業務委託の交通費はどちらが負担するの? トラブルを防ぐ契約書を作るポイントも紹介
美容師やエステティシャン、ネイリストなど、美容業界で業務委託として働く人は増加しています。
業務委託は雇用関係ではないため、契約内容をきっちり取り決めておかないと、「思っていたのと違った」と後になって後悔やトラブルにつながるケースもあるのが事実。そこで、事前に理解しておくべき点のひとつに「交通費」があります。
実は、一言で「業務委託」といっても、契約方法によって民法上での交通費の取り扱いが異なります。そのため正しく理解して、自分で負担してもいいのか、相手に持ってもらいたいのかを考慮しながら契約を結びましょう。
業務委託の交通費はどちらが負担するの?
美容業界で業務委託として働く場合、通勤時の交通費は委託する側とされる側のどちらが負担することになるのでしょうか。法律が関わる部分なので、きちんと理解しましょう。
契約によって違う
実は、業務委託労働者の交通費をどちらが負担するかは、契約方法によって異なります。業務委託には請負型と準委任型があるため、下記の民法もふまえつつそれぞれの違いや詳細を見てみましょう。
引用元
民法 | e-Gov 法令検索
請負契約と準委任契約の違いとは?
請負契約とは、請け負う側が業務を完成させることを約束し、委託した側が仕事の完成に対して報酬を支払うという契約です。
一方、準委任契約とは、受託者側が事務行為などを含めて発注された業務を遂行し、発注者側は業務を実施してもらった対価として報酬を支払うという契約です。請負契約とは異なり、「仕事の完成」は原則として求められません。
請負契約は民法第632条、準委任契約は民法第643条に基づいて実施されます。
「第六百三十二条 請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。」
「第六百四十三条 委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。」
請負契約型の場合は受託者が負担
前項の内容をふまえ、請負契約型の場合には、交通費は業務受託者が負担します。理由は、民法第485条に基づき、交通費は弁済する費用の対象に該当するためです。
ただし、勤務地の移転など、委託者の都合により交通費が増えた場合の増加分は、委託者が負担しなければなりません。
「第四百八十五条 弁済の費用について別段の意思表示がないときは、その費用は、債務者の負担とする。ただし、債権者が住所の移転その他の行為によって弁済の費用を増加させたときは、その増加額は、債権者の負担とする。」
準委任契約の場合は委託者が負担
準委任契約の場合は、業務を委任した側が負担します。理由は、民法第650条に基づき、業務遂行時にかかった費用の償還請求ができるためです。
「第六百五十条 受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、委任者に対し、その費用及び支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができる。」
そのため、業務委託で働く人が交通費を相手負担にしてもらいたい場合は、準委任契約型にして特約を結ぶ必要があります。
トラブルを防ぐ契約書を作るポイントを紹介
ここまでの内容をふまえ、交通費のことを含めて、委託者と受託者の間でのトラブルを防げるような業務委託契約書を作るにはどうすればいいのでしょうか。4つのポイントについて解説します。
1. 契約内容は詳細まで書面に残す
交通費をはじめとして、契約の内容は細部までしっかりと書面に記すことは非常に重要なポイント。口約束での取り決めでは、実行されずに報酬が予定より減ってしまう・予定より短期間で勝手に契約を解除されてしまうなど、のちのちトラブルになる可能性が否めません。
実は、業務委託の仕事自体は契約書がなくても行えます。しかし、双方が相違のないように認識をし、気持ちよく仕事を授受する上でも、契約書は欠かせない存在です。
2. 自分も相手も同じ認識で理解できる内容にする
前章とも関連しますが、自分と相手で齟齬がないように、同じ認識かつ理解できる内容で作成することも大切です。責任の範囲や有無などもきちんと取り決めておかないと、万が一お客様とトラブルが生じた際の補償も、すべて自分に降りかかってくる恐れがあります。
業務委託は従業員とは異なるため、労働に関する法律は適用されません。自分の身を守るためにも、契約書の内容をきちんと理解し、納得した上で契約を締結しましょう。
3. リーガルチェックを受ける
リーガルチェックとは、契約書の内容に問題はないかを弁護士などの法律の専門家にチェックしてもらうこと。業務委託契約書を委託者や受託者が作成する場合、もしどちらかが不利な内容になっていると、あとあと大きな問題になりかねません。
そこで、費用はかかりますが、リーガルチェックを受けることで法律違反や契約無効になるリスクがなくなり、法的に正式な契約書として認められることになります。プロからお墨付きをもらえれば、安心して業務に取り組めるでしょう。
4. プロに作成してもらう
自分で契約書を作成するのが不安な場合は、作成の時点で弁護士や行政書士などのプロに依頼すると確実です。数万から十万円前後の費用がかかる可能性がありますが、安心と引き換えになることを考えれば、利用するのもありでしょう。
業務委託の交通費の勘定項目は?
業務委託の通勤・移動にかかる交通費は、経理上ではどのような扱いになるのでしょうか。該当する勘定項目について解説します。
交通費を後で請求する場合|立替金
交通費をまずは受託者が自分で払い、後で委託者に請求する場合の勘定項目は「立替金」です。領収書を忘れずに受け取って保管しておき、請求の際に添付しましょう。領収書の原本を相手に渡すため、コピーして自分の手元に残しておくことも大切です。
請求書で交通費を請求するには
交通費の立替払いをして後から請求するときは、委託者側から、移動の日時・手段・区間などの細かい情報を記載するよう求められる可能性があります。どのような書き方をすればいいのか、契約時などに前もって委託者に確認しておくことが重要です。
報酬に含まれている場合|旅費交通費
交通費が報酬に含まれている(受託者側が負担する)場合は、勘定科目を「旅費交通費」として経費に計上しましょう。いつもの就業場所とは違う所に出張した場合の移動費用や、業務に伴い宿泊が発生した場合の宿泊費用も、旅費交通費の扱いです。
自分に合った職場を探すには?
つづいて、業務委託で働きたい人が自分に合った職場を探すときに利用できる、2種類のサービスについて見ていきましょう。
業務委託に強いエージェントを利用する
就職・転職エージェントを利用する方法です。エージェントとは、担当者がマンツーマンで求職活動を支援してくれるサービスのこと。求職者からの相談をもとに、適切な求人を紹介してくれたり企業との調整を行ってくれたりします。
業務委託の求人を多く持つエージェントの利用がおすすめです。
求人サイトで探す
インターネット上で多数の求人情報をまとめた「求人サイト」を利用する方法です。スマートフォンなどからアクセスでき、希望の条件を入れて仕事を検索できます。自分のペースで求職活動を進められ、気軽に利用できるでしょう。
「リジョブ」のような、美容関連の業務委託の募集情報がたくさん掲載されているサイトがおすすめです。
美容系の履歴書で押さえておきたいポイントとは?
美容業界で業務委託として応募する際に提出する履歴書のポイントには、下記のような点があります。
・年を書くときは和暦か西暦かで統一する
・誤字脱字などのミスをしないように丁寧に書く
・手書きの際は黒のペンを使い、間違えた場合は修正ペンなどで直さず最初から書き直す
・学校名や資格名などは略称を使わず正式名称で記入する
・証明写真は3~6ヶ月以内に撮影した、印象のよいものを使用する など
また、履歴書において「志望動機」は重要です。応募先企業と業務委託を結びたい理由や、自分がどのように企業に貢献できるか、将来はどんな展望を持っているかなどを伝え、スキルや意欲をアピールしましょう。
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面接で好印象を与えるには?
選考にあたっては面接も行われることが一般的。持ち物や面接会場までのルートの確認など、準備の段階から意識を高めましょう。
また、美容系の面接では、職業柄もあり清潔感や好感度がとても大切です。服装は一般的には黒や紺のスーツですが、私服指定の場合もジャケットやシャツ、ブラウスなどきれいめの服を着用し、オフィスカジュアルスタイルでまとめましょう。
髪型・メイク・靴・バッグなども、好印象を与えられるように整えてください。面接が始まったら、あいさつや受け答えの際には笑顔でハキハキ話すこと、回答時にはまず結論を述べてから簡潔に説明することなどがポイントです。
なお、面接時には聞かれやすい質問があるので、前もって対策し、スムーズに答えられるようにしておきましょう。履歴書と重複する部分もありますが、転職理由・志望動機・自己紹介や自己PRなどは頻出の項目です。
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業務委託の交通費負担は契約によって違う!
業務委託の交通費の負担は契約によって異なり、委託者が出してくれるケースと受託者が自分で払わなければならないケースがあります。交通費を自分が負担してでも業務を引き受けるのかどうかを含め、契約は慎重に行わなければなりません。
場合によっては専門家の力を借りながら、自分に合った業務委託契約書を交わして、無用なトラブルを防ぎましょう。
また、美容業界での業務委託の仕事探しには、ぜひリジョブをご利用ください。リジョブは豊富な求人のなかから、「業務委託」「交通費支給」「副業・WワークOK」など、細かく条件を設定して検索できることが特徴です。
リジョブで業務委託として自分にぴったりの仕事に巡り会い、活躍の幅を広げていきましょう。