これからはスタッフの成長に合わせて場所や環境を整えていくことに力を入れたい【NERIE/代表 諏訪友哉さん】#2

老舗サロン・PEEK-A-BOOで経験を積み、2021年に独立。銀座で自身のお店「NERIE(ネリー)」をオープンさせ、オーナースタイリストとして活躍する諏訪友哉さん。

これまで多くのコンテストで受賞し、長年に渡り美容業界誌などさまざまなメディアからヘアスタイルを発信。確かなカット技術で、お客様からの信頼度が高いのはもちろん、業界からも注目される美容師の一人です。

<後編>では、そんな諏訪さんが独立してNERIEを立ち上げるまでの道のりやコンセプト、スタッフの育成、今後の展望などについてお聞きしました。

NERIEのコンセプトは「一人ひとりのお客様に丁寧に向き合うこと」

モノトーンベースに柔らかい木の温もりが溶け込む内装。シャンプー台は一段上がったスペースに。他のお客様の視線が気にならないようできるだけ照明を落とし、まるで個室のような雰囲気を演出。

――独立、出店されたのが2021年。タイミング的にはコロナ禍、しかも銀座にお店を出すというのは大変な決断だったのでは。

前サロンが銀座で、ずっとこのエリアでやってきたというのはもちろん大きいです。コロナで銀座の街に誰一人いなくなった瞬間も経験してますし、あの時は自分に向き合う時間もけっこうあって、いろいろ深く考えることができました。

地元に帰って出店する選択肢もなくはなかったけれど、それよりもやっぱり、銀座の一等地でゼロから勝負してみたかった。一番リスクが高くて一番厳しい、そんな道をあえて選んで挑戦しようという僕なりの決心でした。

――「NERIE」オープンまではどんな道のりでしたか?

物件探しから内装デザイン、資金調達まで、すべてが初めての経験で正直めちゃくちゃ大変でした。内装に関しては、「こうしたい」というイメージはけっこう強かったものの、現実的な予算や工期が合わないことも多くて、何度もやり直しました。

すべてに関わったからこそ、お店への愛着は強いし、スタッフにとっても「自分たちの場所」になったと思っています。準備期間に何度も心が折れそうになりましたけど、そのたびに、これまでのお客様や仲間たちが支えになってくれて、本当にありがたかったです。

――コンセプトについて教えてください。

NERIEのコンセプトは、「一人ひとりのお客様に丁寧に向き合うこと」。僕自身の過去の経験からも、一番大切にしたい思いです。

美容室って、どうしても数をこなすことや効率を求められる場面が多いのですが、僕たちは逆に「どれだけその人と深く向き合えるか」を大事にしています。表面的なカウンセリングではなく、その人のライフスタイルや価値観、髪の悩み、気分まで含めて、ちゃんと対話をする。それが、最終的に本当に満足してもらえるスタイル提案につながると思うんです。

NERIEという名前には、「自分らしく在れる場所に」という意味を込めています。表面だけを整えるのではなく、その人の芯の部分と向き合って、美容を通じて日常を豊かにしていけたらいいなと考えています。

――スタイル提案やサロンのこだわりは?

その人に本当に似合うかどうかを一番大事にしています。流行やテクニックも必要ですが、それよりもその人自身が持っている雰囲気やライフスタイルに合うことが最優先。きちんと対話して、その人にしかないデザインを見つけたいと思っています。

お店の特徴としては、お客様に非日常を感じながらくつろいでもらえるような空間作りやおもてなしにこだわっています。

最初にガウンに着替えてリラックスしていただき、席に座ったら、最後まで移動のないような形で施術が進んでいきます。一人のお客様に対して丁寧に向き合うこと、これに尽きます。

お客様に着替えていただくガウン。襟がついている服の時もスタイル確認がしやすく、洋服を汚さずに快適に過ごせるのも魅力。

個々の「主体性」を大切に、結果一体感のあるチームになればいい

――スタッフの教育面についての方針は?

教育としてのコンセプトは、「一人ひとりが主体性を持って動けるチーム」。美容室は、どこか上下関係が強かったり、技術の差で遠慮が生まれたりしがちなんですが、うちでは全員が同じ目線で仕事ができるような環境を目指しています。

サロンを立ち上げる時にいろんな本を読んだりして勉強した中で、すごくしっくりきたのが岡田武史さん(サッカー日本代表の元監督)の著書。その岡田メソッドが何かというと、目標やコンセプトは共有するけど、基本的には個人の主体性を大事すること。

教育も、決してトップダウンではなく、個が成長する「場」を用意するだけ。あとは本人が主体的に選んでいけるようにする。

自分で考え、自分で動く力が、本物のプロフェッショナルを育てると思っています。

――マニュアル的なものはないということでしょうか?

基本的にマニュアルはないです。こういう風にしましょう、というミーティングもほとんどしません。

そのお客様一人に対し、何がベストかをしっかり考えてやってもらうのが一番。100人のお客様がいたら100人それぞれの接客をすべきだから、あまり型にはめないようにしています。もしダメな部分が出てきたら、その都度話して改善していく、そんなスタイルをとっています。

――スタッフ一人ひとりの個性もいかしながら成長できそうです。

育ったバッググラウンドも違う、出身地も違う、海外に行っていた子もいる、そういう人たちが主体性を持って、それぞれが自信を持って取り組めるやり方でやっていく。それが結果として一体感あるチームとなり、いいお店になっていく。そんな形が理想です。

みんなの可能性をいかせる場所や環境を用意するのがこれからの役目

――昔と今で、働き方は変わりましたか?

お店をやるようになってからは、圧倒的に「自分で決めること」が増えました。大変なことは多いですが、その分、すごくやりがいも感じます。自分が責任を持つと、考えも深くなりますよね。スタッフとの距離感や関わり方も、前よりもフラットでいられるようになったと思います。

またサッカーの話になりますが、本田圭佑選手の言葉で「成功にとらわれるな、成長にとらわれろ」というのがあって、とても共感した考え方です。

成功にこだわる必要はなくて、毎日ちょっとでも自分が成長できるような環境を作る。その積み重ねが大事だということを心にとめて、仕事に臨むようにしています。

――これから挑戦してみたいことは?

今後は、スタッフの成長に合わせて場所や環境を整えていくことに力を入れていきたいです。独立した当初は、自分の理想をカタチにすることに夢中でした。でも今は、スタッフがどんどん成長して、それぞれのやりたいことや得意なことが見えてきている。だったら、僕がその可能性をいかせる場所や環境を用意していくのが、次の役割だと考えるようになりました。

それが新しい事業展開かもしれないし、教育の仕組みかもしれません。何よりも、「人を中心に考える組織」であり続けたいと思っています。

一人ひとりが自分らしく働きながら、美容師としても人としても成長できるようなチームを作っていく。それが、これからのNERIEの目指す姿です。

――最後に、諏訪さんにとって「働く」とは?

「自分を知り、誰かの役に立つこと」ですね。

働くって、自分がどういう人生を歩みたいか、何を大切にしているのかが、すごく浮き彫りになる行為だと思っていて。それを仲間やお客様と共有しながら、少しずつカタチにしていけるのが、今の自分にとっての「働く」意味。自分の目指すところが見えてきて解像度が上がっていく、そんなイメージです。

美容室は、お客様の大事な節目に寄り添える場所だと思います。結婚する、子供が生まれる、仕事で大事なプレゼンがある…そういう大切な場面で、髪を切ったり美容を通じて、ほんの少しでもポジティブな影響を与えられたら本当にうれしい。人の人生に関われて、役に立てること、それが働くことの意味かなとも思います。

諏訪さんから学ぶ「成長」の秘訣

1.あえて厳しい環境を選び、挑戦する姿勢

2.一人ひとりのお客様に丁寧に向き合うこと

3.自分で考え、自分で動ける「主体性」

取材・文:青木麻理(tokiwa)
撮影:生駒由美


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NERIE(ネリー)
住所:東京都中央区銀座2-8-17 ハウビル銀座2 5F
電話:03-6228-6535
NERIEのInstagram@nerie.tokyo

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