かせください。

これといったエピソードはなくて、単純に好きだったからなんです。

小学生の頃からコスメに興味を持っていて、ヘアアレンジをしたり、メイクしたりするのが好きでした。『nicola』やその妹的立ち位置の『ニコ☆プチ』といったファッション雑誌の、ヘアメイクのページをよく眺めていましたね。ヘアメイクアップアーティストに絞っていたわけではないけれど、この頃から「将来的には美容に携わる仕事がしたいな」とは考えていたかな。

高校卒業後は、地元にある「ECC アーティスト美容専門学校 トータルビューティ科 ヘアメイクコース」へ進学することに決めました。

――学校選びの決め手は、何でしたか?

講師の印象が良かったことと、海外研修があったことです。

進路選びには慎重だったので、大学も含めて5、6校ほど見て回りました。当時から、講師の方々と話をする機会があれば「芸能人のヘアメイクを担当したい」と話していたんです。

でも、この目標ってどことなく現実味がないし、茨の道じゃないですか。それもあってか、他の学校の講師からは後ろ向きな回答が多かったんですが、ここの講師は違いました。「その目標に向かって、一緒にがんばっていこう!」という前向きな姿勢を見せてくれて、私はそれがすごく嬉しかった。また、現役で自身の仕事をしながら講師業をしている方ばかりなのもいいなって。

海外研修は、行き先がなんとニューヨーク! 現地で行われるファッションショーのバックステージの現場に、学生にもかかわらずアシスタントとして入ることができるんです。こんな素晴らしい体験、滅多にできないですよね。だから、どうしても行きたかった。英会話スクールで有名なECCが母体でもあったからか、希望者は語学研修を受けることもできました。

さらに入学時の時点で人数制限を設けていて、1クラスが少人数制という環境にも惹かれました。

学科やコース選びも迷いましたが、3年間かけてヘアメイクに必要な技術をトータルで学びながら美容師の資格の取得もできる、この学科とコースを選択しました。やはり一番強い興味があったのがヘアメイクだったので、まずは自分が一番やりたいことに正直になろうと思って。

――東京に出ることは考えませんでしたか?

生まれも育ちもずっと大阪だったこともあり、当時は考えていなかったですね。でも、自分が一番やりたいことをやるためには、卒業後に東京に行く必要があるとは感じていました。

――専門学校時代は、いかがでしたか?

美容に関するあらゆることに興味があったので、ブライダルに特化したヘアメイクやまつ毛エクステといったアイリストの分野に、ネイル、ヘアメイクと関連の深いファッションに関することや着付けまで、興味の赴くままにどんどん学びました。通信制を活用して、美容師の資格も取りました。

――勉強熱心だったのですね。学生時代にがんばったことはありますか?

何事にも全力を尽くしてはいたんですが、特に力を入れたのは、学内・学外問わず開催されていたコンテストですね。学内のものから全国規模のものまで、なるべく多くのコンテストに参加するようにしていました。在学中に1度、全国規模のコンテストで優勝したことがあって、とてもうれしかったです! 学内のコンテストでも、基本的に上位に入っていました。

学生時代の岩井さんの作例(左)、海外研修でニューヨークへいった時の岩井さん(右)
学内コレクションで、グランプリを受賞したことも!

――とても精力的に活動されていたのですね。

コンテストだけでなく、現役で活躍されている講師が多かったので、講師の現場やもちろん、講師の知人の現場にまで帯同することもありました。学校自体のインターンシップの実施実績も、とても豊富なんです。

とにかく場数を踏んで、経験をたくさん積んでおきたかった。自分がやりたいことを最短経路でやるためには、学生時代の過ごし方も大切だと思ったんです。

「このアーティストのヘアメイクが好き!」と、師匠にまさかの直談判!

岩井さんの挑戦心や行動力は、学生時代だけにとどまらない。卒業後に試みたこととは…?

――卒業後の進路について、聞かせてください。

2年生になってしばらくして、卒業後のことを改めて考えました。専門学校に入学してありとあらゆることを学んでも、「芸能人のヘアメイクを担当する」ことへの現実味が、なかなかわかなかった。試しにヘアサロンの現場にも足を運んでみたんです。でも、そちらはどうしてもしっくりこなくて。

やはり、自分に嘘はつけないものですね。一番やりたかった「芸能人のヘアメイクを担当するアーティストになる」、これを実現するために東京に出よう、と。そんな時に出会ったのが、のちに師匠となるサイオチアキさんです

――サイオチアキさんに師事することになった、経緯を教えてください。

東京に出ることを決めた頃くらいから、ファッション雑誌などをよく見るようにしていました。その際に、「好みだな」と感じるヘアメイクを担当したのがサイオさんであることが、かなり多かったんです。

この人の下で経験を積みたいと思って、まずはサイオさんが所属している事務所にコンタクトを取りました。しかし、その時はアシスタントの採用をしていないと断られてしまって…。

――そんな…。

それでも、私は諦めきれませんでした。

履歴書とポートフォリオ、そしてサイオさんのヘアメイクへの愛を綴ったラブレターを同封して、事務所経由でサイオさん宛に直接送ったんです

すると、私の想いが伝わったのか、晴れてサイオさん直属のアシスタントとして、個人的に師事することになりました!

――素晴らしい行動力ですね!

うまく行くケースばかりではないと思いますが、運も良かったんだと思います。サイオさんには2年半ほどお世話になり、ヘアメイクの技術から現場での振る舞いまで、たくさんのことを学ばせていただきました。

――サイオさんから学んだことで、印象に残っているものはありますか?

現場におけるスピード感と要領です

私が帯同させてもらっていたサイオさんの現場は、モデルの人数が多いうえにスケジュールがタイトなこともよくありました。朝早くから夜遅くまで、ずっと忙しいような現場も多くて。

そんな現場を捌き切るためには、ポイントは押さえつつも引けるところは引き算する、その見極めが必要です。その塩梅を間近で見ることができたのは、大きな学びでした。

最初は戸惑いもありましたが、忙しい現場に早い段階で行かせてもらえたのは、今思うとありがたかったと思います。

一人のヘアメイクアップアーティストとして、現場にデビューするために

厳しい下積み時代、一人前として認められるまでの実力を身につけるため、岩井さんが実践したことをお話しいただいた

――一人前になるために、アシスタント時代に取り組まれたことはありますか?

毎日全力でしたけど、大きく分けて2つあります。1つ目は、ヘアセット専門のヘアサロンで働いたこと

ある時サイオさんに、「ヘアセットに特化したサロンで働いてみた方がいい」とアドバイスをもらったんです。そういったサロンは銀座や六本木などに多くて、そのエリアに立ち並ぶ高級店で働く女性たちが主なお客様となるサロンです。出勤前にヘアセットをするため、特定の時間帯にお客様が集中します。だから、とにかくスピード勝負! かといってクオリティも落とせません。要領がよくなりましたし、連日美意識の高いお客様がいらっしゃるのも勉強になりました。ここには、大体1年半くらいお世話になりました。

――そんな世界があるのですね! もう1つは?

ヘアメイクの作品撮りです。学生時代から継続的に行っていましたが、デビューの直前は月3、4回と高い頻度で行っていました。師匠であるサイオさんの現場において、アシスタントである私がモデルさんやタレントさんに直接メイクをすることは、基本的にはありません。メイクを落としたり、髪を巻いたりといった下準備やアシストが主な業務なので、自身のメイクスキルの向上のために取り組んでいました。テイストも得意な可愛い系だけでなく、クール系や大人っぽいものまで、いろいろ挑戦したな。協力してくださったカメラマンさんやモデルさんたちには、とても感謝しています。

――アシスタント時代から、師匠の現場以外にもかなり精力的に活動されていたんですね。一人前のアーティストとしてのデビューは、いつでしたか?

2023年の8月です。デビューに先立って、サイオさんから「アシスタント卒業も、そろそろかな」とお許しをいただき、デビューのタイミングは師匠だけでなく事務所とも相談して決めました。

あくまでサイオさん直属のアシスタントという立場だったので、この段階では事務所に所属していなかったんです。今は事務所に所属しながら仕事をさせていただいていますが、デビューと同時に所属した、ということになりますね。

事務所では、一人前のヘアメイクアップアーティストとしてデビューすることを「独立」とも呼ぶんです。当時この言葉を聞いて、ワクワクすると同時に「いよいよだ」と身が引き締まる思いでした。


幼い頃からヘアメイクへの関心が高く、さらにその多才さで、専門学生時代から着実に経験と実績を積み上げてきた岩井さん。そして「自分が一番やりたいこと」に素直になることを決意し、その行動力で自ら決めた師匠のアシスタントの座を射止めます。そして下積み時代を経て、一人前のヘアメイクアップアーティストとしてデビューを果たしました。やっと夢のスタートラインに立った岩井さんですが、そこからの日々はどのようなものだったのでしょうか。デビュー後の話やこれからのこと、スピード感のあるキャリアを歩んできた彼女の視点だからこそ伝えられるアドバイスなど、後編も充実の内容でお届けします。

撮影/内田 龍
取材・文/勝島春奈

 


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